大嫌い
「楓!放課後、体育館で練習しない?」
未来のふわふわでかわいい声が聞こえる。
「うん!いこいこ!」
あ、行っちゃうんだ。
微かに落胆している心が気持ち悪い。
二人が仲良いのは嬉しいじゃん。
また声かけよう。
ポジティブに考えなきゃ。
ネガティブな人は嫌われるよ。
こんなネガティブな私大嫌い。
でも、ポジティブになれる気がしない。
この最低最悪な性格が治る気がしない。
さ、帰ろう。
二人がいない教室なんて残る必要はない。
居心地が悪いだけだから。
みんなの視線が怖い。
人と目を合わせるのが苦手で、まっすぐな人に目を見られると本当に怖い。
みんな真っ直ぐすぎて怖い。
私の全てを否定されそうなくらい真っ直ぐで純粋だ。
だからかな。
私の全てを肯定してくれる人がいてほしいのは。
そんな人、いるわけないか。
君が楓を見つけたときの笑顔が嫌い。
嬉しそうで幸せそうで嫌い。
そこだけ恋愛映画の一部の様で嫌い。
私は主人公の恋愛を邪魔する悪者みたいで嫌い。
私は私が嫌い。
好きになれるわけがない。
こんなのを好きな人がいたらただ単に私を知らないだけだ。
こんなにどす黒くて汚いのに。
好きになってくれるわけがない。
でも本当は行ってみたい。
心の底から愛してるって。
死んでもいいくらい大好きだって。
誰よりも君が好きだって。
言いたかった。
でも、無理だった。
私にそんな資格はなくて、ただ苦しくなっただけだった。
君はいつも眩しくて、もったいないくらいきらきら輝いてた。
ずっと前から知ってるよ。
君に相応しいのは楓だって。
楓に相応しいのは君だって。
ただ認めたくなかっただけなんでしょ。
私に止める理由はない。
私は海斗からの告白を断った。
そして海斗は楓を好きになった。
ただそれだけ。
それだけのことが起こったの。
私には関係ないの。
そんなことどーでもいいの。
私にそんな時間はないんだから。