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花咲姫のしあわせ〜国から棄てられる?こっちが棄ててやるんだから!〜  作者: 木村 巴


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私の選んだ花




 アレックス様が戻った次の日は、ほとんど仕上がっている婚約披露用の衣装を試着したり、当日やそれまでのスケジュールを確認したりして過ごした。


 オリビア様は衣装合わせの段階からずっと付き添ってくれている。この国に相応しいドレスとキュプラ式のドレスとどちらにするかで、お義母様とオリビア様の間で何やら一悶着あったらしい。


 とりあえず、結婚式ではバルバドス国式で婚約式はキュプラ式のドレスを纏うのが良いのでは無いかと決まった。


 キュプラから持参したドレスもたくさんあったが、キュプラのドレスは基本的に淡い色のドレスが多いのだ。

 布も薄くて軽い物が好まれ、こちらのドレスとはだいぶ違う。前世でいう古代ローマのドレスに近い。


 そこで形はキュプラ式で、新たにアレックス様の色を合わせた赤い薄絹を基本にしたドレスを作成し婚約式で着用することにした。そして、黒の薄絹で作ったドレスを夜の披露宴で着る事に決まった。


 黒の薄絹のドレスは初めて着るので、似合うか心配だったけれど、大人っぽく見えてとても良かったと思う。



「キュプラのドレスは作成も着るのも簡単でいいな。夏にはバルバドスでも、流行るかもしれないな! 私と母も同じデザインで夜会に出ることにしたよ!」

「そうなのですか? 嬉しいです」

「ああ。昼はフローラが天使だと知らしめる為にフローラだけにして、夜会では私達の家族と知らしめるよ!!」


 ドレスはオリビア様が色々と一緒に考えてくれて、ちょうどキュプラとバルバドスの間の様なドレスに仕上がっていた。


 細かなレースや刺繍、小さな宝石が散りばめられた豪華なドレスに緊張してしまうけれど、とても素敵ではしゃいでしまった。



「作りが簡単だから、他の宝石や刺繍もたくさんつける余裕があったんだ! いい出来だわ!!」


 そう言ってオリビア様用のドレスも一緒に見て、二人してはしゃいだ。

 女子同士のおしゃれ話なんて初めてで、とっても楽しかった。





「あ〜明日からまたフローラがいない生活だなんて寂しい」


 私を抱き寄せ頬をスリスリして文句を言いながら、離さないオリビア様に呆れた顔でアレックス様が答える。


「披露宴前には戻る」

「一週間前には戻って来るんだよ! フローラの準備があるんだからね! 周辺国に、フローラは花を咲かせるだけって知らしめればいいんだから!」



 明日から国内のいくつかの街や場所を周り、花を咲かせて周る予定だ。


「ああ。フローラのギフトを知っている国も多いからな」



 そう。私達キュプラ王族のギフトは有料で開示されている。だから、私が花を咲かせるギフト持ちで最上位のギフトだと知っている国も多いのだ。


 今後の誘拐や力欲しさに狙われる事が減る為の対策として、私は普通のお花を咲かせる能力しか無いと思われたいのだ。


 そう。以前のキュプラ国内でのように。


 それが一番、無難でわかりやすい。だって、嘘を見抜けるギフトのお父様がいるんだもの。

 万が一今後のバルバドス国が豊作になって、その原因として私が怪しくても、お父様がキュプラ国内のギフトリストにそう記載しているのだから花を咲かせるだけで間違いないと思うだろう。



 だからお披露目と周遊という体で、披露宴やパレードの前に周辺に花を咲かせて歩こうという計画を立てていた。


 ああ、無駄に花を咲かせているんだな。綺麗だけど役に立たないな、と思ってくれたらいい。




 一月は小麦。

 一月はとうもろこし。この二つは極秘で行う。


 そして最後の一月はただ花を咲かせて、見せて周るというのが私の立てた計画だった。




 残念な事に花を咲かせて周るのは、少し短くなりそうだけれど、これは披露宴後でもいい。アレックス様の討伐や視察に合わせて各地を周って行く予定だ。


 今回は特に人口の多い街や、諜報員や情報屋の入り込んでいるのが多い街、そして農業や放牧が盛んな土地を厳選して周る事になっている。



 目の前では、オリビア様が披露宴の準備もあるのだから早く帰って来いと切々と訴えている。アレックス様がフローラの安全のために打てる手は打っておきたいと、反論して訴えるのが……終わりなく続いている。




「バルバドス国を見て周りながら、お花をたくさん咲かせて来ます! お土産も買って来ますね」


 そう言うと「そんな事はいいから早く帰って来てね」とさらに抱きしめてくれる。


「姉さん、フローラにいちいち抱きつくのは止めてくれ」

「いいじゃない! 姉妹になるんだから! ああ〜可愛い!! こんな可愛い妹はバルバドスにはフローラしかいないわ!」




 そんな風にオリビア様に可愛がられつつ、バルバドス城を出発した。


 竜で一緒に行くのはアレックス様とトラビス様のお二人だけ。

 それぞれ花を咲かす候補地には、侍女さん達が各地で待機してくれている。竜で移動すれば早いが、侍女さん達までは一緒に行けないので、計画的に宿泊先に待機して貰っている。



 最初の街はバルバドスの王都から一番近くて、大きな街だ。ここでは観光・視察目的だと街の代表には話してある。



 恭しく代表から歓迎の言葉と挨拶を交わす。


「今日は我が花嫁に、バルバドスの良い所を結婚前に見て欲しくてね」

「我が街を選んで頂き恐悦至極にございます」

「正式なものじゃないから楽にしてくれ」



 そうは言っても、警備や領主の態度で偉い人が来ると察していた住民がこちらの様子を窺っているのを感じる。


 これが王太子であるアレックス様だと気がついた住民は、顔色を悪くさせている。



 突然の王太子の視察は驚くし不敬が無いように慎重になるだろう。申し訳ない。



「殿下達は街を視察次第、すぐに次の場所に移動予定なのでここまでで結構です。移動場所も警護の問題上、極秘です」


 トラビス様から説明を受ける領主は、顔色が無いけど大丈夫かしら。アレックス様は完全に無視して、笑顔で私の手をひいた。



「さあ、フローラ。この街は良い布が見られるのでいくつか買おう。いくよ」

「はい」



 そうして、本当に大量の絹織物や布を購入して歩く。後ろでトラビス様が王城に届ける様に手配してついてくれる。



「本当にこんなに買わなくても……」


 こっそりアレックス様の耳元でそうというと、しょんぼりした声で「ダメだったか?」と言われるのでそれ以上強く言えなくなってしまう。


「そんなことよりも、ほら、皆が見てるよ。微笑んで?」


 そうして微笑んでから、街の中心だったと気がつく。

 そうか今か、と頷いた。



「アレックス様。たくさんの素敵なプレゼントをありがとう! 私からも皆様にしあわせのお裾分けです!」 




 そう言って、中心の広場でレンガの道沿いにたくさんのレンゲを咲かせて歩いたのだった。












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