シンデレラvsマッチ売りの少女
「さあ、今年もこの季節がやって参りました!
夢も希望も浪漫も無い!世はまさにブラッククリスマス!
ブラッククリスマス2023、ここに開催を宣言致します!!
実況はこの私、矢澤と、解説は谷沢でお送りします」
「名前が紛らわしいですね」
「さて、第一戦は本大会における、
最注目の対戦カードと言えるのではないでしょうか
ご存知、元祖成り上がりクイーンのシンデレラに対するは
バッドエンド請負人、その名はマッチ売りの少女!!
どちらも不幸な生い立ちの主人公、
不幸と不幸のぶつかり合い!
この勝負、より不幸力の高い方が勝つと言っても過言ではないでしょう!!」
「知らない単位ですね」
*
「さあ、ゴングが鳴り、不幸対決の火蓋は切られたァ!!
お互いまずは様子見!慎重な立ち上がり!
と思っていたら、おおっと!?
シンデレラから仕掛けたァ!!
ガラスの靴による凶器攻撃ィ!!
マッチ売りの少女、すかさず頭を守るゥ!!」
「これは反則ですよ
レフェリーは何を見ているんですかね」
「しかし所詮はガラス!
割れる!ものの数回で粉々に砕け散ったァ!!
その破片が裸足のシンデレラに突き刺さるゥ!!
自業自得!自分で招いた不幸に打ちのめされるゥ!!」
「一回、止めた方がいいんじゃないですかね」
「そしてマッチ売りの少女が動いたァ!!
なにやら懐から何かを取り出し……?
おおっと!マッチだァ!!売り物のマッチを取り出したァ!!」
「止めた方がいいんじゃないですかね」
「そしてマッチを擦り……火が点いたァ!!
そのマッチをどうするのか!?
……んんっ!?
これは一体、何をしているのでしょうか?
マッチ売りの少女、それをシンデレラに見せつけているだけ……?」
「おそらく、幻覚を見せているのでしょうね
知らないおばあちゃんの幻覚を見せられて、
シンデレラは困惑しているのだと思います」
*
「おおっと!
マッチの火が消えてシンデレラの目が覚めたァ!!
そして当然、反撃に出るゥ!!
知らないおばあちゃんの幻覚を見せられて、キレているゥ!!
家族の温もり!それはシンデレラが求めてやまないもの!
意地悪な継母や姉、そしてヘタレの父親から与えられなかったもの!
しかしマッチ売りの少女は、おばあちゃんの温もりを知っていたァ!!
クイーンのプライドが、それを許さないィ!!」
「確認したいんですが、
このシンデレラはハッピーエンドを迎えた後の人物ですよね?」
「投げる投げる!
シンデレラ、手当たり次第にカボチャを投げつけるゥ!!
マッチ売りの少女、全身カボチャまみれだァ!!」
「レフェリーがいる意味はあるんですかね」
「マッチ売りの少女、防戦一方!何もできないィ!!
対するシンデレラはネズミを取り出し……相手に噛みつかせたァ!!
なんたる卑怯な攻撃!感染症を患うリスクが危ぶまれるゥ!!」
「メルヘンの欠片もありませんね」
*
「ん……?
なんだか焦げ臭いですね
これは…………リングが燃えているゥ!?
さきほどマッチ売りの少女の放った火が再燃焼したというのかァ!?
これは一体どういうことだ!?谷沢さん、解説をお願いします!」
「空気が乾燥する季節ですからね
火の始末が不充分だったのでしょう」
「おおっと!なんてことだァ!!
シンデレラ、逃げ場が無い!リングから降りられないィ!!
そしてレフェリーも降りられないィ!!
対するマッチ売りの少女はとっくに脱出していたァ!!
この展開を読んで、リングを降りていたァ!!」
「いえ、ドクターの判断を仰いでいただけですね」
「燃える燃える!火の手が上がるゥ!!
会場はかつてない熱気に包まれているゥ!!
シンデレラが、灰になったアアアァァッ!!!」
「不幸な事故が起きてしまいましたね」
火の用心!