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【完結済】傷だらけのGOD MARAの呪い 氷結のサバイバル!  作者: 吉田真一
第15章 тепловоз(機関車/大陸縦断)
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第8話 売り子


 ※ ※ ※


一方その頃、隣車両では......


「なんだ......また指名手配かよ。今度も少女じゃねえか。最近このパターン多いな」


厳つい大男が口を曲げてボヤき始める。


「メールの内容だと、この列車に乗ってる可能性が高いみたいだぞ」


「マジかよ......また端から探してまわるしか無いな。今まわり終わったばかりじゃねぇかよ」


「見逃したりしたら、またディアナさんにドヤされんぞ」


「そうならないようにせんといかん。さぁ、仕事だ。乗客全員の顔もう一度見てまわれ。俺はここで待機してるから、何かあったらすぐに知らせろ」


「「「了解!」」」


バタバタバタ......隣車両へと飛び出して行く『ヴァローナ』下々の面々。まるでイナゴの大群のようだ。


「取り敢えずはよし......」


リーダー格の男は手配を済ませると、再びその大きな身体を水揚げされたマグロの如く座席に寝かせた。すると、


ゴロゴロゴロ......何やらタイヤを転がすような音が。見ればそれは、売り子のカートだった。


ゴロゴロゴロ......カートはまるで無人ロボットの如く、一定のスピードでマグロに近付いていく。


本来『売り子』であれば、『暖かいお飲み物はいかがですか?』とか、『おつまみはいかがですか?』とか、物を買って下さいオーラをふんだんに撒き散らす訳ではあるが、その売り子からはそんなオーラが全く感じられない。まるで『私に声を掛けないで下さい』年若き黒髪少女の売り子からは、無意識のうちにそんなオーラが放たれまくっていた。すると、


「おい、待て」


突然大男は、売り子を呼び止めた。


「はい......」


即座に立ち止まる。呼び止められた相手が厳つい大男だったからなのか? それとも何か別の理由が有るのか? 下を俯きブルブルと震えている理由を知りたければ、直接売り子本人に聞いてみるしか無い。


「おいおい、別に取って食おうって訳じゃねぇんだから、そんなにビクビクせんでもいいだろう。おやっ?」


大男は突然話を止め、気付けば少女の身体のある一点に視線は釘付けとなっていた。


まずい......顔がバレたのか?! 無意識のうちに唇を噛みしめる少女。


ところがそんな少女の心配を他所に、大男が一心不乱に見詰めていたものは顔では無く、他にあった。すると、大男が再び口を開く。


「お前......左手首から下が無いじゃないか。一体どうしたんだ?」


そっちか......良かった。思わず胸をなで下ろす少女。即ちそれはソフィアだった。


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