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◎料理の。


寒い夜。

外は吹き荒れ、白い雪が舞っている。


こんな景色をもう、すでに、


「100回は見てるよ!!」


コアが静かーにコーヒーとココアを飲むサロスとアンバーに叫んだ。


「もう!この吹雪はいつまで続くのさ!」


「コア君。言っておくけど100回も見てないよ。いって10回。」


「そういうことじゃなくて、僕達ずっとこの場所に缶詰じゃないか!早くサピテンス国に行かないといけないのに!」


「そう言われてもな。この猛吹雪じゃ、あんな山の上の雲上にまで行けないから。行くまでに死んじまう。」


「まあまあ、こうやってゆっくりできるんだからいいじゃない。」


アンバーがマシュマロを浮かしたココアを飲みながらそう言った。


「本当だよ。ここに来るまでだって大変だったんだから。なぁ?コア。」


サロスはコアに意味ありげな視線を送る。


「べ、、べ、別に僕だけのせいじゃないだろ!あれは…。」


火の魔導書の写しを貰ったコアは早速、魔法を練習していた。


車の中で。


サロスはコアに何度も忠告するがコアは魔法の呪文を読み上げ、聞かない。


そして、案の定。

魔法が暴発し火の玉が車のドアを破壊した。


しかも、そこで終わらずにある金持ちの木を燃やした。


その償いで伝説の金のなる木の元である金の苗を見つけることになって、やっとの思いで見つけたかと思ったら、偽物で。


頭を下げて、許して欲しいと懇願して、サロス達の財産の残りほとんどを賠償金として金持ちに渡した。


「ここまでに半年かかったんだぞ?」


「ま、まあ確かに、僕が悪かった…かも。少しは。」


「往生際が悪いな。…ま、とにかく、自由に休んどけっていうことだよ。」


「分かったよ。」


コアは不貞腐れて言った。


翌日。


雪は止み、束の間の天国がやってきた。


「じゃあ、俺は調べたいことがあるから。2人も好きに過ごしてくれよ。」


サロスはそう伝え、宿屋の部屋から出て行った。


「さてと、そろそろ私も出発しよっかな。」


何とアンバーもどこか行くようだ。


コアは焦ってどこに行くか尋ねた。


「このルナノクスに来たらやることなんて他にないでしょ!」


「な、何?」


「レストラン巡りに決まってるでしょ!?」


「レストラン?」


「そうよ。だってここのお肉は世界で1番美味しいとも言われてるんだから。」


「そうだったの!?初耳なんだけど。」


「コア君も知っての通りここはウェアウルフの国だからお肉にはどの種族よりも人一倍うるさいの。それがいつしかここの名物になったの。」


へぇー、とコアは雑に相槌を打った。


「それに、ここは西側との物流の要所だから他の国の食材も集まりやすいんだよ。」


「例えば?」


「魚に野菜、お酒に高級キノコ。そんな食べ物の中でも特にチョーレアな"アルビノ"っていうお肉は世界最高の味なんだってさ!」


「世界最高の味…!」


聞いているだけでこっちまでお腹が空いてくる。


ルナノクス国は北のサピエンス国、東のパピルス国と南のカスス国と西のカーソル国を繋ぐ、第一貿易国家である。

さきほどアンバーが言ったように元々、この国はウェアウルフ(人狼)が住んでいた村だったがある優秀なリーダーが野蛮な彼らを従い、改革を起こした。

元より足が早く、力も強いウェアウルフは理性を手に入れたことで商売の道を進んだ。


その商売の道というのが宅配である。


そうして東西南北、様々な国を周りあらゆる物が集まりこのルナノクスができた。


「アンバー!僕も付いていっていい?」


「もちろん!友達と一緒に食べた方がおいしいにに決まってるしね!」


2人はノリノリで準備を済ませた。


「じゃあ…」


「いよいよ…」


「「世界最高の味を!!」」


元気よく扉を開けて外へと飛び出した。



「翠緑、翠緑、この本にも無いか。」


サロスは本屋で調べていた。


彼女が言ったあの物について。



「翠緑の石について教えろ。」


「いやだ。私がそんなことをあなたに言うわけがないでしょ。」


ノビリスにて、半年前。


サロスは牢の中にいるクレディンを問い詰めていた。


「お前を殺さずに生かしたんだ。それくらいの義理はあったっていいだろ。」


「あなたが私を生かした?あはは!あなたはつくづく可笑しなことを言う。」


細い目を開け、黒い目がギラリとサロスを向いた。


「あなたが私を殺せなかっただけでしょ。」


「…黙れ。お前に自由に発言する権利なんてない。人の命を軽んじるお前に。」


「…むしろ、あなた方の方が自分の命を軽んじていると思うけどね。」


「は?」


「彼らの命が魔王様に捧げるに足ると判断するほど私達は"命"を見ている。だが君達勇者は馬鹿みたいに勝てるはずもない戦いに挑み、霧散しているだろ。」


「いや、勝つ。俺達が絶対に魔王を倒して世界を平和にする。」


「平和…だと?お前達の言う平和など仮初に過ぎない!真の平和は魔王様にしか作れない!300年を生きて、この世界を知った気になっているのかどうかは知らないが、軽薄かつ、滑稽な意志だ!」


