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「いい天気だね」

「うん」


 休日の公園で尚子と木で出来たベンチに座りながらまどろんだ。朝と昼の冷え込みは厳しくなってきたが、昼間の程良い暖かさは心を穏やかにさせてくれた。


「仕事、大変そうだね」

「自分一人ならなんとかなるんだけどね」


 新卒以来今の会社で自社システムの開発に携わってきたが、二年前からサブリーダーという管理職の立場になった。これまでの自分の仕事に加え、杉下や数名の部下の管理も入り業務は一気に忙しくなった。最初一年は慣れない事もありかなり苦悩したが、最近になってようやくやるべき事を掴めるようになった。それでも単純に抱える業務量は増えたので大変ではあった。


「尚子が頑張ってくれてる分、僕も頑張らないとね」

「無理はしないでね」

「尚子の方こそ」

「うん。でも、今回ばかりは無理しないとね」


 複雑な気持ちになる。無理はしないでねなんて言葉は何の気休めにもならない。そんな事は分かっていても、尚子を少しでも安心させたくてそんな言葉が出てしまう。

 尚子の言う通り、今回ばかりは無理は必須だった。それこそ本当に命懸けの行為なのだから無理は当たり前なのだ。


 ぎゅっと僕は自然に尚子の手を強く握っていた。それがまるで尚子の不安ではなく自分の不安を握りつぶすようで情けなくなった。ぎゅっと尚子も強く僕の手を握り返した。


「頑張ろうね」


 本当に情けない。それは自分自身だけではなく、僕の不安も一気に包み込む言葉だった。


「うん。頑張ろう」


 ーー神様。どうか尚子も子供も無事でいてくれますように。


 こんな優しい彼女も、そして子供にも、不幸な結末を迎えさせたくはない。



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