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第13話 法の裁き

秋葉秀樹は、遺産の秘密が隠されたこの『写真』を囮にして、あたしとウォールを遭遇させようとしていた筈だ。であれば、『写真』を前にして今のような緊迫した状況に陥る事も当然、想定していたに違いない。


秋葉秀樹は、この『写真』の秘密を解く鍵をマーラさんだけじゃ無くてあたしにも与えてたとしても、決して不思議な話じゃない。


マーラさんが『ミルコの村』でその事をあたしに話さなかったのは、まだあの時点では完全にあたしを信用していなかったのだろう。


あたしは『極神島』で一度、秋葉秀樹に捕らえられている。あたしのデータは全て記録していたに違いない。身体能力、血液型、網膜、DNA、そして指紋すらも......


皆が固唾を飲んで見守る中、エマは一度大きく深呼吸。そして、大きく手のひらを広げた。


エマがこれから一体、何を始めるのか?......誰一人として、それが分かる者など居る訳も無かった。ただ、美緒、圭一、ポールの3人は、この後『写真』に何かが起こる事を既に理解していた。それはエマの自信に満ちた顔を見れば分かる事だった。


ゴクリッ......生唾を飲み込むウォール。きっと、今のこの瞬間を夢見ていたのだろう。


そして遂に、エマは写真の秘密を解くべきその行動を開始した。なんと、今開いたばかりの手のひらを『写真』の透明パネルにピタリと当てはめたではないか!


すると、ピピピッ。写真から、僅かな電子音が立ち上がったかと思えば、次の瞬間には、


ウィ~ン......なんと! 透明パネルと額縁の隙間から何やら横長の紙がスライドして来たではないか!


やっぱ指紋認証だ! ビンゴだったぜ! エマは敢えて表情を変えず、そんな紙を素早く摘まみ取る。そして直ぐ様、


「ほれ、受け取れ。これが『親友』の遺産だ。さぞかし満足だろう」


惜し気も無く、ウォールに差し出した。


「こっ、これは......」


今、ウォールが震える手で掴んだ紙......そこには、紙の中心にアメリカ初代大統領ワシントンの肖像画が君臨し、更にその下には『ONE DOOLAR』と大きく記載されている。


「どうした? いらないのか? お前の『大親友』がくれた『1ドル紙幣』だぞ。いらないなんて言ったら、バチが当たるんじゃ無いのか?」


「こっ、これが......秋葉秀樹殿が......わしに残した......遺産......だって......言うのか?......」


ウォールは既に放心状態。想像していたものと、余りにスケールがかけ離れていたのだろう。無意識のうちに銃口は下ろされ、ただガクガクと震えるばかりだった。そんなウォールに対し、今度は圭一がたたみ掛ける。


「秋葉秀樹の資産は、元々差し押さえられる運命にあったんだ。それまでの脱税額は数百億に達してたらしいぞ。


更に奴の隠し財産の全ては妻のソニアさん、それと娘のソフィアさんとマーラさんに3分割されたそうだ。


秋葉秀樹は決してお前を騙した訳じゃ無い。1ドル紙幣......それが奴の総資産だ。良かったな! 『親友』に裏切られなくて。ハッ、ハッ、ハッ......」


ワナワナワナ......ウォールの身体は震えが止まらない。


「くッそう......どいつもこいつも......このウォール様をバカにしくさりおって!」


ウォールが怒りと言う感情を呼び戻し、再びエマの頭に銃口を向けようとしたその時には! 残念ながら......エマの頭はそこに無かった。


慌てて顔を上げてみると、目の前には勝ち誇った表情を浮かべる4人の姿が。そして、美緒、圭一、ポールの銃口は、寸分の狂いも無く、ウォールの頭にしっかりと向けられていた。


し、しまった!


ほんの一瞬の隙を、エマが見逃す訳も無い。それは正に4人の勝利が確定した瞬間だったに違いない。


全ての状況を理解したウォール。その表情は思いの外、落ち着いていた。そして、静かに口を開く。


「さぁ、撃ち殺すがいい......わしの負けじゃ。敗者に生きる権利は無い。それがこの世界のルールだ」


負けを悟ったその者は、潔かった。悪魔には、悪魔なりのプライドが有るのだろう。一方、


「悪人は法の裁きを受ける......それがあたし達のルールだ。お前をこれから引っ捕らえて、警察に連れていく。今や落ちぶれた『ヴァローナ』だ。誰もお前に救いの手を差し伸べる者はいないだろう。圭一、ポール、こいつを縛り上げろ!」


エマが引き金を引く事など有り得なかった。



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