第5話 ハイエナ
エマは徐に裸電球のスイッチを再び押してみた。パチン。すると、隠し部屋は真っ暗に。そしてもう一度押してみると、パチン。隠し部屋は再び照度を取り戻す。パチン、パチン、パチン、パチン......エマがスイッチを押す度に隠し部屋は、暗→明→暗→明......を、繰り返した。
ソフィア→マーラ→ソフィア→マーラ......エマは交互に写真で見た二人の顔を頭に浮かべてみる。しかさ、点と点が繋がりそうでどうしても繋がらない。エマの頭の中は既にオーバーヒート寸前だった。すると、
「エマさん、あったゾ! マンホールの蓋ダ」
突然アレクの声が頭上で響き渡る。隠し部屋から再び地上へ顔を出してみると、額に汗を浮かべたアレクの姿が。手にはしっかりとコンクリートの蓋が持たれている。大きさからして、このマンホールの蓋に間違いなさそうだ。
「アレク、いいか......よく聞け。あたしが下に潜ったらその蓋を閉じて、フローリングをもとあったように戻せ」
「えっ? それッテ......エマさんを閉じ込めるってコト?」
アレクはエマの意図が全く見えていない様子。
「そうだ。いいから早く言われた通りにやれ」
エマは隠し部屋に頭を引っ込めながらアレクに行動を促す。すると、
「ワカッタ......」
アレクは指示通りにマンホールの蓋を閉じた。やはりサイズはピッタリだ。続いて剥がされていたフローリングをジグゾーパズルの如く目地に合わせて閉じる。こっちもピッタリだ。
「エマさん、言われた通りに両方はめたゾ」
「よし、マンホールの蓋を閉じてても、しっかりお前の声は聞こえたぞ。おい......そっちもあたしの声聞こえるだろ?」
「アア......よく聞こえテル。ところでサ......一体これから何を始めるンダ?」
「今からお前は、この家に隠れてる奴を見付けにやって来た『ヴァローナ』だ。一旦外に出てから『ヴァローナ』に成り切って家の中へ入って来い。それであたしを見付けろ。分かったら早くやれ」
全くいみが分からん......この人は一体何を実験しようと
してるんだ? 俺が『ヴァローナ』に成り切って何が分かると言うんだ? でもまぁ、俺みたいな凡人じゃ理解出来ない重要な意味が有るんだろう。まずは言われた通りにやってみるか......
アレクは決心を固め、家の外へと飛び出して行った。そして玄関前に立つと、俺はヴァローナだ! 凶悪殺人鬼のヴァローナだ! 隠れてる奴を全員見付け出してやる。皆殺しだ!
自らを『ヴァローナ』と信じ、ハイエナと化すアレクだった。何事にも手を抜かない、その執念だけは褒めてやりたい。




