第29話 CHECK MATE
【大爆発まで......残り1秒!】
「地獄へ! 堕ちろ!」
バサッ!
なんと......気付けばエマは、ウォールの身体を力強く抱き締めていた。
ドクン、ドクン......エマの心臓が繰り出す鼓動が、ストレートにウォールの身体へと波紋していく。
「......」
そんな想定外なるエマの行動に、ウォールは思わず言葉を失ってしまう。そして、全身から力が抜けていった。
美緒、圭一、ポール......
あとは頼んだぜ......
走馬灯の如く、頭の中で駆け巡ったそんな者達の顔は、皆揃って笑顔を浮かべていた。分かりました......とでも、言葉を返しているのだろうか。
そして遂に、エマはジッポに、火を灯した。
シュポ......
【CHECK MATE】
次の瞬間、ブウォーン! ドッカーン!
............
............
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オーロラに包まれた空間でそんな火龍が産声を上げたのとほぼ同時に、地下の燃料タンクでは大爆発が巻き起こる。
ガタガタガタッ!
まるで核爆弾が投下されたかのように、天上には大きなキノコ雲が立ち上がる。そしてオーロラが輝く緑の夜景は、一気にオレンジ色へとその様相を変化させていった。
正に『大爆発』!
それはヴァローナ、そして最高指導者ウォールが威信を掛けて造り上げた大要塞『氷の方舟』の最期なる勇姿だったと言えよう。
燃え盛る炎は海風に乗って一気に広がっていく。
「うわぁ!」
「熱い!」
「助けて!」
どこを見渡しても、火の見えぬ景色は無い。逃げ惑う多くの人々を、火龍は次から次へと飲み込んでいった。やがて、
グラッ、グラグラッ......ガタッ、ガタガタッ......
船は大きく揺れ始め、
ピキッ、ピキピキッ......
巨大な船を支えていた中心の太柱に大きな亀裂が入り始める。そして遂には、
ガバガバガバッ......
50メートルの高さにも及ぶ『氷の方舟』。それは一瞬にして、ジェンガの如く崩れ落ちていったのである。
※ ※ ※
逃げ遅れた多くの人達を巻き込んでいった
その後、救助隊が到着するまでの間、凡そ5時間。火の勢いは、全く衰えなかったと言う。
漏れ落ちた燃料は広範囲に広がり、引火した炎は、遥か離れた大陸からもはっきりと肉眼で確認出来たそうな。
救助船の到着が遅れた理由は他でも無い。船の周囲を囲ったそんなファイヤーウォールが行く手を阻んでいたからだった。
乗船者数......2,243名。
死者数......1,433名。
生存者......810名。
生き残った者の殆どは、爆発前に氷河の上へと避難出来た者ばかりだ。それを言い換えると、爆発した時点で船に残っていた者は、皆死んだと言う事になってしまう。
そんな悲観的憶測は、この者達に取って正に絶望としか言いようが無かった。その理由は他でも無い。まだ1人だけ『氷の方舟』から脱出していない者が居たからだ。




