ウォーフィールド沼への誘い
温かい目で見守っていただけたら幸いです。
パソコンの画面に焼け焦げた野原、ゲームのようなUI、そして右下に銃が映っている。
俺はその視線の主を操作し、敵を銃で撃って倒す。ファースト・パーソン・シューティング、俗に言うFPSだ。
「おいイスキ、後ろ後ろ!」
ヘッドフォンから声が聞こえる。後ろに敵がいるらしい。
「わかってるベルグ、カバーくれ!」
急いでマウスを動かし、視点を操作する。マウスに連動し、キャラが敵の方向を向く。
「おっけい待ってろ……あっ敵こっち向いてる!あっ」
"ベルグ"と書かれた味方の位置を表示させる文字が消える。
「マジか!?あっやべ、こっちも……」
UIのうち"HP"と書かれたバーが急速に減り、そして無くなる。
2秒ほど経った後、画面には"LOSE"とデカデカと表示された。負けだ。
「ッ!!あー、また負けた……やっぱフルダイブに慣れるとPCのFPSはきついんだよな、イスキも早くウォーフィールドに来いよ!楽しいぞ?」
ヘッドフォンの先……"ベルグ"がそう話す。
ウォーフィールド。半年ほど前に発売されたゲーム。建設、銃撃、斬撃、商売、なんでもありの自由度が売りな、初の"フルダイブ型"なFPSの名前だ。
文字通り、五感を使って楽しむ新時代のゲームである。
「って言ってもなぁ……変にハマりすぎるのも怖いし」
"俺"……オンライン上での"イスキ"はそう返す。新しいが故、不安や恐怖が付きまとう。『変な感覚に襲われないか』とか『酔わないか』とか。
しかも、ウォーフィールドには悪い噂も聞く。民度、特に礼儀がなってないプレイヤーが多いって噂が絶えないのだ。
「あーもう、大丈夫だって言ってんだろ?俺は大丈夫だしな!民度が悪いのは一部だし……人が多けりゃ民度も下がる。そういうやつがいないとこに行けばいいし、イザとなったら任せろ?」
ベルグが自信満々に返す。それでも、俺は少し不安を感じた。
「しかもな、これは新情報なんだが……お前、よく銃器を考えてるよな?」
彼がそのまま話を続ける。俺は考え込む。
確かに俺は銃器を考えるのが好きだ。FPSを自分で作ろうとして挫折したこともある。だが、いくら何でも……
「いくら自由度が売りでも、そう簡単に思った通りには作れない、と考えてるだろ?ヒッヒッヒ……」
ベルグがこちらの考えを察知し、わざとらしくほくそ笑む。そして語り続ける。
「次のアプデで好きな銃器が作れるようになるらしいぞ、それも外見、中身、使用弾薬どころか、素材の設定や改造も動く限り自由に設定し放題だってさ!」
俺が思っていたより衝撃的な言葉が来る。だが、騙されてはいけない。『下手に言葉に乗って始め、結局やらなくなった』では申し訳が立たない。
じっくりと判断するべく、質問を返す。
「設定に充てるマガジンとか弾薬とかも自作できるのか?アタッチメントも……」
そう聞くと、彼の笑い声がヘッドフォンから帰ってきた。
「勿論だ!しかも、下手に作ると暴発するらしいぞ」
思った以上であった。最近のゲームの進歩に呆気に取られつつも、俺は考えをまとめた。ここまで自由度が高く、やりたいことができるならば、答えは一つ。
「よし、ウォーフィールド行ったる!!」
「手のひら返しやがった!!この野郎、アプデくらい見とけ!!」
ベルグが爆笑してツッコミを返す。俺もつられて笑った。
「よし、もうフルダイブ機器はそっちにあるんだろ?ギフトでソフト送り付けとくから後で返してな!それじゃ飯行ってくる!」
ベルグはこの上なく機嫌のよさそうな声で話し、ボイスチャットを切断する。
俺は『おっけー』とチャットに書きこんで、さっそくウォーフィールドのインストールを始めるのだった。
進捗だめです!!!!