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神鳥、放浪の果てにⅢ

 リーリーは、思い出すことに関して不得手だ。


 アリアスもそれは理解しているが、管理者から【最強】と評されたリーリーの特異点としての能力は他の特異点と比べて逸脱している。


 リーリーの特異点としての能力は【移動】だ。


 あらゆる場所に到達することができる。


 当の本人、いや本鳥か、彼は様々な出来事を何故か忘れていた。


 アリアスの特異【再生】はその点ではリーリーの忘れた過去を呼び戻すことに一役買っている。


 リーリーは、彼が気づかぬうちに自らの膨大な記憶を消去しているのだろう。


 特異点として個体の限界を越えている。


 本来、特異点とは己が持つ特異能力に偏るものだ。


 それは能力が絶対的な力を持っているからでもある。


 それなのにリーリーは、何故か剣術や魔法、言語に長けている。


 乗り手であるアリアスに対しての紳士的振る舞いもそうだ、鳥らしくはない。


 驚くべきはリーリーのスキルである“イグドラシルフィールド”だ。


 あらゆる生命を元に戻してしまう復元能力はリーリーの特異能力である【移動】によって到達してしまう。


 アリアスの【再生】とは違って、事象そのものを巻き戻してしまうものだ。


 改めてとても不思議な生き物だ、とリーリー自身も困惑する程にそれは異常だ。


「ボクの知識は大体がシックの影響」


 と、そうアリアスにリーリーは語る。


「騎士の鳥として産まれて育てられて、騎士と共に生きて、世界の異変に巻き込まれて乗り手を失って、そこで得た力が特異点としての【移動】」


 聞けばおかしな話だ。明確な不具合、異質な現象、時空の乱れ、何もかもがその場所で起きている。


 シックという男は、それらを全てリーリーと共に観測したのだという。


 自身とは異なる分身を使って、というわけのわからない話だ。


「シックは分身を使ってボクと旅をしていたんだけど、本物のシックは別の世界にいて、それで」


「ちょっと待って、私が【再生】しようとした人は?」


「おそらく分身の方かも?本体は全く異なる世界に居るから」


「むむむ……」


 アリアスは全くわからなくなった。


 本体は別の世界にいて、それでもなおリーリーはシックという男に会いたいと願う。


「本体のシックは?」


「もう死んでると思う」


「確認したの?」


「か、確認した、と思う」


 リーリーは思い出そうとしている。


 思い出そうとリーリーは自身の記憶を呼び起こすが、何故かそれがいつの話で、どこなのか皆目見当もつかない。


「あれ?」


 アリアスがリーリーの横顔を覗く。


 リーリーは自分が今どんな顔をしていて、何故冷や汗を感じているのか自身でも理解できなかった。


 アリアスはそんなリーリーを見つめて言う。


「リーリー、君って忘れっぽいの?」


 それとも、とアリアスは言葉を選ぶように間を置き。


「覚えてるのね?」


 リーリーはそのアリアスの言葉に心臓を鷲掴みにされたような感覚を覚える。


 いつかのリックが、リーリーに対して問い詰めた時のような感覚だ。


「あ」


 リーリーは思い出したように心の中で何かが解けた。


「そういえば」


 そう言いかけてリーリーは固まる。


 固まったリーリーを、アリアスが見つめて無垢な瞳をこちらに向け続ける。


「シックは」



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