なんで?
「楓、何でこう言う風になるん?」
「ああ〜そこはね。代入してないからだよ。てか、海斗時間やばいよ?」
「だいじょぶ。だいじょぶ。で、これは〜?」
私が朝、見たその光景は私をどん底に突き落とすものだった。
私に告白してきた海斗は私の親友・楓とものすごく仲良さそうに話をしていた。
「あ、雨音、おはよう!」
みなとはすぐ私に気づき笑顔で話しかけてくる。
「おう、雨音」
「あ、うん。2人とも、おはよう。」
私はぎこちない挨拶をして席に戻る。
「で、だからここはこうなるの!」
「あ〜!そういうことか!楓分かりやすいな」
「そう?嬉しいな!」
みなとの恥ずかしいけれど嬉しそうに弾んだ声が聞こえてくる。
私はその場にいるのが辛すぎてトイレに駆け込んだ。
ねえ、昨日は好きだって言ってくれたじゃん?
どうして楓と仲良くしてるの?
私なんかだめなことした?
もう少し考えさせて欲しいって言っただけじゃん。
たぶん、みんな楓のことを好きになるんだよね。
だって、私が大好きだもん。
友達として最高だと思ってる。
だから尚更だよ。
私はまた楓に負けるの?
勉強でも運動でも顔でも仕草でも行動でも。
全部負けるの?
私がいくら頑張っても楓はずっと先にいる。
私がクラスで上位の成績でも楓は満点をとってる。
ああ。
羨ましいな。
悔しいな。
楓は女子から好かれ、男子からも好かれる。
私の努力って何?
「やっぱ、私いらないのかな?」
「そうじゃね?だって生きてる意味ないし。」
「そっか。だよね。あの子が羨ましいって思ってる時点最悪だし。」
「わかるようになってきたじゃん!あんたのこと、愛してくれる人なんていないよw」
「そうだよね‥。死んじゃう?」
「まあいいんじゃね?あんたが決めろよ。」
「ねえ、選択を私に委ねないで!あなたが決めてよ!」
「ねえ?返事して?」
「私はどうするのが正解なの?」
「ごめん。俺やっぱ楓のことが好きだ。こないだ告白したのは忘れてほしい。」
海斗は私に笑いかけた。
「え。」
突然のことに私は何も言えない。
「また、相談とか乗ってくれよ!楓のことなら何でも知ってるだろ?」
海斗は曇りのない晴天みたいな笑顔をこっちに向けた。
「うん‥いいよ」
こんな風に思ってもない言葉を言う自分が大嫌い。
ほんとは傷ついてるくせにね。
寂しいって言えないの?
私も好きって言えないの?
何でこんなに素直じゃないの?
ねえ、死にたい。
殺してくれたらいいのに。
安楽死っていう制度があったらいいのに。
私に生きる価値なんてない。
ああ。気持ち悪い。
吐きそうなくらい自分がきらい。
寂しいなら寂しいって、
悲しいなら悲しいって、
好きなら好きって、
ちゃんと言えたらいいのに。
何で言えないんだろう。
楓は顔に感情が全部出る。
疲れた時は疲れてる顔、
嬉しい時は嬉しい顔、
寂しい時は寂しい顔、
退屈な時は退屈な顔。
かわいすぎじゃん。
最強じゃん。
女の私でも惚れちゃいそう。
なんでなの。
何でそんなにかわいいの。
何でそんなに頑張るの。
何でそんなに頭いいの。
何でそんなに天使みたいなの。
一生勝てる気がしない。