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ピクニックに出掛けよう。


 「……くるみーん、まーだぁ?」


 「うーん、あと10分かなぁ。」


 「えぇーっ!?」


 カウンター席に座り、足をぶらぶらと揺らしながらニイナは頬を膨らませる。

 今日の彼女は、花柄のジャンパースカートに淡い黄色のボレロを羽織り、プラットホーム・シューズ を履いている。

 ふわふわのピンクの髪は耳上にツインテールをしていて、さっきまで着けていたヘッドドレスはカウンターに投げ捨てられている。


 「ヘッドドレス可愛かったのに、つけていかないの?」


 「うん。だって、せっかくのピクニックでヘッドドレスが風で飛ばされちゃったり、木に引っかかったりして邪魔になるかもだもん。だからいつもよりシンプルにしたんだもん。どうかな、可愛いーい?」


 「うん、いつも可愛いけど、今日もすっごく可愛いっ。」


 ニイナは、にへらっと笑って更に足を大きく揺らす。


 可愛いなぁ。素直なところとか、ホント可愛い。私より5つも年上なのが嘘みたいだ。


 「準備終わったから、そろそろ出掛けようかっ!」


 「わぁーいっ!!いこっ、いこっ、早くぅっ。」


 一目散に店のドアへ走るニイナ。

 ふわふわした髪の毛が舞い、甘い匂いが鼻を掠る。


 店を出ようとドアノブに手を置いた瞬間、突然ドアは外から引かれニイナはそのまま前へ体が傾き、外へ投げ出された。


 「ーーっ、きゃっうっ!」


 「あ、危ないっ!!」


 ヘッドドレスより、厚底靴をやめさせればよかったと今更後悔しても遅い。

 そのままニイナは店の外へ飛び出し、転倒ーー…


 「ぷぎゃっ」


 「す、すまないっ!大丈夫か!?」


 ニイナの潰れた声に、もう一つ聞き慣れた声。

 

 あんな勢いよく扉が開いたら、小さくて軽いニイナは簡単に体を持っていかれて前のめりで転倒してしまう。

 大惨事になっていないことを祈り、ドアへ駆け出した私は「はぁぁぁー。」と盛大な溜め息を吐いた。


 「あっ、くるみん。そんな急がなくてもニイナ置いてかないよ?」


 「いや、そこじゃなくて、私が急いだのはニイナが転んだかもしれないと思ったからで…。」


 こんな時までマイペースなニイナに、心配を通り越して呆れモードになる。


 「ふふっ、大丈夫、大丈夫。だって、転んだ先にこんな胸板があったら怪我なんてしないよー。」


 そう言って、目の前にある胸板をバシバシ叩くニイナに、叩かれた本人は顔を歪ませるだけで反論や反撃はしない。


 「あっ、ルドたん。とってもいい筋肉だねぇ。こんなに胸筋あるなら、お腹もすごいのー?」


 撫で撫でと胸からお腹に移動するニイナは、好奇心旺盛に目を輝かせる。


 ニイナさんや、ついこの間はルドさんのことルドるんって呼んでたけど…。それに、遠慮ない触り方。この世界のお貴族様制度どうなってるの…?

 ーーうん、気にしたらダメな気がするからやめよう。


 「ニイナ嬢…。」


 「ぷはっ、ニイナ嬢って、ニイナは平民なんだからニイナはニイナでいーよー。」


 「なら、ニイナさん、すまないが異性を許可なく触るのをやめて頂きたい。」


 「ぶふっ、あはは、ニイナでいいってばーっ!」


 「……。」


 いや、そこじゃないでしょっ!ってツッコミたい。

 目の前で繰り広げられる一方通行のやり取り。結局、ニイナが「きゃはははっ」と笑いながらルドの背中をバシバシと叩いて満足し、無事に終了した。


 「あ、あの…。」


 「あぁ、あんたか。体はよくなかったか?」


 「ーーみ、……って、…ます。」


 「すまない、なんて言ったんだ?」


 「私の名前はくるみって言いますっ!今日もこの間も、あんた、あんた、あんたっ!名前で呼んでくださいっ。」


 「あ、あぁ、そうだったな、くるみ。これでいいか?」


 バツが悪そうに真っ赤な髪を掻き上げる。ほんのり顔が赤いのは気のせいだろうか。

 今日の彼はとてもラフな格好をしていて、皺一つないシャツに黒いベストにパンツ姿。腰に帯剣はしているが、団服でないことから仕事がオフなのだろう。


 「申し訳ありませんが、今日はお店お休みです。」


 「くるみんはニイナと一緒にピクニックにいくんだよぉっ。」


 「あぁ、話は聞いている。」


 ーーん?聞いている?


 訝しむ私に、ルドは咳払いをしてから話を続ける。


 「キースに"怪我をさせたお詫びに、ピクニックにいく二人をボディーガードしてこい"っと言われ来てみたんだが…。」


 掻き上げた髪を後ろに撫で付ける。

 その姿が色っぽくて口をポカンっと開いたまま見とれてしまう。


 「ルドたんも一緒にいくのー?いいよっ、楽しそう!」


 隣でニイナのはしゃいだ声で我にかえり、私が出した答えは


 「お断りしますっ!!」


 もちろん、受け入れるわけにはいかない。

 

 啞然とコチラを見る金の瞳に、なんだか申し訳なさが募るが、お貴族様をボディーガードに使うなんて絶対にしてはいけない。

 

 ニイナの小さい手を掴み、ルドに頭を下げてから横を通り過ぎる。

 その際、「面白い。」と聞こえたような気がしたが、きっと気のせいだろう。


 私はこの出来事をすぐに後悔することになる。



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