椅子から立ち上がり、鉄格子を掴み、サロスを睨んだ。


「お前がしたいことなど、人を助けるだとか子供じみた夢物語に過ぎないだろうさ!!」


「…。」


クレディンの乱れた呼吸が地下牢獄中に響く。


「それでも…。どれだけ俺がガキくさくても、知ったかぶりでも、それでも、俺はこの世界の最後の勇者になる。」


変わり果てた仲間を目の前にしていながら、俺はまだ彼女が戻ってきてくれると信じてしまう。


頭から離れない。


クルックス。

優しいお前なら何て言う。

何も言わずに隣にいるのだろう。


きっと最期のあの時も…。


「…それが俺の果たさなきゃいけないことだ。」



剣に付いたこの石について知れれば、魔王討伐に近付けるはずだ。


コアだけに背負わせない。


「…見つけよう。」


サロスは本の背表紙を指でなぞり始めた。



「え!?もうない!?」


「はい…申し訳ございません。」


料理長のレオナルドはアンバー達に謝っていた。


「次の入荷はいつなんですか?」


コアが聞いた。


「それが…未定で…。早くとも2ヶ月後になるかと。」


「そうですか…。」


「アルビノは大変貴重な物で仕入れ数も通常よりも少なく…。」


「そんな…。」


アンバーはうな垂れ、机に伏した。


「申し訳ございません。そこまで楽しみにして頂いたのに。」


ウェアウルフのレオナルドはある物を毛深い手でアンバー達2人に渡した。


「お詫びと言っては何ですがこのタダ券を。」


「あ、ありがとうございます。」


コアが2枚のタダ券を受け取る。


しかしアンバーがコアからタダ券を奪い、レオナルドに突き返した。


「ど、どうされましたか?ご不満があれば言ってください。」


「じゃあ、言うわ!私達はアルビノを食べに来たの!どんなタダ券もいらない!」


「でもアンバー。このお店にないんだからどうしようもないよ。」


アンバーは目を光らせて、レオナルドに勢いよく提案した。


「なら!私達がアルビノを取ってきたら料理してくれる!?」


指を指して問答した。


「はい!?」


「ここにないなら私達が用意すれば解決するよね!」


「ま、まあ簡単に言えばそうですが…」


「よし!じゃあコア君!今から行くよ!」


「ほ、本気なの!?」


「もちろん!!」


するとアンバーはコアの手を引き、店を出て言ってしまった。


「ま、待ってください!!…って。もういない。」


レオナルドはアンバーの熱量に押されてしまい一つの重要なことを言い忘れていた。


それは…。


アルビノの希少性は個体数の少なさだけが理由ではない。


アルビノは実に危険な動物であることである。



「待って!待って!待っててば!!」


「どうしたの。」


「どうしたの。じゃないよ!急にどうしたのさ!言ってもただの料理だろ?別に急ぐ必要なんて…。」


コアは急に目の色を変えたアンバーを気にかけていた。


「それは…。」


アンバーはその先の口を開くことはなかった。


「とにかく、今食べないとダメなの!」


彼女の求める理由は分からないままコアの手を引き続き引き始めた。


市街区を抜け、あっという間に森の中へ入っていった。


「アンバー!聞いて!」


その間、コアは呼び続けるが一向に答える気配がない。


そうして森の深い所にまでやってきた。


辺りは人気もなく風に葉が擦られている音だけが聞こえる。


「アンバー。いい加減、教えてよ。」


コアは随分疲れている。

30分かそこら、手を引かれ足を動かし続けたからだろう。


「……。」


コアの懇願はアンバーには届いていない。


「アンバー。聞いてる?」


もう一度と同じ質問をするが、アンバーがコアの口を抑えた。


「…この音聞こえる?」


アンバーがコアに小声でそう言った。


コアは耳を澄ます。


すると、小さな揺れとともにドシドシと足音?のような音が聞こえてきた。


「…これって?」


コアはアンバーの手を退かしながら言った。


「分からない。…行ってみよう。」


アンバーが音の方に走り出したためにコアも付いて行った。


草木を掻き分け、音が大きくなっていく。


そして、音の目の前に来た頃。


木々の間に、見えた。

白い皮膚、鋭い牙に、涎滴る大きな口を持つ、背丈、アンバーの4倍に差し掛かる。


「あれって、太古の昔にいたっていう…」


コアが首を上に上げていく。


「"恐竜"じゃ…。」


「わ、私も、アルビノが恐竜だなんて…。」


2人は固まってそのアルビノを見た。


視線に気付いたのか、アルビノはその大きな頭をこちらに向ける。


爬虫類特有の目が2人を見据え、瞳孔が縦に変化した。


「まずい…。」


アンバーがコアの手を握り、


「逃げるよ!!」


走り出した!


