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第10話 パスワード

美緒が語った通り、全てが造り物。小窓から映し出されていた景色は、高性能プロジェクターによって映し出されていた映像に他ならない。部屋も家も村も全てが舞台セットだったのである。


「エマさん、ここはどこだと思います?」


そんな問い掛けをした圭一の手にもしっかりと銃が握られている。そしてその銃口は、寸分の狂いも無く、ベーラ、いやウォールの頭に向けられていた。


(エマ)

「ここはどこかって......極東ロシアじゃ無いのか?」


(ポール)

「驚かないで下サイヨ......」


(圭一)

「なんとここは......」


(美緒)

「私達の故郷......」


(圭一)

「日本です」


(ポール)

「エマサンを見付けるノニ、時間が掛かった訳ダ......」


漸く全貌が見えて来たエマ。すると、途端に笑いが込み上げてくる。


「フッ、フッ、フッ......ここが日本だって?! もう脱帽だ。あんたはやっぱ凄いよ。ハッ、ハッ、ハッ......」


このセットの精巧さといい、ここが日本である事といい、あまりのスケールの大きさに思わず呆れてしまうエマ。確かに、もう脱帽だ。


因みに......今、エマの頭にはウォールの銃口が当てられている。そして、5メートル離れた距離からは、圭一、美緒、ポールの銃口がウォールの頭に向けられている。


もし誰かが、引き金を引くような事でもあれば、立て続けに四方から銃が乱射され恐らく、真っ先に死人となるのが2人。


それが、ウォールとエマである事は言うまでも無い。もしウォールだけを仕留めるのであれば、圭一、美緒、ポールの誰かが1発でウォールの急所を撃ち抜く必要がある。


その距離、5メートル......失敗は絶対に許されない。外したら最後、それは即座にエマの死を意味する。そしてこんな状況下において、誰1人としてそんな大博打に出れる者は居なかった。今はただ......静かに推移を見守り、チャンスを伺う3人のスナイパーだった。


一方、見事なまでに正体を暴かれたウォールはと言うと、背後からエマの後頭部に銃口を押し付けながら、忌々しい顔付きで、ゆっくりと言葉を並べる。


「茶番は終わりだ......どうやらやっと記憶が戻ったみたいだな。それは頼もしい限りだ。あんたも知っての通り、秋葉秀樹氏はわしの唯一無二なる大事な親友だったのじゃよ。お主はよくもそんな大事な親友を殺してくれたのう......わしはあんたが憎くて堪らんわ。


でもな......背に腹はかえられぬ。あんたが素直に、写真の中に秘められた遺産の秘密を解いたなら、その事は忘れる事にしよう。この写真の額縁はのう......焼いても、爆破しても、酸をかけてもびくともせんのじゃ。


マーラの手紙に書いてあったんだろう? あんたならパスワードが分かるって。早く中身を開けてくれ。あんたの記憶が戻るのを、わしはここでずっと待っとったんじゃ。妹に成り済ましてな。でも、もう待てん。さぁ、早くやってくれ」


ガガガッ。言いたい事を全て吐き出し終えると、ウォールは更なる力でエマの頭に銃口を押し付ける。


健気な少女ベーラはいつの間にやらその面影を封印し、今そこに居るその者は、ベーラのお面を被った卑しき金の亡者に他ならなかった。


フッ、フッ、フッ......不適な笑みを浮かべるその表情は、虜となした弱者の反応を、まるで楽しんでいるかのようにも思える。


果たして、エマを取り戻した偽りなる姉が、泣いて命をすがるとでも思っているのだろうか?



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