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8 逃亡計画




 それからは、日々逃亡計画と生存計画を練る日々だった。

 ギフト持ちだと確定したので最低限の王族としての生活は確保された。メイドや侍女も増えたけれど、他の妃達による嫌がらせもますます増えた。



 敵は多いが第一王子は無関心なので敵という事ではない。

 第一王女は……あの時に会った限りでは悪い人ではなさそうだ。王から王女のギフトも信頼されているようだし、たしか母親も他国から嫁いできたため国内貴族たちと距離があるし、取り入るには良いかもしれない。


 日々の教育が終わった午後にそっと、第一王女の住む離宮を覗いてみた。

 そこでメイドたちの話を盗み聞きしたところによると、第一王女の関心は今は美容にありそうだ。

 うん。お年頃だものね。


 ここでもマデリンが自分の美しさと第一王女の容姿に対して色々言っては去って行くらしく、少し自信を失っているのだという。


 いやいや、確かに『美』のギフトを持つマデリンは美しいけれど、他国の姫である母を持つ第一王女もかなり美人だけど?


 言われ過ぎて自信がなくなったのか? そうか、あれだけ自信満々に美のギフト持ちに言われると自信も無くなるのかもしれない。

 いや王女様は十七歳で、そろそろ結婚をするよう言われている時期だから、より気になるのかもしれない。



 そこで、私は正式に第一王女に面会を取り付けた。応接室に通され第一王女を待つ。お茶も出されて、ちゃんとした対応をするメイド達に少し驚く。

 入室してきた第一王女は少し疲れた様子だった。


「あの……先日はお世話になりました」

「王の命令だもの。むしろ、私生活なんて見られたくないだろうに悪かったわね」


 やばい。後宮で一番まともな返事を貰ったかもしれない。ちょっと感動してしまう。


「いえ、他の兄妹だとあることないこと言われる可能性の方が高くて、ありのままを言って頂けてありがたかったです」

「……あなた五歳よね?」


 あ、いけない。五歳らしくなかった。


「いっぱい、いじめられましたので」

 誤魔化せるかな?


「そう……苦労してるのね」

 あ、いけた。


「なので、お礼に来ました。私に出来るのはお花を出すことだけなのですが……」

「そんな事いいわよ」

「お風呂に薔薇を敷き詰めて入るだけで美容にとってもいいと聞いたのです。なので、薔薇を出すだけなのですが……いいですか?」


 あ、悩んでる。薔薇出すだけだもんね。いい気がするよね。よし、畳み掛けよう。


「えっと、調べたところ、薔薇のお風呂にはストレス解消や疲労回復、不眠や頭痛の緩和

便秘解消、美肌効果、抗老化作用、ホルモンバランス……ってなんていうのかな? とにかく! いい効果満載ですので、ぜひ試してみてください」


 勢いにのまれて「ええ」と頷いたのを了承ととり、お風呂に真っ赤な薔薇をたくさん浮かべてその日は帰宅した。


 そうして一週間が経った。今日も薔薇をお風呂に敷き詰めて帰ろうとしたところを、お付きの侍女に呼び止められ第一王女にお会いした。


「いつもありがとう。なんだか調子がいいのよ」

「それは良かったです」


 確かに王女はなんだかツヤツヤになっている。不眠にも効果あるし、美肌効果だけじゃなくてホルモンバランスにもいいからね! 良かったね。



「それで、今後は依頼として定期的に薔薇をお願いしたくてね。フローラは何かお礼としてして貰いたい事はあるの?」

「……では、花の準備をしに来た際に私と乳母の、二人分の食事を貰ってもいいですか?」

「どういう事?」


 私は定期的に嫌がらせで腐ったものや軽い毒を混入されること。死ぬことはなくても苦しいし、乳母の健康も心配なことを簡単に話した。


「なので、安全な食べ物が欲しいのです」


 第一王女は顔色を悪くして「毎日薔薇風呂を用意してもらう対価に毎日食べ物を用意しておく」と約束してくれた。


 安全な食べ物が確保できて一安心だ。



 次は逃亡先だ。この世界にも様々な国がある。

 一番大きくて力のある帝国。

 砂漠にあるオアシスの国。

 商業都市に、港のある西の公国。

 酪農と農業が盛んな東の大国。

 海に面した海洋国家。

 森の中にある独立国家。

 北にあるのは夜が長く続く白夜の国。

 そして、最も魔獣の住処に近く危険な北の大国。



 他にも様々な国があるが、大きくて我国に花嫁を求められる資金や軍事力、関係強化が必要ある国はこの辺りだと、教師達から教わった。

 嫁ぎ先がどこになっても良い様に、公用語とある程度の知識が必要だとの事だった。



 食事を確保できてからは、落ち着いて逃亡先の国を調べる事が出来る様になった。

 教師から大きく国について説明もあったが、詳細は図書館と()()()()()で調べている。



 どこの国なら私を大切にしてくれるかが問題なのだ。だって、絶対にしあわせになってやるんだから。



 帝国は大きな国過ぎて、我国よりも側妃の扱いが悪そう。

 そんなにギフトが必要もなさそうだし、逆に必要とされてこの国に何か恩恵があっても腹が立つから、帝国は無しだ。

 農業や酪農、森のある国で、私のギフトはそんなにありがたがられる能力ではなさそうだしな。



 などなどそんな事を考えながら、たくさんの土地柄や情勢をみて、いくつか候補を考えてみた。



 うん。一番、私の能力を欲しがってくれそうなのは、北大陸の二つの国と砂漠の国だろう。

 砂漠の国は、確かに私の力を望んでくれそうだが……。思いのほか資源が豊かだから、財力が豊富でこの国に利益をもたらし過ぎそうなので却下かな。


 白夜の国も同様に鉱山資源が豊富なのよね。後は夜が長い為に武器や防具とかの加工が盛んでお金持ちだからこちらも却下か。


 そうすると、やっぱり北の大国バルバドスかな。


 この国は魔獣の住処と言われる北の魔獣領が近くて、魔獣被害が多いせいで軍事力に全振りしている。

 土地も高地が多く草木も育ち難いし、寒い気候の影響もあって食料難が続いているという国だ。

 その為、他国の魔獣討伐など請負って資金や食料支援でなんとか国として成り立っているらしい。

 北の魔獣領が一番魔獣が発生するけれど、森や砂漠でもたくさん発生する時もあるし、我国の北側の山脈にも大量発生する時もある。そこに軍を率いて討伐に来てくれるらしい。

 食料支援を求めるあまりに、侮られる事が多い様だが……国民の食料の為に頑張ってくれている。バルバドス軍の先頭には王族がいて、私は正直、我国との違いに驚いた。


 国民の為に、王族が魔獣に向かうんだよ。

 死んじゃうかもしれないのに。


 でも、そんな立派な王族がいるその国が軽んじられ、侮られるのは…………悔しいじゃん。


 

 私の力がきっと役に立つと思う。



 私のしあわせの為に逃げたかったけれど、同じように生まれた所によってどうしようもない事で軽んじられる状況に、なんだか憤りを感じてしまう。


 私ならなんとか出来るから、なんとかしてあげたい。





 そう決意して日々ギフトを磨き、勉強しながら三年の月日が経った。










いつもがんばるフローラと私の応援ありがとうございます!がんばります!

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