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魔獣VS平和ボケ日本人。


 魔道具にはメリットがあればデメリットもある。

 魔獣を寄せ付けない街灯魔道具には、危険ではないモノには影響がないと言うデメリットがある。


  "あっちからは入れないけど、こっちからは入れるから注意してね"



 あっちは森の奥から、こっちは町の方から。

 そう、デメリットは『こっち』から危険区域に入れてしまうことだ。


 さて、私はこっち側の人間だ。しかし、目の前のこの大きい猪みたいなのはニイナの言うあっち側だろう。


 ぐるるる、と喉の奥から発しているであろう威嚇が腹の音じゃない事を祈る。

 大きな口からは鋭い牙が出ており、その隙間からはボタボタと涎らしき液体。


 さっきの生臭くてベタベタした液体は涎だったのか。


 大きな鼻を近付けて匂いを確認する魔獣。

 大きな体は毛むくじゃらで、真っ黒一色に真っ赤な目玉が更に恐怖を煽る。


 こんな大きな獣、某有名映画の巨大猪みたいじゃないか。

 

 私は異世界を甘く見ていたのかもしれない。

 この半年、平和に暮らしていた。周りはみんな優しくて、温かい。森に魔獣がいるのは知っていたが、魔獣除けの魔石さえあれば大丈夫だと平和ボケしていた。

 


 にへらっ。あはははは〜。


 日本人平和ボケ奥義『笑って誤魔化しちゃおう。』

 てへっ、申し訳ないです。いちごに集中するあまり、魔道具の先のあちら側に来てしまったみたい。お邪魔しましたぁ。

 尻餅をついた状態でゆっくりと一歩後ずさる。

 ギロリと睨みつける赤い目は獲物を捉えたまま動かない。

 

 "視線を逸らしたら襲われる"とテレビで見たことある。

 テレビでは熊に遭遇したら目を逸らさずゆっくり後退すると言っていた。熊じゃなくて猪だけど…。

 

 ゆっくりと、ゆっくりと、あと少し。

 少しずつ後退する。


 よかった、街灯まで来れたぁ。


 指先が街灯の光に侵入した時、フッと気が緩んでしまい魔獣から目を逸らしてしまう。その瞬間、魔獣は天に向かい人を一飲みできるであろう大きな口を開き吼えた。


 ぎゃわぁぁぁぁあぁぁーーっ


 すぐ後ろの青い光の中へ飛び込もうと言う選択はなくなった。今の咆哮に完全に体が萎縮していまい、腰が抜け、恐怖で体が震えて足に力が全く入らない。


 大きな体が地面を蹴り、大きな口が飛びついてくる。

 


 あぁ、これは無理だ…。


 私は覚悟を決め、ゆっくりと目を閉じた。


 


 「ーーーっ!!」


 死を覚悟した瞬間、獣の息が顔にかかると同時に感じた首への圧迫。そして、その後の全身の痛み。


 「ごほっ、げ、ほっ!いっ、つぅぅ…っ。」


 身体中に受けた痛みに咽せながら体を抱きしめる。


 カキーンっと響く音に目を開けると、掠れる視界の中、巨大な猪に剣を向ける人物。

 俊敏に動く人物は猪の人間以上に太い脚の腱を剣で切りつけると、猪はドッシーンっと体を横にして倒れる。

 切られていない脚をバタバタと動かし、猪は抵抗する。

 巨大な体の後ろに回り込み、首に剣を刺して猪は漸く動かなくなった。

 

 剣を抜き、剣についた血を振り落としながらこちらに向かう人物。

 返り血を浴びた人物は真っ赤に染まっていて誰だかわからない。掠れる視界で分かったことは、猪が絶命し私は助かったということだけ。



「……だれ?」


 ーーそこで私の意識はプツリと切れた。


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