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第3話 ベーラ(Бе́лла)

質問に答えると同時に、少し困った表情を浮かべて見せる。別に、その者が悪人に見えた訳では無かった。でも何と言うか......鋭いって言うか、怖いって言うか、とにかく、深く関わり合いたくない......直感的にそう感じた事だけは、事実だった。すると、


「あら、もう夕暮れね。ついつい長居しちゃったみたい。さぁ......エテコウちゃん、行くわよ」


『黒』なる者は、肩の上で大人しく座る『エテコウ』に軽くアイコンタクトを取ると、あっさり背を向けその場から立ち去って行ったのである。


窓越しに見えるその者の背中は、見る見るうちに小さくなっていく。


なんだか......凄く怖い人だった。あの人は、たまたま通り掛かっただけなのか? それとも、ここへ訪れる事を目的として現れたのか? 正直、答えは分からない。ただ一つだけ言えることがある......それは、あの人がこの写真を奪おうとしていることだ。そんなの雰囲気で分かる。


ふんっ......あんなか細い身体して、きっと弱いに決まってる。誰が渡すものですか! 来るなら来なさい。あたしが張り手を喰らわせてやる!


「テヤッ! テヤァ!」


いきなり真面目な顔して、ピンタの素振りを始める清楚? な女性だった。すると、ギー......


「カミラ姉ちゃん、どうしたの? 誰かと話してたみたいだけど......」


見れば......健気な少女が不安気な表情を浮かべ、扉の隙間からちょこんと顔を出している。そんな少女と目が合ったカミラはと言うと、


「あら、ベーラ(Бе́лла)、嫌だわ......」


顔を真っ赤にして、ピンタの素振りを停止する。やはり、自分が『清楚』で通っている事を自覚しているのだろう。


「ハハハ......カミラ姉ちゃん、喧嘩でもするつもりなの? あれれ......その写真......まだ持ってたんだ」


ベーラは、机の上に置かれた写真に目を向けている。


「ああ......この写真ね。別に捨てても良かったんだけど。何かちょっと気になっちゃってさ......」


正直、さっきの女の話をベーラにしようかとも思った。でもこんな不確かな話で、幼き妹を怖がらせるのもどうかと思い、結局、言わない事に決めたカミラだった。


以前にベーラから聞いた話では、森の中を1人で歩いていてたまたま見付けたらしいが、自分ではあまり写真をよく見ていなかったらしい。差して興味も無かったのだろう。


だったら何で拾って来たのかと聞きたいところではあったが、多分、大した意味も無さそうなので敢えて突っ込む事もしていなかった。


そんなカミラが、ベーラと呼んだ少女は見た目10才ちょっと。カミラが成人しているとすればかなりの『年の差姉妹』と言える。


するとベーラが突如、意味深な事を言い始める。


「この写真が入った額縁......なんかちょっと重過ぎない?」


鋭い所にメスを入れるものだ。もしかしたら、探偵に向いているのかも知れない。言われてみれば、確かにそれは重かった。


気付けばベーラは、そんな額縁を裏から押してみたり、爪で引っ掻いたり、バタンッ! 落としてみたり......いきなり、詮索を始めたのである。



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