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花咲姫のしあわせ〜国から棄てられる?こっちが棄ててやるんだから!〜  作者: 木村 巴


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6 儀式・後



 逃亡について考えを巡らせてしまったのを、ギフトが貰えないかもしれないと怯えていると捉えたマデリンは高笑いしながら定位置に戻っていった。


 いや、もちろんギフトないのは怖いけど……今は逃亡ルートが危険だなって考えてただけだよ。まあ、あの子は私を虐めてストレス発散したいだけだからいいや、放っておこう。



 さあ、私の人生がかかってる。生きていける事に特化したギフトだといいな、と思いながら祭壇へ進む。



「フローラ様、こちらへ」

「はい」



 神官長に促されるままに祭壇に進み、そして水晶にそっと手で触れる。

 すると、先程のマデリンの時よりもいっそう強く……目を開けていられない程の眩しい光が水晶から放たれた。


 うええええええええ!

 そこまでは、そんなすごい事なんて望んでないよ!

 どうしよう!!



 一瞬の静寂の後、神官たちが大慌てで神語を書き写しだした。


 そして、ふと気がつく。


 …………読める。


 神語はもちろん神語として見えているのだけれど、まるで母国語のように読める。




 私の可愛いこども……

 あなたにふさわしい力を贈りましょう

『かいか』

『最上位』

 この力で、しあわせになりなさい





「少々おまちくださいっ」

「過去の文献を持てっ……いや! とにかく全て写せるだけ写すのだ! 正確にだ!!」




 私には読めたけど……神官さん達は新しい神語の羅列で現場は大混乱だ。

 文献の前に待機していた人や壁際に待機していた人達までも集まって、書き写すのに必死だ。



「おやおや、フローラ様少しお待ち頂いてもよろしいですかの? 本当に素晴らしい。これまでにない特殊なギフトのようですな……私も初めて見ます。

 いやいやそれよりも、まずはギフトを賜れました事、おめでとうございます」


 神官長様は、好奇心が抑えられないように満面の笑みを浮かべているが……こんな神語見たことがないと、いつもは開いているのか開いていないのかわからない目が、かっぴらいちゃってる。

 少しの間私のとなりで成り行きを見ていたが、興味を抑えられなくなったようで「ちょっと失礼して……」と解読する神官様達に加わった。




 私、どうしよう……? 神語を読めちゃったと伝えても、困った事になりそうだし……え? 部屋に帰っていいかな?


 今後の事も、力の事もゆっくり考えたい。





「……ありえない!! こんなのありえないわ!」


 突然の大きな声に振り返ると、マデリンがプルプル震えながら鬼の形相で叫んでいた。


 こわっ! はぁ……この子はどんだけ私が嫌いなんだろう。



「あんたなんか、ギフト無しの無能がお似合いなのに!」

「マデリン様!!」

 神官の記録担当の中から一人の神官様が、怒りの表情で前に進み出る。


「女神様からのギフトを否定されるのですか? まだ詳細はわかりませんが、信託はくだりました。女神様の名のもとに第三王女フローラ様はギフト持ちでございます。我ら神官一同、お祝い申し上げます」


 その宣言の後、神官様たちはザッと一斉に神への祈りと同じ祈りの型で頭をさげた。




「な……なによ……」


 マデリンはじりじりと後退しながら「私は、認めないんだから!」と、走り去って行った。



 私は、その光景をただ見ていた。


「フローラ様、解読には少々……いえ、かなりの時間がかかってしまうと思いますので、後ほど報告に伺いますので、その時でよろしいでしょうか? ギフトに関してはご自身で使い方が解るものらしいので、試してみて頂いてもよろしいでしょうか?」



 私はこの場を離れられるのならば何でも良いとばかりに、急いで退出した。



 とにかく今は、一人で考えたかった。




 女神様はなんて?

 この力でしあわせに?



 …………逃げてもいいの?



 本当は、()()から逃げたい私になんて、ギフトはないものだと思っていた。


 だって、この国の王様の子孫にだけ文字通り与えられるギフト。

 更には、子孫であれば絶体貰える訳でもない力。


 現に異母兄である第三王子にはギフトはない。



 ギフトを貰える側に、何か共通点があるのか。何か理由があるのか。様々な研究が長年されているが、理由も何もかも不明らしい。


 女神様の気まぐれなのか、何か理由があるのか……全ては神のみぞ知るってヤツらしい。






 だから、本当は……本当はものすごく怖かった。


 ギフトが無くても、今後の人生がものすごく危険しかないのはわかっていた。

 後宮での虐めはもっと苛烈になるだろうし、外に逃げてもよほど運が良くなければ売られるか死ぬしかないと思っていた。


 だから、出来る事なら身を守る力が欲しかった。


 でもこの国を逃げ出したいと考えている私には、この国を愛する女神様から力を貰える訳なんてあると思えなかった。




 でもいいんだ。


 この力で、幸せになっていいんだって。



 女神様、お母様。見ていて、私は絶対この国を出て勝手に幸せになってみせるわ!







 気持ちを新たにギフトについて考えてみる。『かいか』普通に考えると開花かな? お花? えっと……?


 あ、うん。わかるかも。神官様も言っていたけど、なんとなく使い方がわかる。

 なんていうのかな? 『歩ける』のと同じ感じ。特に意識して歩いていないけど、歩けるっていうか……右足出して左足出すと歩けるって、そんなギャグあったっけ。でもそんな感じ。



 そっと窓から庭を見る。私の敷地内に基本的にほとんど人はいない。裏庭はお母様が好きだった花がいくつかと、手入れが行き届いていないせいか、自然の姿のままの草花が……まぁ、いわば荒れた裏庭だ。

 花もいくつか咲いているが、蕾も見える。


 蕾に向かって「咲け」と力を込めてみた。



 すると、ポポポンとその木の全ての蕾が咲いてしまった。なるほど、開花か。

 人差し指で離れた所にある草を指差してみれば、一本だけ咲かす事も出来た。


 そして目を閉じて、身体の中の力を確認してみる。うん。出来そう。




 私は前世に好きだった、かすみ草を部屋いっぱいに咲かせた所で――――意識を失った。






 そして、夢を見た。お母様がたくさんのかすみ草を抱えて、こっちを見て笑ってた。

 お母様が笑ってる。


 いやお母様、逃げるのに役にたつかなぁ?

 そもそも役に立つギフト? これ?


 ねえ、お母様がお花屋さんしたいって言ってたからお花のギフトになったのかな?


 そう考えるとなんだか笑えてくる。

 お母様! 私、原価無しでお花屋さん出来そうだよ。丸儲けだね。



 そう言ったらお母様は、ますます笑って、私に一つの林檎をくれた。


 お母様が笑ってるからいいか。

 お花、大好きだもんね。







お読みくださりありがとうございます(*´Д`*)

やっとギフトきました~!よかったね、フローラ( *´д)/(´д`、)

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― 新着の感想 ―
最後までお話を読んでもフローラの母親が林檎をくれた意味がわかりませんでした。 バルバトスは寒い地方だから林檎を育てるようにとの助言とか?
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