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2 女神に愛されしもの

2話頑張れました (〃´ω`〃)




 私の生まれたこのキュプラ国は、女神の寵愛を受けている。



 これはこの世界の全ての生命が知っている、この世界の常識だった。



 世界の中心に在るかのように存在する、温暖な気候で島国の様に海に囲まれている半島だ。

 唯一接する北の大陸から、一足こちらに踏み込むだけで気候も何もかも違う恵まれた国だ。


 北部以外の周囲は全て海に面しており、他国からの侵入は海を介さないと難しい。

 そして唯一繋がっている北の大陸との間には、魔物も住まう厳しい環境の空高くそびえる山々があった。

 北の大陸は、魔物領と面しており多くの魔物が他の地域よりも多く出没する厳しい大陸として有名な場所だ。そのため、魔物とも戦える軍事力を誇るその国の存在によって北を経由して我国に侵入する事はほぼ不可能であった。


 一年を通して温暖な気候は豊かな実りと安定した畜産をもたらし、周囲の海からは豊富な海の幸をもたらす。


 そんな土地柄も女神に愛されていると呼ばれる所以だが、それだけではない。



 我国の古い記録によれば、国を起こした始祖王が女神と愛を育み建国したと伝えられている。


 そのため、この国の王族は女神の血を引いているらしい。それによってこの国で生まれ、この国で五歳を迎えた王族に『ギフト』が女神から与えられる。



 もう千年以上前の話なので、作り話なのか本当なのか……真実は誰にも分からない。


 けれどその(ギフト)は、自分の血を分けた子孫を守るために女神様が与え続けてくれているとしか説明がつかない。


 だって他の国に『魔法』はあっても『ギフト』はないのだから。その力は全く別物で本当に女神様からの奇跡としか言い様がないのだ。




 その証拠の一つに、キュプラ王族は他国に王族として嫁いでも本人の『ギフト』は消えずに残っている。

 しかしキュプラ王族の正統な血筋であっても他国で生まれた子供には『ギフト』は与えられない。

 更に五歳までこの国から出ていたり、キュプラ王族と認められなかったりしても『ギフト』は与えられないのだ。


 あくまで、この国で生まれたこの国の王族にだけ与えられている。


 女神様はこのキュプラ国の王族……つまり自分の愛した王の子孫と認めた者にだけに『ギフト』をくださるのだ。




 だから、このキュプラ国は女神に愛されていると世界中で言われている。



 過去には、こんな力を持つ王族は味方なら良いが敵対すると危険な可能性があると考えた一部は、撃滅もしくは侵略して自分のものとしようとした国もあったという。


 しかし、結果は悲惨なものだった。



 遠い海の向こうにある国に攻め入るのは、食料や労力などあらゆる面でも消耗が激しく、戦艦などを開発維持といった資金も技術も予想以上に必要になる。

 たとえそれが魔力に頼った魔導部隊だったとしてもだ。


 そのうえ、時に強大な『ギフト』持ちの王族に、いとも簡単に返り討ちにされている。


 現在ならば、水のギフトを持つ第一王子に、船ごと海に沈められて一瞬で終わるだろう。

 空から攻めるには魔力が我国に到着する頃にはかなり減ってしまって戦いにすらならない。

 北に連なる山々を越えてからこちらに攻め入るのは、その前に魔獣に殺られてしまう様な自殺行為と言っていい。そして運良く我国に入れたとしても、海に囲まれた我国で第一王子に勝てるとは思えない。


 攻め入った国のその後は、想像するまでもない。



 ただし、この国の王族はある種傲慢で、わざわざ遠い他国をほしいとも思っていない。欲しいものは他国が我国に貢げばいいとすら考えている。

 この国内で満ちたりているのだから、表面上は定期的に我国に贈物をさせて良い関係を築く。裏では多額のお金を貢がせてギフト持ちを優先的に派遣したり嫁がせている。


 こちらからこの国を出たり他国を攻めたりする事はないので、世界中の国は様々なパワーバランスをみながら関係を築いている。






 私はこの愛された楽園の片隅で、静かに息を殺して生きてきた。


 決して目立たぬよう、他の王族となるべく顔を合わせないように。

 母が死んでから、離宮には私の商品としての価値(嫁として売るため)を落とさない様に……生きていくには困ることはなかった。


 私はただ静かに、チャンスを狙って生きてきたのだ。


 でもいつも、ふとした瞬間に考えてしまう。

 私にギフトがなければ……

 私の記憶がもっと早くにもどれば……

 いや、逆に前世の記憶など戻らなければ……などと考えても仕方ない事ばかりが浮かんでは消えていく。



 けれど、考えないといけなかったこの状況はむしろ良かった。私は前世の知識をいかして、何処かで上手く生きていけるかもしれない。


 母の最後の言葉を、私はいつまでも忘れられずにいた。母は最後まで、この城から出て生きていきたいと、しあわせになりたいと言っていた。


 ……私に、ここを出てしあわせに生きてと。そう、言っていた。



 最後の時のあの時……母の言葉は決して聞き間違えなんかじゃない。










遊びに来てくださってありがとうございます!

新しい連載も楽しんで頂けると嬉しいです。


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