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かぜはいじわるだ

雛鳥って、どんな気持ちで飛ぶ練習してるんですかね?

世界には、四つのことわりが巡っている。

大地、海、生命、そして——空。


その空の理をもっとも濃く受け継ぐ民がいる。

彼らはセリディア族。

鳥の姿と人の心を併せ持ち、

風と共に暮らす“空の子ら”だ。


風都ふうとと呼ばれる高地の集落には、

今日も若い翼たちが初めての空へ挑む声が響いていた。


だが、その中に——

風を“友”ではなく “いじわる”だと思っている少女が一人いた。


名前はルア。羽根はふくらみ、爪先は地面をちょんちょん掘り、今にも泣きそうな顔で風に背を向けている。


風は歌い、羽は応える。

この世界では当たり前のことが、ルアにはまだ、少しだけこわかった。


早春の空は、まだ少し冷たかった。

セリディア族の集落の上では、子どもたちが楽しげに羽を広げ、風に乗ろうと跳ねている。

青みがかった灰色の翼や白く光る金色の羽、夕陽のような赤褐色、そして春の草みたいに鮮やかな翠の羽など…

様々な羽色が陽を弾いてきらきらと舞った。


その輪の中で、ひとりだけ地面に座りこんでいる子がいた。


翠羽の小さな少女、ルアだ。


「……またおちたぁぁ……!」


たった今も、風に弾かれるようにして転がり、尻もちをついたばかり。翼の先がひりひりする。

空を睨むルアの首が、悔しそうに左右へチョンチョン揺れた。


(なんでわたしだけ……こんなにうまくとべないの?

かぜって、いつもわたしをつきおとそうとするし……!)


涙をこらえて翼をばさっとふるわせたそのとき――


「また落ちたの?」


ふわり、と風が揺れ、影が降りてくる。

青灰――青みがかった灰色の美しい翼を持つ、三つ子の姉、リアだ。


リアは妹のルアの頭をぽふぽふ撫で、心配そうに金の瞳を細める。


続いて、ふわぁ……と欠伸しながら降りてきたのは、

白金――白く光る金色の羽を持つ、同じく三つ子の弟、ノア。


「……ルア。風……怒ってるんじゃなくて……寝てるだけ……」


「どっちにしろ、とべないよ!!」


ノアは首をこてんと傾けるだけで、何も答えない。

そのマイペースぶりにルアはさらにむすっとする。


そこへ、ひらりと軽やかな紅褐色の羽が舞った。母アリアが降り立つ。


「ルア、風は意地悪じゃないよ〜?ほら、ここをこう広げて……」


アリアは、ルアの小さな翠の翼をそっと持ち上げて、風が通り抜けやすいように角度を調整してくれる。


「風は“押す”んじゃなくてね、“支えようとしてる”こともあるのよ」


その母の声は、ルアには風よりもあたたかく、支えてくれるものに感じた。


夕暮れ。

丘にひとり立ったルアは、再び風に挑むことにした。

空は橙に染まり、草原をさらさらと風が撫でる。

昼間は怖かった風も、いまは少しだけ優しく感じる。

ルアは目を閉じ、小さく翼を広げた。


ーーびゅっ。


(あぁ〜!いじわる!またおしてくる……!)


反射的に目をあけそうになったそのとき、ふわりと風の流れが変わる。


――やわらかい。


まるでルアの背中をそっと抱き止めるみたいな、そんな優しい力だった。


(……あれ?)


風が、怖くない。

ルアは足に力を込め、そっと地面を蹴る。


ふわっ――


今度は、落ちなかった。風がちゃんと受け止めてくれている。


ルアの胸がふわっとあたたかくなり、翼を大きく広げると、風もそれに合わせて流れを変える。


(……かぜって……いじわるしたり、やさしかったり…まるで、ともだち…みたい……?)


その瞬間、ルアの“風”に対する世界が変わった。




少し離れた木の上で、青灰のリア、白金のノア、そして紅褐の母アリアと白金の父ソレンがそっと見守っていた。


リアは息を呑んだ。


「……ルア、ひとりで飛んでる……!」


ノアは目をこすりながら、

「……風、起きたね……」とぽつり。


アリアは紅褐色の羽を揺らし、誇らしそうに微笑んだ。父ソレンは穏やかに頷き、そっと広げた翼に、白金の羽が夕陽を受けて淡く光った。


「風はね、恐れれば遠ざかる。寄り添おうとすれば、必ず応えてくれるものだよ」


夕空の下で、ルアの翠の羽がふわりと風に乗る。


――それが、ルアが風と出会った日の物語だった。


鳥の、空を滑空する姿が好きです。ついつい、ぼ〜っと見ちゃいます。ああやって飛べるようになるまで、どんな風に練習するんだろ〜何度も落っこちたりしながら飛べるようになったのかな〜凄いな〜とか考えてると私の時間も飛んでいます。

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