アルビノはとてつもない轟音を響かせ、地面を揺らし、2人を喰おうと走り出した。


アルビノに向かってコアは電撃を放ち応戦する。


が、なんと電気が皮膚で逸らされてしまった。


「あいつ!電気が効かない!」


「だったら…。」


アンバーが背中の盾を取り出し、道ゆく木に体当たりした。


すると木に積もった雪が葉から落ち、アルビノの視界を防いだ。


アンバーはコアの手を引き、木の後ろに隠れた。

そして、弓を構え、呪文を唱える。


「紅き魔導よ、我の言伝を聞きたまえ。今構えし矢に集いたもう。眼前せし敵を撃ち貫け。」


矢先に燃える炎が灯され、弦を放した。


「パイロ。」


その燃える矢は見事、アルビノの体に突き刺さった。


しかし、矢はやつの再生により、抜けてしまった。炎は体の3分の1程度を覆った。


アルビノは咆哮して、その場を去った。


「はぁー。助かった。」


コアが息をつくと、アンバーがまたまた手を引いて、洞窟を探し始めた。


「また、ここに戻ってくるかもしれないから、一旦隠れよ。」


そう言った。


洞窟の中は暗く湿っていた。


だが、贅沢は言ってられない。


2人は棒切れを集め、暖を取ろうとした。


そんな最中に、コアが言った。


「もう、やめようよ。こんなこと。別に料理くらい、また2ヶ月後にでも食べればいいじゃん。」


「…それじゃ、ダメなの。」


アンバーが詰まったものを押し出すように言った。


「どうして。」


コアは続ける。


「それは…。」


アンバーの呼吸音が洞窟内に響く。


「…それは今日が両親の命日だから。」


「…!」


コアは言いたいことを一旦喉の奥に押し込んだ。


「そんな日に両親との思い出深い、アルビノが食べたいの。いつも特別な日になると食べてたから。」


そしてアンバーは続いて言った。


「それに、君にも一緒に食べるって約束したから。」


「…分かった。僕も手伝うよ。」


コアは辿々しくもはっきりと、恥ずかしそうに言った。


そのコアを見て聞いたアンバーは思わず、くすっと笑った。


「ふっ。ありがと。」


「なんで笑うんだよ。」


コアはそんな反応にキレてみる。


「いーや。なんでもないよ。」


「あっそ。」


薄暗い中でもよく分かる。

コアの耳が赤くなっている。


「あっ、そうだ!」


アンバーが声を上げた。


「ど、どうしたの?」


「コア君、もう魔法の練習禁止期間から解放されたよね?」


「え、う、うん。」


「じゃあ、私が火の魔法のこと教えられる範囲で教えるよ。」


「本当に!?」


「うん!」


コアは両の拳を上に突き上げて喜んだ。


サロスから言い渡された魔法の練習期間禁止は何を隠そうあの金の苗事件によるものである。


ここで一旦整理しよう。

アルビノには電気や風の魔法は効かず、矢などの一部の物理攻撃も効かない。


しかし、唯一の弱点はアンバーの見せた通り火である。アルビノの白い皮膚を超えて肉体に攻撃できる。


