寂しいよ
ああ、君の一番星になりたい。
私の全部を愛してくれる君がいい。
そしたら全部愛すから。
何でも肯定するから。
恋に堕ちたい。
私は好きなものがほしい。
趣味が欲しい。
愛する対象が欲しい。
愛していれば、忘れることができるから。
何もかも考えなくて済むから。
ねえ、教えて。
何を好きになればいい?
君のこと?
勉強?
ピアノ?
映画?
読書?
どれがいいの。
私は何だったら特別になれる?
「今日は海斗さんはおやすみです。」
どこかでほっとしている自分がいる。
「えー休みかー。残念」
後ろで楓の声が聞こえる。
頭の中でぐわんぐわんと鳴り響く。
今日は嫉妬しなくて済むや。
純粋に楓のことをかわいいと思えて好きと思えて、すごいなと思える。
久しぶりだな。
今日だけは私が私でいられるかもしれない。
何でこうなっちゃうんだろうね。
別に楓のことも海斗のことも嫌いじゃない。
むしろ好きだ。
だからかな。
多分全部私のせいだ。
この面倒くさいこの性格のせい。
実力がないくせに他人を妬んで、
他人に認められたがって、
自意識過剰で、
偽善者で、
嘘つきで、
自己愛はあるくせに自己肯定感は低くて、
ものすごくめんどくさい。
どうしたらこの性格を治せるんだろう。
それとも一生治せないのかな。
治せないならもういいや。
「ねえねえ、雨音。今度のバドの試合のダブルスでさ、未来と出ることになったんだよ〜!」
なんで、楓が未来と。
いや、当然か。
バド部の中で2人が1番上手い。
ダブルスになるのも納得できる。
でも、私にも声だけでもかけてほしかった。
最近、未来とは話していない。
少し冷たく感じる。
ああ、またかもしれない。
また私は嫌われるのか。
もう嫌だ。
嫌われたくなんてない。
波紋を立てたくない。
疲れた。
「そうなんだ〜!がんばってね!」
そうやって天使の仮面をかぶる。
悪魔の心はずっと泣いている。
寂しいよ