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第一章:威力は初級、魔力量は無限。最弱設定のはずが世界から頼られています  作者: ぃぃぃぃぃぃ


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第三十八話:新たな時スキル《予知(エピタフ)》の開示

森で《収縮時間デセレーション》を無意識に発動させ、辛くも命を救った俺は、極度の疲労と混乱を抱えながら、急いでギルドへと戻った。ホールで倒れ込むわけにはいかない。人目を避けるように脇道から修行部屋に直行した。

修行部屋の扉を開けた瞬間、ルナさんの目が鋭く光るのがわかった。俺の体から漂う、尋常ではない魔力消耗の反応を察知したのだろう。彼女はすぐに歩み寄ると、青い紋様が微かに光る右手を俺の額に触れた。

「アルト……何があったの? この魔力反応……やはり、《デセレーション》を使ったのね」

ルナさんの手の感触が、俺の魔力残量がほとんど限界に達していることを示していた。身体の芯が冷たい。体内で、無意識下の強力な時魔法が、どれほどの膨大な代償を奪い去ったのかが理解できた。

俺は修行部屋の床に膝をつき、荒い息を整えながら、森での出来事を順を追って語り始めた。

「グリムファングの群れに、低ランクの冒険者が襲われていました……逃げようとしたんですが、体が勝手に動いて……。意識的に《アクセラレーション》を発動させようとしたんです。でも、失敗して──代わりに《デセレーション》が発動しました」

言葉を区切りながら、俺は最も恐ろしい感覚を口にした。

「そして……発動する直前、俺、あの光景を知っているような感覚があったんです。未来視じゃない。でも、まるで過去の記憶のように、彼らが死ぬ瞬間の匂いが……」

俺の言葉を聞いたルナさんの瞳が一瞬、鋭く光った。彼女は自身の知識と理論を総動員し、俺の話の意味を整理しようと考え込む。その数秒の静寂が、恐ろしく長く感じられた。

「……なるほど。あなたが無意識で発動させているのは、三つ目の時属性スキル、《予知エピタフ》ね」

ルナさんの声は冷静だったが、その重みは十分に伝わる。彼女は俺が語った「死の瞬間の匂い」という感覚を、自身の理論に沿って説明した。

「このスキルは、数秒から数分先の未来の出来事を、映像として脳内に映し出す力よ。あなたが言った“死の瞬間”の感覚は、この未来視がまるで過去の記憶のように脳に流れ込んできた結果なの」

俺の体は震えた。自分の意思とは無関係に、予知──発動──行動という恐ろしい連鎖が無意識に作られていたのだ。しかも、今回のように《デセレーション》と連鎖すると、魔力への負荷は極度に高まる。

「つまり……俺は、時魔法の中で時魔法を重ねてしまった。無意識に……禁忌の連鎖を」

俺の声は震え、恐怖が混じる。自分の無意識が、自らを破滅に導こうとしている。

ルナさんは静かに頷き、理論的に説明を続けた。

「あなたの魔力は、今、極限まで消耗している。《エピタフ》がコンマ数秒先を予知し、その直後に《デセレーション》が無意識に発動した。連鎖が短時間で起きたために、魔力回路は激しく乱れ、極端に消耗したのよ。これは短期の連続使用でも同じ。時属性スキルは、意図せず重なると魔力の流れを激しく乱す」

俺は、床に視線を落とした。手の震えが止まらない。俺の無意識が、次の瞬間を読み取り、次々とスキルを発動させる──それは、自分では制御できない、あまりにも恐ろしい連鎖だった。このままでは、いつか本当に魔力回路を破壊し、ルナさんのように力を失うか、それ以上に命を落としかねない。

ルナさんは俺を立たせ、目を真っ直ぐに見つめた。その眼差しは、厳しくも、深い優しさを湛えているように見えた。

「あなたの体は極限にある。だから、当面、依頼は禁止。訓練方針も変えるわ」

「変える……ですか?」俺は戸惑った。やっと《アクセラレーション》の制御に光が見え始めていたというのに。

「ええ。《アクセラレーション》や《デセレーション》の意識的訓練は、極限状況や精神的負荷が前提。今のあなたでは危険すぎるわ。それに、訓練中に《エピタフ》が発動すれば、他スキルとの連鎖も起こりやすい。どのスキルを意識的に練習しても、無意識の《エピタフ》が先に介入する可能性がある」

ルナさんの瞳は、強く俺を見据えた。彼女の言葉は、俺の能力の本質を突いている。結局、俺の身体が危機を予知する限り、《エピタフ》は暴発のトリガーになり続けるのだ。

「だから、次の焦点は《予知エピタフ》の制御よ。このスキルは、安全な環境での応用的訓練が可能。時間と空間のわずかな情報を読み取る能力を、あなたの意志で、意図的に操ることができれば、無意識の連鎖を防げる」

俺は小さく頷いた。理解はしているが、恐怖も消えない。無意識で暴走する時魔法は、自分を破滅に導く可能性がある。

「まずは修行部屋で、日常的な未来を読み取る訓練をするわ。たとえば、ギルドホールで次に誰が、いつ扉を開けて入ってくるか。それを予知するの。無意識ではなく、あなたの意志で未来を読み取るのよ」

俺は深く息をつき、力なく頷いた。自分の力を制御すること──それが、今、俺に課せられた唯一の道であり、新たな戦いだった。

「連鎖を断ち切る。それができなければ、《デセレーション》も《アクセラレーション》も、制御不能の暴走魔法になってしまう……」

俺の心に、静かながらも強い覚悟が芽生えた。苛烈な自己との戦い──それは、時を操る三つの力の連鎖を断つための、過酷な修行の始まりに他ならなかった。

修行部屋の扉を閉める音が、静かに響いた。外界の時間は流れている。しかし、アルトの中では、未知の未来を読み取り、意志で変えるための新たな戦いがすでに始まっていた。俺は再び、床に座り込み、目を閉じた。まずは、この体と魔力を休ませることが、連鎖を断つための最初の一歩だ。目を閉じた闇の中で、あの死の瞬間の匂いだけが、まだ鮮明に残っていた。

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