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第一章:威力は初級、魔力量は無限。最弱設定のはずが世界から頼られています  作者: ぃぃぃぃぃぃ


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第二話:神の静謐なる声

終わりのない白の世界。


 明るいわけでも暗いわけでもない。

 温度もなく、匂いもなく、音もない。

 何かがあるようで、何もない。


 アルト・ハヤカワは、その絶対的な静寂の中に立っていた。


 ここには時間という概念すら存在していないようだった。

 息をしているのかどうかすら曖昧で、自分の身体の輪郭も、意識の境界すら薄れていくような感覚に陥る。


(……どこだ、ここ)


 そう思ったところで、答えは返ってこない。

 ただひたすらに白い空間が広がるだけだった。


 暗くもないのに底知れず、孤独なはずなのに妙な安心感がある。

 静かすぎる世界は、自分の心の奥底までも吸い込んでしまいそうだった。


 ──どれほど時間が経ったのか。

 いや、この世界ではそれを測る基準すら存在しない。


 そんなときだ。


 視界の正面。

 距離感という概念が崩壊した世界で“正面”という言葉自体が曖昧なのに、“そこ”だとはっきり分かる一点があった。


 白の濃度が、ふっと高まる。


 光が強まったのではない。

 そこだけ、存在が凝縮していく。

 まるで巨大な白い画布の上に、透明なインクで立体が描かれていくような──。


(……来る)


 胸が静かに跳ねた。


 そして。


『ハヤカワ・アルト。君の魂の記録を──読み終えた。』


 声が、響いた。


 男でも女でもない。

 老いても若くもない。

 澄んだ川の流れのようでもあり、古代の石碑のような重みもある。


 ただその声を聞くだけで、心が静まり返るような──そんな“存在の力”があった。


(魂の……記録?)


 脳裏に浮かんだ疑問が、そのまま読まれたように感じる。

 自分の行動、思考、後悔、願い……すべてを見透かされている。


 けれど、不快ではなかった。

 むしろ、胸の奥がじんわりと温かくなるような懐かしささえ感じられた。


「……あ、あなたは……?」


 勇気を振り絞って問いかける。

 口から出た声は震えていたが、それは恐怖ではなかった。


『君の世界で言うところの──“神”。そう呼べば分かりやすいか』


「っ……!」


 アルトの心臓が大きく跳ねた。


 神。

 現実味のない言葉のはずなのに、この声には否定しようのない説得力があった。


 神──と名乗った存在は、静かに続ける。


『君の最期の行動……あれは実に稀有な輝きを放っていた』


 静かに、しかし確かに白い世界全体がその言葉に反応する。


『己の命を顧みず、幼子を救った。

 利得も打算もなく、反射のようにして他者を優先した。

 あの瞬間、君の魂は強く輝いた』


 アルトは視線を落とした。


「……そんな、立派なものじゃないです。

 身体が勝手に動いただけで……見捨てるなんて、できなかっただけで……」


 本心だった。

 誇りもなく、打算もなく。

 ただ、どうしようもなく目の前の命を助けたくて動いただけだった。


 神は、まるで微笑むような声音で静かに告げる。


『謙遜は美徳だ、アルト』


 一拍置き。


『だが恐れる必要はない。

 ここは罪を裁く場所ではないし、天国と名付けられた安息の地でもない。

 君が“この先、どこへ向かうべきか”を決めるだけの場だ』


(……俺の、行き先)


 喉が乾き、息が浅くなる。


 神は、淡々と、しかし温かく続けた。


『君の魂は、新たな役割を担うのに足る輝きを持っている。

 そして君の死は、本来の流れから外れた、不慮の事故だった。

 だからこそ──埋め合わせが必要なのだ』


 その声に、神としての揺るぎない決意が滲む。


『これから、君が行くべき場所の話をしよう』


 次の瞬間。


 “白”が爆ぜた。


「──っ!」


 眩い光がアルトの視界を飲み込む。

 思わず腕で顔を覆うが、その光は痛みも熱も持っていない。


 ただ優しく、あたたかく──

 そして、すべてを塗り替える力だけがあった。


(……これが……俺の、新しい……)


 光の中で意識が遠のく。


 それが“第二の人生”の始まりだと、アルト自身が気付いたのは──そのずっと後のことだった。


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