第25話 決戦
バタバタバタ......更に激しくなっていくヘリの羽ばたき音。それはいつしか、爆音へと誘われていく。
気付けば、エマの身体はオーロラの光を浴び、緑色に輝いていた。
そして遂に、決戦のリングが敷かれた屋上ステージへ到着だ。そんな屋上ステージにはもう1人、緑色の光に染まる者が居る。それは天使ソフィアの仮面を被った悪魔だった。
そんな悪魔を睨み付けながら、エマはゆっくりと口を開く。
「神の命に従い、お前に死の制裁を与える。潔く地にひざまずくがいい。さすれば神は、お前を安らかなる別世界へと、導いて下さる事だろう」
遂に神の化身たるその者は、悪魔なるその者に引導を渡した。しかし、悪魔が神に従った例は無い。
「この世に、神などは存在しない。もし神なるものが存在するとしたら、それはこのウォールだ」
【残り60秒 BURST!】
「ならば、神に替わり、この手で成敗してくれよう!」
バタバタバタ......激しき強風が吹き荒れる中、エマはゆっくりと両手を前に差し出す。そして、2つの目を静かに閉じた。
エマは読み切っていた......爆発に巻き込まれるリスクを冒しても、ウォールがこの果たし合いに乗って来ると言う事を。
ヴァローナが消滅するからと言って、決してウォールが消滅する訳では無い。ヴァローナの消滅は、むしろウォールが仕向けた事でもあり、それは新たな野望の第一歩でもある。
自分が生きている限り、そんなウォールの野望を邪魔し続ける事は明らか。ウォールに取っても、後々の憂いを取り除く絶好の機会と見定めるだろう。
更にウォールは親友たる秋葉秀樹と約束を交わした筈だ。あたしを必ず亡き者にすると言うことを......
ヴィクトルウェポンがそれを成し得なかった以上、頼れる者は自分のみ......きっと、そう考えるに違いない。
ただここで一つ、大きな疑問を残す。それはさっき、ウォールに刃物で背中を刺されたにも関わらず、今、自分が生きている事だ。
確かにディアナのレザースーツが、並のそれより厚かった事は事実だ。しかし、あと1センチ深く突き刺していれば、間違いなく刃は心臓に達していただろう。しかも刃物は上手く肺と肺の間をすり抜けている。それは明らかに、何かを意図した刺し方だ。しかし次の瞬間、その疑問が一気に解ける事となる。
「わしはな......昔、火事で親を亡くしておってな。真っ黒に焦げ付いたあの嫌な臭いが未だに忘れられんのじゃよ。それが作用したのかどうかは分からんが、気付けば、わしは嗅覚を失っとった。嗅覚を失って無ければ、船を爆破するなんて計画は、立てられんかっただろうに。まぁ、余談だけどな......
何だって? お前が神に仕える使者だと? それはちょっと違うんじゃないか? 神の使者ならば、なぜこのウォール如きに命を救われておるんだ? そんな情けない使者はおらんだろう。あの時、お前の命を取らなかったわしの気持ちが、お前には分かるか?
わしは真の友なる秋葉秀樹氏との約束を反故にしてまで、お前の命を取らなかったんだぞ。ここでひざまずくのは、わしじゃ無い。お前だ。どうだ?......このウォールに従わんか?
さすれば、わしと共に永遠の命を手に入れ、ウォールと言う神の元で、その力を存分に発揮出来るぞ。悪く無い話だと思うがのう」




