囚われる
そう言って笑う女性は、キュプラ王宮でもよく見た……私という個人なんてどうでもいいという様な利己的な笑みを浮かべていた。
先程、足を痛めたというのは嘘なのか、驚くほどに俊敏な動きで私を縄で縛りあげ、口元に何かの魔法をかけた。それから、私の口は開く事も音を出す事も出来なくなってしまった。
なんとか逃げようともがいてみるが、縛られた縄は緩む事なくなおも食い込む様だった。
「ふふ、暴れたって無駄さぁ。拘束魔法がかかってるのさ。それに、私は隠蔽魔法は誰にも負けた事がないんだよぉ。見つかりっこないさね」
倒れ込んだ場所が、結界の境界だったのか。気をつけていたはずなのに……悔やんでも悔やみきれない。
「さぁ、居なくなった事に気づかれる前に、少しでも遠くにいかなきゃねぇ」
そう言って、こちらを向いて意地の悪い顔でニタリと笑う。その顔を見た瞬間、目の前が暗くなった。
ドスンと地面に落とされたのか、かなりの衝撃で目が覚める。
「はぁ……はぁ……クソッ。こんなはずじゃ……はぁっはぁ……」
先程の女性だろうか、焦ってブツブツと何か言っている。地面に打ち付けられたのか、左肩や背中が痛んだ。
痛みによって、急速に覚醒した。けれど、痛みにだけ気を取られている訳にはいかない。とにかく状況を把握しなくちゃ……。
まだ、ぼんやりしようとする意識の中で、ズキズキとした痛みが私を目覚めさせ続けてくれる。
「ああああああ! クソクソクソッ」
はぁはぁと、荒い呼吸を繰り返し大きな岩陰を背に女は向こう側を見ているようだ。
それにしても、眠気が一向に引かない。何かの魔法をかけられているのかもしれない。この痛みが救いに感じる。ここで、寝ちゃだめ。
私は縛られた状態のまま顔をあげ、懸命に声を出そうともがくが音は一切でない。
それに気がついた女は、恐ろしい顔でこちらを睨みつける。
「静かにおしっ! あんた! 殺されたいのかぃ?」
殺されたくはないが、このままでは拐われてしまい、結局どうなるのかわからない。
私は生きていたい。
でも、今までのように……死んだように生きたい訳じゃない!
アレックス様と一緒に生きると決めたのだ。
「……!!……!」
声にならない声をあげ、精一杯身体を前後に揺する。
「……このっ!」
ものすごい怒りの形相で女が右手を振り上げ、私の頬をパンッと打った。
「そこかっ!」
岩場の影からアレックス様が、砂を巻き上げながら駆け込んできた。
「…………!!(アレックス様!!)」
声にはならないが、大きな感情が動く。心の中では、衝撃、驚き、緊張、不安、安堵、ハッキリとしもないぐるぐると混ざった感情が一瞬でたくさん渦巻く。
ただアレックス様の姿を見た時の……そう、それは喜び。
私のたくさん渦巻く感情の中は、喜びが多く占めていた。
アレックス様に会えた、私を探して、助けようとこんなに汗をかいて、汚れて、息を切らして………………。
「フローラっ!」
「近寄るんじゃないよっ! あんた、この娘の命は…………あ゛っ……あ゛あ゛あ゛」
「黙れ」
アレックス様が、ゆっくりと近寄って私を抱きとめてくれたのを感じて────私は意識を手放した。
いつも遊びに来てくださりありがとうございます。今日は区切りの関係で短いです(´;ω;`)
続きは明日にでも書き上げます!がんばれフローラ!がんばれ私←




