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花咲姫のしあわせ〜国から棄てられる?こっちが棄ててやるんだから!〜  作者: 木村 巴


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花咲計画書と風邪





 そうやって温かくバルバドス国に迎えられてから、私は開架を駆使して密かに、そして黙々と計画書を作成していた。




 あれから三〜四日で実がなったオクラに、家族のみんなは驚きとともに興味深々だった。さらに、その試食会でのオクラ料理は大絶賛だった。

 なぜかドヤ顔で、オクラの収穫と料理を作成したのはトラビス様だった。もっと謎なのは、そのドヤ顔を見て悔しがるお兄様達だ。

 ここの人達は仲がとても良い。




 私のギフトの可能性について王族で話し合いがもたれ、あらゆる危険を考えてギフトについては大々的に公表はしないという事で決まった。そして、落ち着くまでは城からも出ないでいる。



 もちろん、アレックス様やオリビア様が城内を案内してくれたり、お義母様から王妃教育を受けたりもしているから暇を持て余す事なんてない。

 たまにお兄様や弟さん、王様やお祖父様ともお茶をする。


 それに王妃教育についてもキュプラ国内で他国の王族に嫁ぐ為に、かなり教育をされてきているので、ほとんど必要がないとわかったくらいだ。

 後は、結婚式後にバルバドス国の王家の秘密に触れる部分だが……それは結婚後になる。


 なので、皆さんからゆっくり休んでくれと言われるが……そんな訳にはいかない。






 私は空き時間や就寝前の時間に、まずは婚約披露までに行う計画を立てる事にした。




 まず一つ目は麦だ。普通の人は、麦の花ってあの穂先の白いヤツだって知っているのだろうか。

 そう。麦の花が咲いてる時は、ほとんど実がなってるような状態なのだ。そこから自家受粉しておよそ四十から四十五日程度で収穫出来る。


 私の知識や開架で知る中には、北海道やアメリカ等で育つ寒さに強い麦がある。


 そんな麦を咲かせて、食べる量が安定してきたら、種をとりこの国で栽培する方向に舵をとって行って貰いたい。


 その為の、農業の専門家だ。


 バルバドス国内で麦の生産に向いている土地や、今後生産していく領民の確保か必要だから。



 二つ目は、婚約披露のお披露目で領民に配る為のお祝いになるものだ。


 これには、とうもろこしがいいと思う。とうもろこしはかなり使い勝手がいいし、開花してから二十日から二十五日程で収穫出来るのもいい。だからこの三か月にどちらも実行できそうだ。


 そのまま食べてもいいし、蓄えにも出来て、油もとれて、粉にも出来て……食料危機にはいいと思うの。


 落ち着いたら、じゃがいもなんかもいいと思うけれど、まずはこの二種類を国内で育てたい。



 食料問題をなんとかする道筋がとれたら、他国への目眩ましも考えた方がいいかもしれない。


 そもそもキュプラ国と関わりがあった国ならば、私のギフトについて知っているだろうから、それを逆手にとって…………うん。


 これはおいおい、かしら。


 結婚式までに考えておこう。







 土地の活用方や最適な花や植物を調べたりと、集中しすぎたのかもしれない。




「お嬢様が朝寝坊だなんて、珍しいですね……あら、お嬢様……」


 朝、ポーラが起こしに来てくるまで起きられないなんて、記憶にない程に久しぶりだと考えているのに……身体が動かせない。


 何か言おうと思うのに、ケホッと空咳が出るだけで声も出ない。頭や顔は暑いのに、身体はやけに寒い。


 ポーラが手配してくれた王宮医がすぐに来てくれ、疲れからの風邪だと診断された。




「あらあら、お嬢様がお熱を出すのは、ずいぶん久しぶりですね。環境も変わってお疲れが出たのでしょう。皆さんには私からお伝えしておきますので、ゆっくり休んでくださいね」


 ポーラが額に置いたタオルを、冷たい物と替えてくれる。私は「うん」と頷いて医師から処方された薬を飲む。

 そうしてぼんやりしているうちに、ウトウトと意識が微睡んでいった。











 ひんやりとした感覚が気持ちがいい。頭がぼんやりする。



 歪んだ世界の向こうに人影が見える。



 誰? 神様?



 それとも……あ、先生かな?


 先生には、たくさん心配をかけちゃったからな。進路相談も先生が一緒に考えてくれたし、すごい感謝してる。

 あ〜懐かしいなぁ。熱を出して保健室で寝込む私を迎えに来れる親も居なくて、先生が車で送ってくれたよね……ん~? あれ? じゃ〜今はなんだろう?


 あー頭が働かない。


 でも先生、心配しないで。私は大丈夫。新しい所でだって、一人で頑張れる。私は、大丈夫だから。





 水の中で聞いている音みたいに、遠くから何か聞こえる。


「大丈夫だ、フローラ。よくがんばったな。一人じゃない。ずっと俺はここにいるよ」



 あ、アレックス様の声がする。


 そうだ! 先生、私ね、婚約したのよ。めちゃくちゃイケメンで優しい王子様と。私も姫だった。

 あはは。夢かなぁ……お姫様とか王子様とか、そりゃ夢か。


 でも、嬉しい夢だったな。


 お姫様とかに憧れなんてなかったけどな……夢って不思議。あ! 夢では先生より先に結婚しちゃうのよ。



 頭がぼんやりする……もう一人には慣れたけど、体調悪いと一人はやっぱり寂しい。


 先生が来てくれてよかった。


 お母様も、きっとさみしくなかったよね。……ん~~お母様? そうだ。お母様とお母さんと……夢でも、いなくならなくてもいいのに。



 でもいいんだ。素敵な婚約者がいたから。


 あんな素敵な人と結婚したら、しあわせよね……先生の素敵な彼氏も会ってみたいな。



  なんか……頭がガンガンする。








熱に浮かされた時のうわ言って、覚えていないですよね。うちの子達も熱が出ると、うにゃうにゃなんか言っていて、かわいそかわいい、かわいそうです。

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