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第8話 全身無傷

カミラは、今にも破裂しそうな心臓と肺に鞭を打ち、再び駆け出そうと顔を上げたその時だった。


「待ってたわよ......」


「長かったな......」


「そろそろ終わりにシマショウ......」


なんと......目の前には、そんな呟きを見せる3人が立ちはだかっていた。


ああ......終わった。裏をかいたつもりだったのに。向こうの方が、上手だったみたい。悔しい......


カミラの顔には、絶望感が滲み出ていた。もう、精も根も尽きた......正に、そんな表情を浮かべている。


「あたしはもう、どうなっても構いません。でもこの妹だけは、この可愛い妹だけはどうか、どうか......お助け下さい! あなた達も人間なら、ちょっと位、慈悲の心を示してくれてもいいでしょう! お願い......お願いよ!」


地に膝を付き、泣き崩れてしまうカミラだった。そしてそんなカミラをベーラはただ黙って背中からじっと見詰めている。


金縛りにでもあってしまったのだろうか? すると......そんな2人の様子をじっと見ていた慈悲無き3人はと言うと、


「やっぱダメだな」


「それじゃあ、やるとシマスカ......」


「それしか無さそうね」


どうやら、慈悲の心を示すつもりは無かったようだ。


カミラは恐怖に怯え、ただガタガタと震えている。そしてそんなカミラに対し、立ちはだかる3人は遂に暴挙へと打って出たのである!


タッ、タッ、タッ......! なんと拳を振り上げながら、一気にカミラの元へと突撃を開始したではないか!


「イヤーッ!」


カミラは頭を抱え込み、甲高い声で泣き叫ぶ。もはや、何も抵抗出来る事は無かった。そんなカミラに対し、狩人の3人は容赦しない。鬼の形相で拳を振り上げる。


そして、バコンッ! ズボッ! バサッ!


............


............


............


それは正に、一瞬の出来事だった。


「ダメだ......いてててて......」


「やっぱ、スゴイ......」


「まだまだ勝てないわ......」


見ればなんと! 襲い掛かった筈の3人の方が、身体中にアザを作って地に倒れ込んでいるではないか。それは誰が見ても、信じられないような光景だった。


そして最も信じられなかったのは、他でも無い。当の本人、全身無傷のカミラだった。


「これって一体......何が起きたって言うの?」


もはや頭は、完全にパニック状態。まるで何が起こったのか、全然理解出来ていない。


そんなカミラに対し、漸く立ち上がった3人が遂に......


「エマさん、お迎えに参りました」


「散々探したのよ、エマさん」


「エマサンは絶対生きてるッテ、信じてマシタ」


3人揃って、感無量......そんな表情を浮かべているではないか。


この人達は、一体何を言ってるの? エマさんって......誰のこと? あたしはカミラよ。


半信半疑、カミラは水溜まりに浮かぶ自身の顔を見詰めた。星明かりに映し出されたそんな顔は、ライトブラウンのショートヘアー、くっきり二重のぱっちりとした目、そして何より......明らかなる日本人。そんな顔だった。




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