表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
第一章:威力は初級、魔力量は無限。最弱設定のはずが世界から頼られています  作者: ぃぃぃぃぃぃ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/49

第七話:十三歳の成人、深まる不安

十三歳の誕生日を迎えた朝、俺はいつものように目を覚ました。木造の家の天井から差し込む光は柔らかく、少しだけ暖かい。だけど胸の奥が、落ち着かない。心臓がゆっくりと速くなるあの感覚は、昔から魔力がざわめくときの合図だ。


「アルト、起きてる?」

台所のほうから、小さくて優しい母さんの声がした。


「うん、今行くよ」


立ち上がって部屋を出ると、パンの焼ける匂いとハーブティーの香りが鼻をくすぐった。こんな朝はいつも通りのはずなのに、今日だけは、胸の奥で何かがざわついている。


「アルト、十三歳ね。成人だなんて、ほんとに早いわね」


母さんが笑う。薄い金色の髪がゆらりと揺れた。


「これで村でも、一人前ってことだな」

父さんが俺の肩を軽く叩く。分厚い手のひらは温かくて、安心する。


嬉しいはずなのに、胸のあたりに不安がひっかかる。

――俺は、本当に大丈夫なんだろうか?


小さい頃から、俺の体には八つの魔法が勝手に発現した。火、水、風、土、光、闇、癒し、そして錬金。

全部、初級とはいえ、八系統すべてに触れられるなんて、本来ありえないらしい。


右手の甲には、複雑に絡み合った青い紋章が刻まれている。普段は皮膚と同じ色で見えにくいけど、魔力が動くと青く脈打って輝く。あれがたまに怖い。まるで俺の心臓の動きを真似るみたいに、ドクン、ドクン、と震えるから。


「アルト、怖がらなくていいのよ」

母さんがそっと俺の右手を包んだ。

「あなたには私たちがついているんだから」


その優しさが、逆に胸に刺さることだってある。

俺は、もし失敗したらどうなるんだろう?

この力のせいで、もし誰かを傷つけたら……。


「力を恐れるな」

父さんが笑いながら言った。

「制御さえ覚えれば、お前は誰よりも自由になれる」


――自由。

その言葉は、いつも俺の胸を揺らす。



朝食を終えたあと、家の裏手の丘に出ると、風が心地よく肌を撫でた。光を受けた草原はきらきらしていて、こんな日常を壊したくないと心から思った。


だけど、分かってる。

俺はもう、ここにずっといるわけにはいかない。


幼少期から無意識に使っていた魔法は、成長するにつれて「制御」を求めるようになった。少し感情が揺らぐだけで魔力の流れが乱れ、思わぬ現象が起きてしまう。


昨日だって、少し焦った拍子に風魔法が暴走して、父さんが積んでいた干し草が全部吹き飛んだ。


「ハハ! いい風だな!」と笑ってくれたけど、内心ヒヤヒヤだった。


俺は、この力をきちんと扱わなきゃいけない。



夜になり、星空を見上げながら、いつもの魔法練習を始める。


右手の甲を軽く意識すると、紋章が青く脈打った。

手のひらに集中すると、小さな炎がぽ、と灯る。


「……よし」


火を消し、水の球を生み、風と土の流れをゆっくり調整し、光の玉を手のひらに乗せる。闇の力は影を濃くする程度しか使えないけど、それでも確かに俺の中に存在している。


癒しの魔法は、母さんの肩こりや、小動物の擦り傷で試した。錬金の力は父さんの農具の修繕で役に立った。


全部、初級の域を出ない。

けれど、八つ全部を扱えるってだけで、世界ではほとんど見たことがない「異常」らしい。


俺は、それを誇るよりも前に、まず理解しなきゃいけない。


「外の世界に……」


自然と口に出てしまった。


――そうだ。

俺は、外に出るべきなんだ。


村の中だけで力を隠しながら生きているだけでは、いつか限界が来る。

制御を学び、経験を積み、自分の力が何なのかを確かめたい。


父さんや母さんと過ごす日常は、俺の宝物だ。

だけど、「離れたくない」という気持ちのまま生きていたら、きっともっと大事な何かを失う。


恐怖に負け続けて、このまま成長したら……。

そのほうが、きっと怖い。


丘の上で、星空を見ながら俺は拳を握った。


「……俺、行こう。外へ」


紋章がぼんやり青く光り、

まるで返事をするように、静かに脈打った。


それは、俺の決意に呼応するような温かい脈動だった。

怖さもある。でも、それ以上に胸が熱くなる。


十三歳の俺は小さい。

まだまだ未熟で、わからないことだらけだ。


だけど――


この右手の力と、両親の愛と、そして俺自身の決意が、確かに未来への道を照らしている。


これが、俺が冒険者として歩き始める前の、最初の一歩だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