モノジチは卑怯です。
「くるみーんっと、おっでかけぇー。うれしいなぁっ!」
うさぎのリュックを背負い、くるくると回るニイナとは対照的にハラハラと彼女が転ばないか心配で気を揉む私。
そして、その二人の一歩後ろを優雅に歩く一人の男性。
「ルドさん、すみません。荷物を持たせてしまって…。」
「いや、突然押しかけて迷惑をかけたのだからこれぐらい事はさせてくれ。」
貴族オーラを纏い、町中の老若男女の視線を全て奪うルドにピクニックセットとお弁当を持たせてしまっている。
ボディーガードを断ったのに荷物を人質に取られてしまったと少し腹を立てていることもあり、どうにかしてでも荷物を返して貰いお帰り願いたい。
それに、この刺すような視線はどうしたものか…。
日本人が韓国人に憧れるのと一緒で、キラキラオーラに鍛えられた体つき、ルドはアイドルのような存在なのだろう。
まぁ、目の保養にはちょうど良い。そう、目の保養には。
「あのぉ、お仕事忙しいんでは…?」
「休暇だから気にしなくていい。」
「……あっ、はい。」
またまた失敗した。
そこの綺麗な格好をした二人組のお姉さん、すみません。指差してコソコソ話さないで頂けますか?
わかってるんです。不釣り合いなことくらい。
可愛い小動物系のニイナと、上品で野生的なルドの間に挟まった私は、居心地悪く、背中を丸め視線を落として歩く。
「くるみーんっ!もうすぐ西門につくよっ!西門を抜けてすぐの湖でピクニックしよう。」
「う、うんっ。」
勢いよく左腕に絡みついてきたニイナの明るさに救われる。
そうだ、今日はお店を休んでまでピクニックに行くんだからいつまでも気にしてないで楽しもう。
帰って頂く事は不可能だと割り切り、開き直ってしまえば後ろの存在は余り気にならなくなる。
西門は南門とは違い、人通りが少ない。
隣の町や獣狩りをする森には南門が近く、西門には綺麗な湖しかないためピクニックに行くカップルや親子連れしか通らないんだとか。
「ニイナさん、こんにちは。」
初めて見る顔の…。ん?
「くるみさんも、今日はお店お休みですか?」
「あ、イアンさん。イアンさんって騎士団の方だったのですか?」
キースやルドが着るような装飾のついている団服ではなく、簡単な皮の鎧を身につけ帯刀しているお店のお客様。
黄土色の髪と瞳の彼は、キース達とは違い小柄で無邪気に笑う少年だ。
「そんなっ、騎士団だなんて。夢のまた夢の話です。僕は見ての通り弱いんです…。なので、一番争いがなく魔獣や獣の侵入もない西門の衛兵をしています。それに、僕平民ですし。」
聞いては行けないことを聞いてしまったみたいだ。
俯いてしまったイアンに、どうしたものかと思案する。
「あの、イアンさん、今度ふわふわパンケーキの新作を作ろうかと思っていて、是非、イアンさんのアイデアを聞きたいです。お店に来て試食もお願いしたいのですが…。」
「えっ!いいのですかっ!?」
「もちろんです!是非、この町のお勧めなどを教えてください。」
「うわぁ、楽しみだなっ!」
では、詳しくは後ほど。と頭を下げて、イアンの横を通り過ぎる。
イアンの興奮して真っ赤に染まった頬に、可愛いなぁっと笑みが漏れる。
「えぇ!?貴方様はアキ……。」
ん?
後ろを振り返ると真っ赤だった頬が青白くなり、体を震わせるイアンに首を傾げる。
そんなイアンの前をルドは目線を送り「ご苦労。」と声をかけて通り過ぎた。
あの叫びはなんだったのだろうと首を傾げ、答えは見つかりそうもないので、湖に向かって歩き出した。
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