だが、厄介なことにアンバーだけでは火力が足りない。そのため、コアにも今こそと火の魔法を学ぶことになった。


「コア君、じゃあやってみて。」


「…うん。」


コアは言われるがままに、呪文を唱える。


「紅き魔導よ、我の言伝を聞きたまえ。今構えし手に集いたもう。」


が、反応は無い。


前に出した手の上に小さな子供の火も現れない。


「うーん。」


アンバーは頬杖をついて考えた。


「コア君って電気の魔法をどうやって使ってるの?」


「どうやって…って言われても普通に、体の一部として。」


「…なるほど。そういうことかな。」


彼女は何かを掴んだのかコアに説明した。


「コア君。魔法っていうのは自分の一部として扱うものじゃないんだよ。」


「え?」


「そもそも、魔法の呪文にあるみたいにあくまで力を借りて、その力を操るものなの。」


簡単に言えば、コアは初めて魔法を使った時から天才的な技量を持ち合わせていた。

それは逆に言えば基礎を飛ばした飛び級のような物。


そのため、相性の悪い、つまり、苦手な魔法になると技も通じずそもそも発現しないことになったのだ。


「いい。コア君。一般的に使える魔法の種類は人生をかけて1種類だけ。その魔法を適応種と言うの。」


しかしコアは一般とは大きく異なる。

電気の魔法を熟練者(勉学で言えば教授)並に使える人である。これは魔法師と呼ばれる人の特徴と合致する。


魔法師は稀に見る魔法における天才のことであり、彼らにとっては適応種、非適応種の境はない。全ての魔法を高水準に扱える。


そのためにサロスはコアを育てることを決めたのだろう。


「だから、結局何が言いたいかって言うと!」


アンバーは溜めた。


「基礎を固めよう!そうすれば火の魔法だって電気と同じように使えるようになるはず!」


コアもそれにガッツポーズで応える。



一方、サロスはまた所変わった本屋に入り浸り、翠緑の石について調べていた。


机の上にいくつも歴史書、古文書、石の図鑑などが積み上げられている。


電球が点滅して、本を読むには難しそうだ。


「どこにも、翠緑の情報がない。」


サロスは読んでいた本を表紙を上にして置いた。


そして腕を枕に寝た。


なんでだ。

なんでどこにも情報が無いんだ。


それとも翠緑の石自体の名前が知られていないのか?


「ふっ。コアじゃないが早くサピエンス国に行って聞いてみたいな。」


そう独り言を言っていると、店主であろう人がサロスに話しかけてきた。


「サピエンスに用事ですか?」


「え?は、はい。」


「何かを知りたいとか?」


「まあそんな所ですね。」


「では、この老僕に答えられることもあるかもしれません。伊達に長生きしてませんから。」


「えっと、あなたは?」


「あー。すみません。順序が変わってしまいました。私はここの寂れた本屋を経営しているオリバーと言う者です。」


オリバー。ルナノクスの人じゃないのか?


