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第一章:威力は初級、魔力量は無限。最弱設定のはずが世界から頼られています  作者: ぃぃぃぃぃぃ


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第三十五話:異例の二段階昇格と冒険者たちの視線

領主との謁見から一夜が明けた朝、俺はルナさんに伴われて、ギルド裏手の居住区画へ向かっていた。普段の喧騒とはまるで別世界のように静かで、空気が澄んでいる。ギルド職員の専用区画らしく、外からの視線もほとんどない。


「アルト。しばらくは、ここで生活してもらうわ」


 歩きながらルナさんは淡々と告げる。俺は思わず足を止めてしまった。


「……ここに、ですか?」


「ええ。あなたの魔力制御は、基礎すら危うい状態。何かが起こってからでは遅いわ。だから、私の監視が届く場所で生活しながら、徹底的に訓練してもらうの」


 そう言って開かれた扉の先にあったのは、必要最小限だけを残したような簡素な部屋だった。無駄なものが一切なく、しかし清潔で、空気が澄んでいる気さえする。壁に埋め込まれた青い銀鉱石のプレートは、魔力干渉を遮断するためのものだとすぐわかった。


「防音もしてあるわ。多少の暴発や異常が発生しても問題ないわよ。この部屋が、これからのあなたの修行場になる」


「……ありがとうございます」


 部屋に荷物を置き、簡単に整えていると、突然廊下から慌ただしい足音が近づいてきた。


「ルナさん! アルトさん、いらっしゃいますかっ!? 本部から……緊急連絡が!」


 駆け込んできた職員の青年は、息を荒くしながら手に羊皮紙を握っている。興奮と緊張がその表情からあふれていた。


「本部から? タイミングが良すぎるわね……」


 ルナさんが眉をひそめると、青年は震える手で羊皮紙を差し出した。


「ギルド本部からの……正式なランク認定書です!」


 俺たちは廊下でそれを受け取り、ルナさんが封を切った。読み終えた彼女の目が一瞬だけ揺れる。


「アルト……これは、異例中の異例よ」


 手渡された羊皮紙を読み、俺は息を呑んだ。


 ──【ギルドランク:D】


「……え?」


 喉が勝手に震えた。俺はずっとFランク。Eに上がることすらできなかった。それが一気に二段階飛び越えて、Dランク。


 自分の手が震えているのがわかった。


「おめでとう、アルト。FからDへ……これは“二段階昇格”。ギルドでも滅多にないことよ」


「お、俺が……Dランク……?」


「本部は、あなたの総合的な戦果と潜在能力を評価したの。あなたの魔法は支援寄りで、個人討伐の数字が伸びなかった。それでFに据え置かれていただけ。でも今回は違うわ」


 ルナさんは淡々と続ける。


「A級危険度の魔物群を弱体化させ、街の被害を抑えた。それだけではないわ。領主様の推挙も大きかった。三つが揃えば……Fの枠には収まらない」


 改めて羊皮紙を見つめる。


 俺の名前の隣にある“D”の文字は、何度見ても消えなかった。昨日までの俺を縛っていたFランクの烙印は、もうそこにはない。


 胸の奥がじわりと熱くなる。


 そのとき──ギルドの受付ホールからざわめきが聞こえた。


「おい……アルトじゃねぇか?」 「本部からの認定、本当にDランクだってさ」 「Fのデバフ使いが、いきなり……?」


 視線が突き刺さる。最初は疑念、次に嫉妬……そして、どこかに敬意のような色も混じっていた。以前のような軽蔑の視線ではない。


「でもよ、あの泥濘化の魔法……マジで助かったんだぞ」 「戻ったとき、魔物ほぼ動けなくなってたからな。あれはやべぇ」 「シエラさんも言ってたろ? アルトがいなかったら犠牲者はもっと出てたって」


「……まぁ、もうFじゃねぇわな」


 俺はその視線から目をそらさなかった。

 いや──そらす理由がなくなっていた。


(これは、俺が街を守った“結果”。誇るためじゃなく……背負うためのランクだ)


 息をゆっくり吸い込み、吐き出す。


「ルナさん……ありがとうございます。でも、このランクは……責任の重さなんですよね」


「その通りよ」


 ルナさんは優しく微笑んだ。


「あなた一人の力だけじゃない。判断、仲間、運。それら全部を含めてのDランク。これは“次の段階へ進む資格”を得たということ」


 ルナさんは俺の前に立ち、真剣な眼差しで告げる。


「さあ──ここからが本番よ。Dランクは一人前として扱われる。だからこそ、その実力をつけてもらう。覚悟して」


「……はい!」


「あなたの時属性はまだ制御不能。危険も大きい。でも、それを扱えるようにする。それが、今からの修行よ」


 その言葉は厳しいはずなのに、不思議と温かかった。

 俺の胸に、強い決意がゆっくり灯る。


「絶対に強くなります。お願いします、ルナさん」


「その答えで十分。さあ、始めるわよ」


 ルナさんは踵を返し、ギルド奥の資料室へと歩き出す。そこには危険視される魔術理論や、半ば禁術のような文献も眠っている。


 俺の“力の核心”に向き合うなら、避けては通れない場所だ。


 ホールから向けられる冒険者たちの視線を背に受けながら、俺はその背中を追った。

 胸の奥には、不安よりも──期待と、強くなりたいという願いがあった。


 こうして俺は、異例の二段階昇格を受けて、

 自分の魔力と向き合う修行の日々へと足を踏み入れることになる。


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