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花咲姫のしあわせ〜国から棄てられる?こっちが棄ててやるんだから!〜  作者: 木村 巴


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21 ギフトと魔力とプレゼント





 マルシェを再び見ている時に、夕方には後軍とともに乳母と荷物が到着するとの連絡が入った。


 キュプラ国は半島なので大きな国ではないが、それでも首都からこのイェール(最北端)の街までは乗り合い馬車では三、四日はかかると言われている。


 それを馬車で二日、竜だと半日で着くってすごい事なんじゃ……と今更ながら気がつく。



 後軍も馬と呼んでいいのか分からない位の大きい馬や、あの大きな蜥蜴の様な動物(爬虫類?)に乗っていて確かに足が早そうだった。


 バルバドス国の軍事力がすごいのだと、これだけでもよくわかる。





 アレックス様は少し残念そうにしながら「では、向こう側を見たら宿に戻ろうか」という事になった。


 食べ物のコーナーの先は洋服や装飾品が多く並ぶお店が出ている。アレックス様が一つのお店の前でぴたりと止まって真剣に机の上を眺め出した。



「わぁ〜綺麗ですね。魔法石や魔石までありますね! すごい」


 机の上に並べられた石は、加工してある魔法石と原石の魔石がたくさん並べられてた。大きい物から小さな物、品質もとても良い物からかなり悪い物までかなりの品揃えだった。


「おお〜お嬢さんわかるかね?」

「少しだけです」

「そうか、そうか。お二人さんは恋人同士かい? プレゼントにどうかな? これは私の故郷から仕入れた品物でね。お付合いや結婚の記念品として交換する為の魔石だよ」

「お付合いや結婚の?」


 聞いたことがなかったけど……そうなの?



「北のバルバドスの習慣らしいんだけど、この辺りでもやるんだよ。お互いの瞳の色だったりお互いの魔力だったりを入れて、恋人記念に贈り合うのさ。魔力持ちならお互いの魔力を入れるから魔石を、魔力なしなら魔力がすでに込められた魔法石をおすすめしてるよ」


「これがいいな……フローラ、ピアスかペンダントかブレスレットだと、どれが好みだろうか」

「ええと…………ブレスレットでしょうか」



 わかったと頷くと、一番純度の高い魔石を二つも迷うことなく購入していた。


「おやじさん、今魔力を込めたらブレスレットに加工はどれくらいで出来る?」

「そうさな、この辺りの高級な本体も買ってくれたら、超特急で加工しますぜ。私は錬金術師ですからね、今すぐでさ」

「そうか、ならすぐ頼む。

 フローラはどのデザインが好みだ?」


 目の前に並べられたのは、華奢な金かプラチナで出来た細かな飾りの施されたブレスレットだった。

 繊細な作りでどれも本当に素敵だ。私は一番可愛いと思ったゴールドのチェーンを指さす。


「これでしょうか」

「では、チェーンはこれで……魔力を込めよう」

「……私も、アレックス様のものに込めていいですか?」

「いいのか? 嬉しいな」



 手渡された魔石は、かなり純度が高く魔力を込めても綺麗に魔力が入りそうだ。



 私にも驚くほど多くはないが魔力がある。キュプラ王族間では魔力はさほど重要視されないけれど、やはり無いよりはあった方が婿・嫁入りの際に有利となるため調べられていた。

 キュプラ国内でも高位貴族には魔力が多い者が多いため、貴族に対しても魔力の有無は重要だった。ただ私は使う事がほとんどないので、全くいかせていないけれど。


 後宮でも、他の宮では魔導ランプを使用していたり魔導具も使う様だったが、高級品なので私の宮にはなかった。

 近くで見たことがある魔導ランプは、大広間にある豪奢なシャンデリアくらいじゃないだろうか。後はロウソクか普通のオイルランプを使用していた。そのため、魔力の使い方は本で読んだだけで実践は初めてだったのだと、ここで急に思い出した。




「どうした?」



 まごまごしていると心配そうにこちらに目を向けてくれる。


「えと、そういえば魔力を込めるのは初めてでした……一度他の物で練習してからの方がいいかもしれなくて……失敗するとかあったりする?」

「初めて……」



 うっかり、私の魔力も入れたいとやる気を出してしまった。やった事なかったのに……私のバカ。



「……ゔゔん! いや、コツさえ掴めば全然大丈夫だ!! いや、それでいこう!! 私が一緒に手伝おう」

「わぁ〜! ありがとうございます!」


 嬉しい! まずはアレックス様が魔力を流して入れるのを見せて貰う事にした。魔力は効果付加を付ける為に五割から三割程度入れるに留め、後ほど別の効果を入れ込む事が多いのだそうだ。

