第12話 秘密を解く鍵
「まぁ、落ち着け......」
エマはいきり立つ3人を制し、大事に抱き抱えていた『写真』に視線を向けた。突然巻き起こった家の火事に対し、無意識のうちに『カミラ』は持ち出していたのだろう。
そして遂に、エマは最後の攻撃に打って出る。
「そんなに遺産が欲しいなら、お前にくれてやるよ」
なんと驚く事に、エマが繰り出した『言葉』とは、そんな『無条件降伏』にも等しいものだった。しかし、その『言葉』こそがエマが繰り出した最終兵器。止めの一撃となる事をこの時、誰が予測し得たであろうか?恐らくエマただ1人......きっとそうだったに違いない。一方、
「エマサン、ダメです! その写真が最後の砦です。そいつの秘密を解いたりしたら、真っ先にこいつはエマさんを撃ちますよ!」
「エマさん、ヤケを起こしちゃダメ! もうちょっと粘りましょう!」
「ウォールに遺産が渡ったりシタラ、また大勢の死者が出るんデスヨ!」
エマの降伏? とも言える発言に、色を失う3人だった。
「おう......中々素直で宜しいぞ。この遺産は元々、わしの為に秋葉秀樹殿が残してくれたものだ。それをわしが譲り受けて何の問題が有ると言うんだ。さぁ、パスワードを入力しろ。楽しみじゃのう。フッ、フッ、フッ......」
勝ち誇ったような笑みを浮かべるウォール。既に遺産を手に入れたつもりでいるのかも知れない。そんなウォールに対し、エマはここに来てまたしても従順な態度を示す。
「お前の言う通りかも知れんな。確かに遺産は奴が『親友』のお前に残したものだ。部外者のあたし達が猫ババする訳にもいかんだろう......」
そんな耳を疑うような発言を繰り出すエマ。すると今度は写真を両手に持ち、上下左右裏表......あらゆる角度からじっくりと見渡していく。本気で『写真』の秘密を解くつもりのようだ。エマの顔は、真剣そのものだった。
パスワードを打ち込むのであれば当然の事ながら、それを打ち込むが為のキーボードが存在する筈......しかしながら、どこを触ってみてもそれ若しくは、それの代用になるような仕掛けは一切存在しない。
写真の表面を覆っている透明のパネルは確かに特殊なコーティングが施されている。火を当てても、酸を掛けても、化学変化を起こさないような代物だ。とは言え、パスワードを打ち込めるような液晶画面になってる訳でも無かった。
間違いない......この写真の秘密を解く鍵は、パスワードなんかじゃ無いぞ。そう言えばさっきウォールは......
『あたしがパスワードを知っている。そうマーラの手紙に書いてあった』
確かそんな風に言ってた筈だ。残念ながらあたしは、マーラさんからも、秋葉秀樹からもそんなパスワードの事は聞いてはいない。それって、どう言う事なんだ?
???
そう言えば......『アナディリ』に向かう前日、『ミルコの村』でマーラさんは、
『あたしが行かなければ、解除出来ない仕組みになっている』確か、そう言っていた。そもそもパスワードであれば、『ミルコの村』で教えて貰えばそれで済んでいた話だ。
マーラさんが来なければダメ......つまりそれって、ソフィアさんでもダメって事なんじゃ......
エマは半信半疑で今一度写真を正面から見詰め直す。あらためて熟視してみると、透明パネルは指紋だらけだ。
エマはパネルを見詰める、更に見詰める、そしてなおも見詰めた。
まさか?
そう言う事か?!




