第8話 弔い
「あなたっ!」
慌てて後ろを振り返る夫人。何度、最愛のその人を見たところで再び動く事は無い。村長の心臓は銃弾を撃ち込まれた瞬間にその鼓動を止めていた。
ところが......
そこに倒れていたのは......
なんと......
村長だけでは......
無かった。
「ダッ、ダリア! ああ......なんてこと......」
見れば、村長の亡骸の直ぐ後ろで、一人の少女が首から大量の血を流して倒れているではないか! 恐らく、外した最初の一発目がダリアの首に直撃していたのだろう。
クーン、クーン......鼻を鳴らしながらダリアの顔を舐める愛犬のキリル。そんなキリルの頭を最期の力を振り絞り、血塗れになった手で必死に撫でるダリアだった。
「キリル......お前は......ぶ、無事だったのね......良かった......お母さんを......守って......あげ......て......ね」
そう語ると、ガクンッ。首が落ちる。父の後を追って、ダリアも今、異世界へと旅立ってしまった。12才と言う若さで。
............
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そんな惨劇がこの『ネクラソフカ村』で昨晩起きたばかりだった。その後、村長の家の地下で村民達の涙が枯れる事は無かった。
そして、それから30分後......遂に、何も知らぬソフィアがこの村へやって来てしまう事となる。それは最早、運命の悪戯としか言いようが無かった。
また『ヴァローナ』が同じ手を使ってやって来た!
訪れたソフィアを見て、村人達がそんな風に思った事は言うまでも無い。
ガルルルル......突如一階で番をしていた愛犬のキリルが唸り声を上げる。
「な、なんだ? また誰か来たのか?!」
慌てて村民は一階へと上っていく。
「おいキリル、静かにしてろ」
村民の一人はキリルの頭を撫でながら、静かにカーテンの隙間から外を覗いてみた。すると、
「おい、なんだか高価そうな毛皮を着た女が近付いて来るぞ。結構若そうだな......」
「『ヴァローナ』め......また同じ手に引っ掛かると思ってんのか? 返り討ちにしてやる!」
「ダリアと村長の弔い合戦だ!」
「八つ裂きにしてやる!」
皆、恐ろしい程に顔が紅潮していた。最早、相手が女だろうが子供だろうがそんな事は関係無い。村人衆の怒りの矛先は全て今ここに現れた『ヴァローナ』の回し者に向けられていたのである。
ガルルルル......!
「おお、キリル。お前も戦いたいのか? よし、先鋒はお前に任せる。バラバラに噛み切ってやれ。ダリアと村長が見てるぞ!」
村人はキリルと共に勝利を誓い合うと、扉のカギを開けそそくさと地下室へ戻って行った。キリルが襲い掛かったら一気に飛び出して惨殺する寸法だ。
すると......コンコンコン。
「すみません。ど、どなたかいらっしゃいますか?」
回し者がぬくぬくとやって来た。