 因みに、魔法石は魔力が満ちていて宝石としての価値になっているものだという。魔法石になってしまった魔石から魔力を抜けばまた使えるらしいんだけど、知らない他人の魔力は死にかけとかでない限り吸収したくない……。なので、浄化したての魔石がいい。



 アレックス様は手のひらに魔石を乗せ、私に分かりやすい様にふんわりと魔力を身体に纏わせる。そして、逆の指先を魔石にトンと乗せてから魔力を流しこんだ。



 なんて綺麗なんだろう。



「こんな感じだ」


 魔石はアレックス様の瞳みたいな綺麗で鮮やかな紅に輝いていた。高純度の魔石は輝きが違うのね。


「すごい! 綺麗ですね! 私もやってみます!!」

「……ああ」



 アレックス様と同じ様に、左の手のひらに魔石を乗せてから全身に魔力を纏わせる。右の人差し指で手のひらの魔石に、そっと魔力を流しこむ。


 ふおお!……魔力が吸われる感覚がわかって、なんだか面白い。



「フローラ、そのくらいで大丈夫」


 楽しくなってきて、もっと入れたかったのに残念なくらいだ。でも、綺麗に出来た!

 私の瞳と同じ薄紫色の魔石が出来上がっていた。これって、普通に入れても瞳の色になるのかな? 上手く出来たって事なのかな?

 それともさっき見たアレックス様の魔力が瞳の色だったから、無意識に真似したのだろうか?


 バルバドスの結婚はお互いの瞳の色を贈り合うのが一般的なのよね? 婚約者だから、ちゃんとお互いの瞳の色が入ったいいものが作れてよかった!



「上手く瞳の色になりました! よかった! あ! 私の分は私が買ってもいいですか? 私からアレックス様に贈りたいです」

「ぅ゙っ……いや、婚約者として俺に贈らせて欲しい。フローラの初めて作った魔石を貰えるだけで、とても嬉しい」


 アレックス様は、二つの魔石を見つめながら嬉しそうに微笑んでいる。本当は私から贈りたかったけれど……アレックス様にお願いする事にした。



「いや〜おめでとうございます! では早速ブレスレットに加工しますね。ところでお嬢さん、お嬢さんも贈りたいというのならば……こんなのもオススメです!」



 お店の人に魔石を渡すとすぐに、錬金の準備に取り掛かってくれた。そして、また高純度の魔石を取り出して二人の魔力を混ぜるのがオススメだと言う。


「これに二人の魔力を半分ずつ入れると、二人だけの魔石が作れるんでさ。最近イェールで流行っているんですよ。どうです? お兄ちゃんの剣の柄頭に加工するのはどうだい?」


 くぅ! おじさんの商売上手め! 私達の二つの魔石が出来上がってから言うんだから! でも買う!



「ください!」



 そう言って二人で一つの魔石に魔力を流すと、赤紫色のルベライトみたいな綺麗な魔石が出来上がった。

 すごい! 思ったよりも素敵!


「綺麗な魔石になりましたね! ね! アレックス様!!」

「……ああ。こんな……本当に嬉しいよ」



 それは剣の柄頭に加工せず、そのままアレックス様にプレゼントする事になった。アレックス様はじっとその魔石を見つめ、ブレスレットが出来上がるまで嬉しそうに握りしめていた。



「さあさ、出来上がりましたよ。お互いに着けていかれますかい?」


 アレックス様を見ると、嬉しそうに頷いてくれたので左腕を出す。華奢な金細工に紅の魔石がついたブレスレットをそっと着けてくれる。その手は少し震えてた。


 私もアレックス様の腕にブレスレットを着ける。アレックス様のは……金細工も魔石も完全に私の色で、なんだか少し恥ずかしい。



 でも、私の色を着けて貰える事がとても嬉しかった。











初めて♡に興奮してしまう、アレックス(と私)うへへ(*´ω`*)


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― 新着の感想 ―
てぇてぇ…あー婚約者同士の交流だ、 心温まる(*'ω'*)
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