「オリバーさん。どうしてそんなことを?」


「お気になさらず、ただお客さんのことを見ていて、とても悩んでいそうだと思っただけですよ。」


…怪しい、とも思うが親切心で言ってくれているならそれを断るのも申し訳ない。


まあ、この石だけで何かされるわけじゃないから良いか。


サロスはオリバーという老人に石について聞くことを決めた。


すると、答えはすぐに返ってきた。


「なるほど、それは勇者の証明として用いられた物だと思いますよ。」


「え?勇者の証明?」


「はい。私も弟子と一緒にそのことを研究していたことがあったんです。」


「研究…。まさか、サピエンス出身なんですか?」


「まあ、それに近しいとだけ。」


「というか、証明って、何のために?」


「それについてはあくまで推測なのですが、古来から勇者のシンボルとして掲げられていたのがその緑色であったと考えられるんです。」


長きに渡る魔王と勇者の戦いはサロス以前から続いていた。


推定10世紀前に初代勇者が魔王に挑み敗北し、その時からその翠緑の緑は勇者に受け継がれてきたという。


この緑が勇者を繋ぐ色、魔王に挑む色であるとオリバーは言った。


サロスは思い返してみて気付いた。


今まで会ってきた勇者達の色がその誰もが緑を無意識に継承していたことを。


目、肌、髪、そしてたった1人、この俺だけが体ではなく武器に緑を持つ。


そのことが謂れのない不安に変わる。


俺にはやはり…。



「よし、コア君。電気とは違って、一粒一粒の魔粒子に対して呼びかけるみたいに…。」


「紅き魔導よ、我の言伝を聞きたまえ。」


コアは優しく、呼びかけるを意識して呪文を唱えた。


「…今構えし手に集いたもう。」


険しい顔をして自身の手を見つめる。


お願い。出来てくれ。


と、小さな火がコアの手の上で踊った。

がすぐ消えた。


「…。」


「…コア君?」


「…やった!!やったよね!!今!」


案外、傷ついておらずアンバーは安心?肩透かし?を食らった。


「そ、そうだね!」


「この調子でやれば火を扱えるかもしれない!」


コアに火がついたようだ。


やる気に燃えていると、やつが現れた。


「アルビノ…。」


「このままだとやつに場所がバレてそのまま食われる。」


洞窟は高さがあるためアルビノを凌げない。

ならばと、2人は決めた。


「コア君、逃げるよ!」


「うん。」


2人は洞窟から出た。


雪の上に足跡を残しながら、アルビノから距離を取る。


アルビノはもちろん、2人の足音と跡を追って、駆けてくる。


「コア君!私が気を引くから隙を見て魔法を叩き込んで!」


「え!?でもまだ使えない!」


「大丈夫!点火はされてるからあとは火力を上げればいいだけ!そこは電気と変わらないから!」


「そういわれても…。」


コアは呟きながら、気を入れ替え、呪文を唱える。


「紅き魔導よ、我の言伝を聞きたまえ。今構えし手に集いたもう。」


火がコアの右手を少しずつであるが覆っていく。


その間、アンバーが弦を引き矢を放っていく。


「こっちだよ!」


アルビノはアンバーに標準を合わせ、襲いかかった。


炎を纏った矢はアルビノに刺さるが決定打にならない。


アンバーはコアとアルビノの距離を離すため、

あることを考えた。


腰の剣を抜き、木に絡まったツタを切り、逆バンジーの要領で空へと跳んだ。


アルビノも、驚き、その場に立ち尽くした。


アンバーは矢を3本構え、空から落ちながら、アルビノを狙った。


「30分師匠としてコア君に良いとこ見せないとね!」


アンバーは火の呪文を唱えた。


「紅き魔導よ、我の言伝を聞け!今構えし3本の矢に集え!」


矢先に宿る火が今までとは違い、荒ぶる炎に変わった。


「眼前せし敵の心臓を撃ち貫け!」


弓がしなり、3本の燃え盛る矢を飛ばした。


「プシュケ!!」


その矢はアルビノの体に深くまで突き刺さった。

そして体内から発火し、アルビノを大きく苦しめた。


