第9話 ギミック
やがて、ゴゴゴゴゴッ......今、自分達が居たばかりの家が、激しい音を立ち上げながら崩れ落ちていく。カミラはまるで時が止まってしまったかのように、だだじっとそんな炎を見詰め始めた。
炎......
倒壊......
それは、その者の脳の中で封印された『過去の記憶』と言う名の玉手箱が、今正に蓋が開き始めた瞬間だったと言えよう。
因みに......さっきここへ訪れた『黒』なる女は、半年振りの再開を成し遂げたその時、直ぐに悟った。
その者が記憶を失っていると言う事を......恐らく、氷の方舟における大爆発による後遺症。即座に、その原因を見抜いていた。
ならば、如何にしてエマの記憶を呼び戻すか? そんな難問に対し、脳内コンピューターが弾き出した答えが、それ即ち『炎』『倒壊』。
いつやるの?
今でしょう!
と言う事で直ぐ様それを行動に移したと言うのがここまでの経緯だ。
そしてそんな目論み通りに、エマの脳細胞は化学変化を起こし始めていく。
ああ、家が無くなっていく......
火事で、潰れていく......
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火事?
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潰れる?
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それって......
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氷の方舟?
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えっ? あたし......今どこに居るの? 確か......氷の方舟でウォールと戦っている時に大爆発が起こって、あたしは気を失った筈......
あれから一体、どれだけの月日が経ってるんだ? 1週間? 1か月? 1年? ダメだ......全く分からない。
でも一つだけ、たった今、分かった事がある。それは、あんな大爆発の中心に居たにも関わらず、あたしがまだ生きてるって事だ。
ならば......あの時、一緒に居たウォールはどうなったんだ? あたしが生きてるって事は......
エマがその者の顔を頭に浮かべたその時だった。突如背後から突き刺さるような殺気が!
カシャッ。
............
............
なるほど、そう言う事だったのか......
気付けば、エマの後頭部に何か金属のような物が押し付けられている。それは、なんと、銃口だった。
その時、圭一、美緒、ポールの目に映ったものと言えば、エマの背中に引っ付く少女がトカレフの引き金に指を掛けているそんな姿だった。
「エマさん、なんすか! その娘は?!」
半年振りの再開に、感無量......そんな余韻に浸る事すら、神は許してくれなかったようだ。狂気とも言えるそんな少女の行動に、3人は思わず色を失ってしまう。
「まさか、あんた......」
その少女の正体にいち早く気付いたのは、
ここでもやはり美緒。頭の回転の速さだけは、誰にも負けない。そして、エマも遅ればせながらその事に気付く。
「あたしは......カミラじゃ無かった。それでこいつも......ベーラじゃ無い。ウォールだ!」
全身に緊張を走らせながら、エマが重々しく真意を語った。
「エマさん! この家も、この村も、夕陽も、星空も、全てギミック! エマさんを騙す為の造り物よ!」
バンッ!
そんな言葉を飛ばしながら、美緒は頭上に向かって銃弾を撃ち放つ。すると驚く事に......それまで輝いていた星空が一瞬にして消え去ったかと思えば、なんと! 頭上から巨大スクリーンが落下して来たではないか。




