第4話 マッチ
写真の表面はプラスチックのような 透明プレートで保護されているが、落としても割れるどころかヒビすら入らない。必要以上に頑丈な作りになってるようだ。するとベーラは何を思ったのか、
「カミラ姉ちゃん、マッチ有る?」
そんなリクエストを繰り出してみせる。
「あるけど......」
「ちょっと貸して」
何か嫌な予感はしたのだが、サラリと言われ、勢いでマッチを貸してしまうカミラだった。
そして、シュボッ。嫌な予感は的中した。なんとベーラは、写真に火を付け始めたではないか。
「ちょっとあんた、何やってるのよ?!」
「大丈夫......ほら、思った通り。全然燃えないわ!」
実際のところ、ベーラの言う通りだった。黒い煤は普通に付くが、指でなぞれば元通り。火を付けたところで何の影響すら被る事は無かったのである。
「きっとそれだけ持ち主の人が、この写真を大事にしてたって事じゃない? さぁ、もうこの話は終わりよ。あたしは夜ご飯の支度しなきゃ。あなたも遊んでばかりいないで、早く宿題やっちゃいなさい!」
いきなり話を終わらせるカミラだった。本音を言ってしまうと、これ以上この写真の秘密を知ってしまう事が怖かった。さっき現れた女と写真がダブって仕方がない。
もう、気にするの止めよう。多分、たまたま通り掛かっただけなんだ。きっとそうに決まってる......
無理矢理、現実逃避に走るカミラだった。
やがて、夕陽は北極海の水平線の影に隠れていき、北の大地に佇む小さな漁村は深い夜へと誘われていく......
22時。星が無数に輝くプラネタリウムの下、家々の灯りは消され、そんな小さな漁村に眠りの時が訪れようとしていた。
ああ、全然眠くないや。写真とあの女の事が頭から離れない。別に大した事じゃ無いのに、どうしてこんなに気になるんだろう? もう寝なきゃ......明日も朝早いんだ。
バサッ。カミラは煩悩を打ち払うかのように、掛け布団の中に潜り込んだ。まるで、かくれんぼでもしているかのように......
すると、ザザザッ......
えっ、なに?今、外で足音が聞こえたような......
カミラはかくれんぼを即座に中止。掛け布団から恐る恐る顔を出してみた。
小窓からは、淡い光が部屋内に差し込んでいる。そんな淡い光は、まるでスポットライトの如く机の上に置かれた『写真』を見事に浮かび上がらせている。
街灯と言えるような都合のいい近代設備は
皆無と言えるこのひなびた漁村。幸いにも無数に輝く星が街灯の役割を果たしていた。
すると今度は、ザザザッ......なんと、小窓のレースカーテンを通して黒い影が足早に通り過ぎたではないか!
えっ? やだっ! 泥棒?!
緊迫感に包まれる中、真っ先に思い浮かんだ顔は他でも無い。それは、『黒』なる女だったのである。




