プロローグ
「ままー!!いっしょにあちょぼー」
ああ、あの時か。
「今〇〇にミルクあげてるから無理よ。××。妹が遊んでって言ってるよ。遊んであげて」
ママの落ち着いた冷たい声が頭に響き渡る。
「やだよーー!!〇〇の方がかわいいもん!」
今よりはるかに幼いお姉ちゃんの声も反響する。
まま。おねえちゃん。こっちむいて。わたしをみて。
(〇〇なんかいいから。わたしだけをみて!!)
そんな過去の私の思いが胸にとける。
私は自己肯定感が低い。
そして承認欲求が強い。
家族には多分愛されている。
パパとママは仲が良いし、お姉ちゃんと弟のおかげでいつも笑いは絶えない。
なぜこんなふうに育ったのか私もよくわからない。
お母さんとお姉ちゃん、弟はとても自己肯定感が高い。
適度に自分のことをかわいいと思っている。
そう言う人は強い。
自分の武器をわかっている。理解している。
私は武器の使い方も知らずに近くにあるものを投げて攻撃しているだけだ。
好きって言って。
必要だって言って。
かわいいって言って。
特別だって言って。
ぎゅって抱きしめて、全部愛して?
じゃないと私は私の価値を感じられないから。
私の生きている意味がなくなってしまう。
あの子はメイクが得意。
あの子は肌が綺麗。
あの子は努力家。
あの子は運動神経がいい。
あの子はかわいい。
あの子は性格がいい。
あの子がいると明るくなる。
あの子は頭がいい。
あの子は素直だ。
あの子は大人っぽい。
じゃあ、私は?
私は、メイクが得意なわけでもない。
肌が綺麗なわけでもない。
努力家なわけでもない。
運動神経がいいわけでもない。
私には何もない。
私には愛される何かがない。
だから、お世辞でも好きって言われると安心する。
必要だって言われると心が落ち着く。
でも、そのうち貪欲になっていく。
もっと
もっと
もっと
もっと
もっと
もっと
愛して?
この言葉は鎖となって私を小さいころのまま、ここにずっと縛っている。