魔獣除けは効き目が大事。
ぱちぱちぱちと何かが爆ぜる音がする。
ふわりと意識が覚醒したかと思うと次にやってきたのは寒さと全身の怠さ。
「おき、起き上がれな…い。」
「起きたか。」
「ーーぎゃっ!!いっ、たぁ…。」
何これ凄く痛い。
勢いよく飛び起きたのはいいが、全身を駆け抜けた痛みに
疼くまる。
「そのまま動かないで大人しくしていろ。」
「なぜここに…?」
焚き火の前で布らしきもので剣の汚れを落としている人物は真っ赤な火に照らされ、赤い髪はキラキラ輝いて見える。
剣を鞘に戻し帯剣し、倒れ込む私の前にルドはしゃがみ込んだ。
「キースがあんたを追いかけてくれと何度も頼みに来た。最近では魔獣が活発に動いていると報告が上がっていたが、まさか自分から魔獣の懐に飛び込む奴がいるとは。」
「うっ、これには深いワケが…。」
「そうか、能天気の考え無しだと覚えておく。」
「うぅ、申し訳ありません…。」
「追いかけてきて正解だったな。キースに感謝しろよ。打ち身で何日かは動きにくいだろうが、魔獣に食われるよりマシだろ。」
「はい…。助けていただいてありがとうございました。色々お手数をおかけして申し訳ない気持ちは重々ありますが、お願いがありまして…。」
「あー、言ってみろ。」
「足を挫いてしまったみたいなので、ニイナの家まで送って頂けないでしょうか…?」
うん、すみません。
真っ赤なポンチョのフード部分を引っ張られ、後ろに投げ飛ばされた際、足を捻ったのだ。因みに、両手首も痛い。
だって私、平和な国の一般市民なので受け身の取り方なんて知りません。
ルドの視線が痛い。
図々しいのはわかってる。けど、歩けないものは歩けないんだよ。
「あー、わかった。立てるか?あんた、そのイヤーカフの魔石、効力がもう切れているが…、その顔は気付いていなかったんだな。まぁ、そんなこともきっとあるんだろう。さて、帰るぞ。」
その顔とはどんな顔だろうか。
焦り、驚愕、呆然、怒り、恐怖。きっと全てが混ざった複雑な顔をしていたに違いない。
頭からかぶった魔獣のよだれはカピカピに乾いている。なんか臭いのは気のせいじゃないはず。
「実は、手首も痛めてまして…。立てません。」
沈黙が痛すぎる。
ルドは長いため息を吐くと、座り込んだ私を軽々と持ち上げた。
ーーお姫様抱っこ。
心臓が口から飛び出しそうとはこの事を言うのね。
ガッチリした見た目を裏切るこなく、筋肉質なのがわかる。
私は意識を逸らすために、先程までいた場所を振り返った。
どのぐらい気を失っていたのか、辺りは真っ暗闇で森に吸い込まれそうな感覚に陥る。
「疲れたなら少し目を瞑っていろ。」
ルドありがとう。
ボソリと呟いた言葉は本人に伝わったかはわからない。
次お店に来た時は沢山のいちごを…。
「ああ!!いちご忘れたっ。」
「耳元で叫ぶな。籠は持ってるから安心しろ。」
完璧すぎる。さすが、紳士。
ホントありがとう。絶対にいちご沢山乗せます。
ルドの胸元の服を軽く握り、顔を寄せる。
とくんとくんとルドの心音を子守唄に目を閉じた。




