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【完結済】傷だらけのGOD MARAの呪い 氷結のサバイバル!  作者: 吉田真一
第12章 Красный снег(赤い雪/斬)
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第10話 救出

ガサッ、パタッ。その拍子に僅かな音が立ち上がった。間違い無くその物音は少女の耳に届いたに違いない。


すると少女は、スイッチが入ったかのように突然走り始める。雪を真っ赤に染めながら......


ザッ、ザッ、ザッ......


ザッ、ザッ、ザッ......


「あんなちょっとした物音に怯えてる少女が『ヴァローナ』だって? 絶対にあり得ない!」


おい、どうする? 揃いも揃って取るべき行動を決めかねているようだ。やがて、一番の年長者がゆっくりと口を開いた。


「よし、外へ出るぞ。油断するな。静かにだ。助けるか、助けないかを決めるのはその後だ」


遂に重い腰を上げる。しかし、中々重い腰が上がらなかった村人達を責める事は出来ない。昨晩、子供を囮にして二人も殺されたのだ。しかも、その時『ヴァローナ』はまたここにやって来ると宣言していた。慎重にならざるを得ない事情も理解出来る。


ソフィアがやって来たタイミングがあまりに悪かった......そうとしか言いようが無い。


ギー、パタン。静かに扉を開けると、村人衆は武器を構えながら慎重に辺りを調べてまわった。しかし、周辺には人はおろか、猫の子一匹居やしない。有るものと言えば、サハリン湾へと続く血に染まった真っ赤な道しるべだけだった。


最早、少女の身が潔白である事は明らか。疑う余地は無い。今、村人衆に出来る事と言ったらただ一つ。


「少女を助けなければ!」


それだけだった。


「あっちへ向かったぞ!」


「あっちって......まさか海?!」


「とにかく追い掛けよう!」


ザッ、ザッ、ザッ......


 ザッ、ザッ、ザッ......


  ザッ、ザッ、ザッ......


血相を変えて、血の道しるべを追い掛ける村人達だった。


「おい、見ろ。舟だ!」


「なんてこった! 舟に乗ってるのか? 今にも沈みそうじゃないか!」


「無茶な事を......早く舟を出せ! 急がないと沈没しちまうぞ!」


村人達は慌てふためきながら、村一番の快速船を海に放つ。


ゴー......! モーター音が広大なサハリン湾に響き渡る。


「まずい......舟が完全に傾いてる。沈没するぞ! 急げ!」


更なる加速を加えていく快速船。


3メートル


2メートル


1メートル


そして、


0メートル


到着だ。


残念ながら......そこに少女の姿は無かった。有るものと言えば上下が逆さまになった小舟だけ。既に転覆していた。


「くそうっ!」


迷わず、海へと飛び込んで行く村人衆。


ザブーンッ!


ザブーンッ!


海の男達は決して海を恐れなかった。とは言え、2月と言うこの季節。物理的に人間の身体が耐え得る水温では無い。サハリン湾の海は、『正義感』『根性』『気合い』などと言う精神論だけで攻略出来るほど、甘いものでは無かった。



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