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花咲姫のしあわせ〜国から棄てられる?こっちが棄ててやるんだから!〜  作者: 木村 巴


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アレックス Side2




 それからもフローラは、俺達を驚かす天才なんだと思う出来事ばかりだった。



 ギフトの詳しい情報を聞けば、さすが最上級のギフトだと言わざるを得ない力だったし、自分でもまだ把握出来ていない能力もあるらしい。


 さらに、一緒に食事をして嬉しいと涙する姿には、この子は今までどれほどに寂しい時間を過ごして来たのかと悔やまれる。

 これからはなるべく一緒に食事をしたい。

 まぁ俺がいなくても、姉さんが離さないだろう。気に入りすぎな気もするが……あの今にも手折れてしまいそうな感じがたまらなく可愛いのだろう。

 我が国では、子供すらガッシリしているからな。



 イェールの街を一緒に歩いたことも、忘れられない。

 変装を一緒にさせないといけない事を詫びれば、王族だから仕方ないと答えてくる。

 ……いや、その前に普通に俺が怖いだろうに。真剣なフローラはズレていて可愛いな。

 気を遣っている風でもなく、どう捉えているのかよくわからない。けれど、フローラが笑顔を俺に向けてくれるだけでもうそれで十分だ。



 ぎゅっと手を握る。『婚約者と二人で街を歩く』ましてや、手を握って歩くなんて俺の人生で想像だにしたことがない。


 街を歩いていれば、兵士に話しかけられた。この街のギルド兵だ。こんな事も、今までなかったのに。

 フローラがいることで話しかけやすいのだろうか?



 そんな考えも、フローラのデート発言で一気に吹き飛び、お互いに赤い顔でまた手を繋いで歩き出した。


 ……俺、大丈夫か? 手の汗や、呼吸すら気になる。

 なんだ、魔物と対峙した時よりも息が苦しい。




 二人で出店を見たり、食べ物を分け合ったり……終いには俺の口にフルーツを入れてくれたりするんだ。

 まだ子供のフローラは純粋にやってるのかもしれないが、本当のデートみたいだ。




 しかも、恋人や婚約記念のプレゼントを贈り合える事になって……正直、もう、感激で震えてしまう。


 一生俺には縁の無いものだと、羨ましく見ていた一つだからだ。



 しかも、フローラが初めて魔力を込めた魔石だ。初めての、そして婚約記念の……嬉しさが一周も二周もして、上手く頭が働かない。ただただ嬉しい。



 恋人や婚約記念はバルバドスの風習で男性側が贈るものだ。


 だから、どうしても自分から贈りたかった。フローラから半分贈ると言われてそれも嬉しいが、婚約者に贈るのはバルバドスの男の夢だ。

 俺から贈らせて欲しいとお願いすると受け入れてもらえて安堵した。


 すると店屋の親父が、二人の魔力を混ぜた魔石も作ればいいと勧めてくれる。


 おい親父、最高か。


 最近、イェールで流行っているらしい。

 もうさっそく、流行が本当か嘘かどうでもいい。……ここイェールでも交換する習慣があって、ここに来て本当によかったと思う。


 剣柄に飾って壊れたりしたら大変だから、大切にしまっておきたい。加工はせずに魔石のまま受け取った。



 腕に輝くブレスレットがフローラの存在も、この婚約も現実だと示してくれて目に入るたびに、ニヤけてしまう。


 宿に戻るとトラビスは驚愕のあまり、ブレスレットを見ては頬を抓ったり叩いたりしていた。気持ちはわかる。

 姉なんかは、感激のあまり泣いていた。




 その後に軍と乳母殿がイェールに合流し、乳母殿からフローラが俺を好意的に見てくれていると聞いたりしあわせな時間だった。



 ただ竜体がいくら強いとはいえ、ブラッディベアの毒は強い。だから専門家に一度はきちんと診せる必要がある。

 フローラには、バルバドスを少しでも好きになって欲しかったから、せめて最初だけでも数少ない美しい街を案内したかったが……最初から竜の谷に向かう事になった。


 あそこには竜の谷以外には、岩山や森しかない。


 フローラが竜の谷に興味を示してくれたのが救いだった。



 しかも、竜と契約していないのに言葉を交わしている……フローラ、どこまで俺達を驚かせるんだろう。いや、もう驚く事もないか。


 フローラは本当に『女神がバルバドスに遣わした天使かもしれない』という、トラビスの訴えが正しい様な気がしてきた。


 いや、そうだろう。(確信)




 しかし、驚きは続く。


 竜の谷で見せたフローラの真の力は、とんでもないものだった。



 開花からたった数日で実のなる花を咲かせてみたり、他の針葉樹に林檎の花を咲かせたりと、とても普通では考えられない事をやってのける。


 しかも本人は、のほほんと『試してみよう〜』くらいの気持ちの様だった。



 これなら我が国の食料問題も…………一瞬そんな考えが過ぎるが、フローラにそんな責任を持たせるなんて、俺個人としてはしたくない。王族としての判断はまた別だが……フローラがいる間やその後のこと、考える事がありすぎる。ただ、この力はどの国でも喉から手が出る程に、何をしてでも欲しがる力だろう。


 本来なら次期国王は俺になるが、俺に後継者は出来ないだろうと兄弟全員が後継者教育を受けている。次代の教育のためだ。

 だから、姉さんも同じ考えに至ったのだろう。今まで以上にフローラの身辺警護に力を入れていこうと、二人の中で決定した。



 のは、いいが……くっつきすぎじゃないか? 姉さん警護の意味……いや、わかっていて、楽しくなってやめられないのだろう。あんな可愛い存在はいないしな。



 ただ、早めにフローラの力の事や今後の事は決めていかなければならないと判断し、国の重要機密通信で詳細を国王陛下に送っておいた。



 そんな事は知らないフローラは楽しそうに料理をし、屋台で売上を出して楽しんでいる。


 もちろん、自分たちもとても楽しかった。


 野菜を収穫することも、一緒に料理することも(まるで新婚のようじゃないか)ましてや、屋台で売ることも……どれもこれも体験したことのない、楽しい時間だった。



 この時間を、そしてフローラを俺が守りたいと……強く強く願った。



 それがフローラも俺を望んでくれて……叶うなんて、本当に奇跡だ。








どうも、こういった不憫スパダリが好きな様です(●´ω`●)アレックス……かわいそカッコいい……

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― 新着の感想 ―
よく、度を越したお人好しで自分も守れない、溺愛する回りのお膳立てでざまあする不憫な無自覚天才というよくパターンがありますね。 ここの主人公は、何も持ってない所から自分の持ってるものをどう活かすか、長期…
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