それでも、アルビノは倒れない。


お前らを喰らうと言うがばかりに足を広げ、咆哮した。


「コア君!!今だよ!」


コアは眉間に皺を寄せ、右手をアルビノに向けた。


「…眼前せし敵を討て!」


業火(ごうか)!」


火が、出ない。


「出ろ!出ろよ!!」


右腕を掴んでぶんぶん振るが火が出ない。


アルビノはコアに狙いを定めた。


口を大きく開け、こちらに走ってくる。


「なんで、なんで!!」


コアは焦った。


だが、焦っても何も変わらない。


アルビノはもう目の前。


あと数秒で食われる。


アンバーは空中、矢を構えているが、打っても届くのはコアが喰われた後になってしまう。



…終わった。



ここで、死ぬ。



目を瞑り、いずれくる痛みに備える。



……。



…。



ダメだ。



僕は、決めたんだ。


お母さんにも約束した。

サロスにも。


僕は勇者になるんだ。


絶対にっ!


「こんなところで死ねないっ!!」


コアは左足を後ろに引き右手をアルビノの喉奥に向けた。


そして!


「誰が寄り添うか!魔法は俺が支配する!」


コアの右手に紅く燃え盛る炎が現れた。

その火先は長く揺らぎまるで魔物の様相である。


加えて、なにより、黒い目の色が黒と赤の2色に分かれていた。


コアはそう叫び、手の炎を放った。


炎は真っ直ぐ進み、アルビノの胴体を突き抜け見事、やつを倒した。


また大きな音とともに地面に倒れた。


「やったじゃん!!」


アンバーがコアの元へ駆け寄り勝利を喜んだ。


「う、うん。やった。」


コアは空になったようにアンバーの掛け声に応えた。


いや、実際に空になったのだ。


コアは魔力を使い果たしその場に倒れた。


「ごめん。アンバー、運んで。」



それからはアンバーにバトンタッチ。


コアを宿に運んだ後。

まず、レオナルドにアルビノを倒したことを伝え、車を用意。


その巨体をトラックに乗せレオナルドの店へ運んだ。


半日が立ち、コアが回復するとレオナルドは早速アルビノを調理し始めた。


他の料理人総出で頭や尻尾を切り、体の部分をおろした。硬い皮膚や筋肉の多い場所をとっていった。


おいしいとされる脂身の部分を豪快にフライパンの上に滑らせ、シンプルかつ肉の味がよく伝わる味付けを施した。


そんなこんなでアルビノの調理は終わり、コアとアンバーはサロスを呼びつけて3人で夕食にした。


「お前たち、なんでそんなにボロボロなんだ?」


サロスの指摘の通り、二人の恰好はまるで猛獣と戦ったようだ。


「いいんだよそんなこと!それよりも今日の料理はすごいよ!世界最高の味なんだから!」


コアはさっきまでの疲れを忘れてナイフとフォークを両手によだれを飲み込んだ。


「サロスもきっと気に入ると思う。」


アンバーはコアにフォローを入れる。


「ふーん。」


そして、2人のお腹が鳴り止まず数分経った後、レオナルドが運んできた。


満を持しての”アルビノのステーキ”である。


白い肉に塩コショウが光って見える。

煙の隙間から見えるステーキは肉汁を溢れさせている。


料理が机に乗せられると2人はいただきますと言いながらステーキを口に運んだ。


「うまーーーーー!!!!!」


「おいしい!!!」


大絶賛である。


サロスも気になって、ナイフをステーキに入れ、口に運ぶ。


「っ!これはうまいな!!」


どうやらサロスも気に入ったようだ。


「私もお裾分けしていただけませんか?」


一番の功労者であるレオナルドが3人に割って入ろうとする。

しかし。


「「「いやだ!!」」」


断固拒否である。



たらふく食べたアンバーとコアはすぐに眠ってしまった。


真夜中。


サロスは剣を眺めていた。


「緑色が勇者の印なら、なぜ、魔王の髪色は…緑だったんだ。」


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