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第6話 行水

一方、カミラはと言うと......なぜだかモジモジモジ。外に出る事を躊躇っていた。その理由は他でも無い。夕方、そして夜に見た男女2人の存在だった。


もしあたし達を外へ誘き出すが為の放火だったとしたら......逃げ出す事はその者達の思うつぼ。


でもこのまま家から出なかったら、間違いなく焼死。どんなに考えたところで、選択肢など有る訳も無かった。


やがて、カミラは決心を固めると、


「ベーラ、逃げましょう!」


勇ましく言い放つ。ギー、バタンッ。2人揃ってベーラの部屋を飛び出していく。


すると、キッチンには既に火が回っていた。因みに、キッチンのすぐ外にはプロパンガスボンベが置かれている。そんな物にでも引火しようものなら、大爆発は免れない。


それに対し、玄関付近にはまだ火は回っていなかった。それはまるで、玄関から外へ出ておいで......目に見えぬ何者かが、自分達に囁き掛けているように思えてならない。


あたし達は、あの者達に誘導されてる! 即座に、そんな事を看破するカミラだった。


「まだ間に合うよ、早く玄関から外に出よう!」


見れば既に、ベーラは玄関に向けて第一歩を踏み出していた。すると、


「待ってベーラ! そっちはダメ!」


先走るベーラの身体をカミラは身を呈して止めた。見れば、リビングの小窓には再び人影がチラチラと。今度もシルエットは男だ。でもさっきの男とは明らかに違った。かなりの高身長。少し、ひょろ長い感じがする。


今日1日において、窓越しに見た人間は合計3人。1人目は、線の細い黒髪、黒メガネの東洋人女性。そして2人目は、がっしりとした体型の短髪男性。そして今見た3人目は、高身長、ひょろ長い男性。


多分、気配からしてあたし達を外で待ち受けているのはこの3人だけだと思う。


家に火を付けたりして......一体、何だって言うの! 無力なあたし達にこんな酷い事して、何が楽しいって言うのよ?! もうヤダ......一気にカミラは項垂れてしまう。


一方、


「カミラ姉ちゃん、玄関から逃げないんならどうするのよ? うっ、うっ、うっ......」


恐怖に絶え切れず、ぬいぐるみを抱き抱えながらすすり泣くベーラだった。


どっ、どうしよう?!


カミラの頭の中はパンク寸前。しかし残念ながら、頭をパンクしている時間すら残されてはいなかった。あと数秒後には、唯一の逃げ道たる玄関も燃え落ちてしまう事だろう。決断せねばならなかった。


よしっ!


カミラは遂に決心を固めた。すると、


「ベーラ、ごめん。ちょっと我慢してね」


そんな言葉を掛けたかと思えば、次の瞬間には何と、洗濯場に置かれていた『たらい』を両手で持ち上げたではないか。見れば、『たらい』の中には水が満タン。かなりの重さだ。


にも関わらず、こんなスリムな身体で水を一滴もこぼしていない。それは正に、火事場のばか力としか説明のしようが無かった。きっと幼き妹を救うが為に、ニトロが体内を駆け巡ったのだろう。


そして思った通り、次にやった事と言えば、ザブ~ン......!


「キャー!」


ベーラの身体に水を浴びせ掛けたのだった。そして残った水を、ザブ~ン! 今度は自らの身体に振り掛ける。


「さぁ、ベーラ! お姉ちゃんの背中に乗って!」


「え、あ、うん......」


モチベーションMAXのカミラに対し、モチベーションZEROのベーラだった。


水を被る理由など一つしか無い。子供とは言え、既に次なる行動を予感していたのだろう。




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