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【完結済】傷だらけのGOD MARAの呪い 氷結のサバイバル!  作者: 吉田真一
第8章 Okha(オハの街/大邸宅の惨劇)
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第9話 地下室

「マッタク......飛んでもない所に連れて来てクレタナ......ゴルフボール君」


アレクは暗がりの中、ライターの火を点しながら呆れた表情で呟く。二人が『お導き』に寄って、遂に辿り着いてしまった『飛んでもない所』......それは、地下室だった。見れば、足元に血塗れとなった生首が3個無造作に転がっている。


「一つ謎が解けたな......外の警官が言った通り、ここで死んだ『ヴァローナ』の数は3人だ」


エマは紫色に変色したそんな生首に、忌々しい視線を向けながら語った。


「ソレハそうと、鉄格子か......鍵は開いてたみたいダケド、ここは一体何ナンダ?」


エマはそんな会話を交わしながらも、背負っていたリュックからLEDライトを取り出し、鉄格子に引っ掛ける。すると、視界が一気に広がりを見せた。


「おっと......もう一つおまけに謎が解けたぞ。これ見てみろ」


そう語りながらエマが手に持っていたもの......それはアルミの皿とフォークだった。


「コレが隠されたもう一つの食器ッテ訳カ......デモまたナンデ......」


アレクの顔が途端に曇りを見せる。


「父親と母親が、ここに監禁されていた可能性はほぼゼロに近い。そうなると、あと残りはソフィアかニコライって事になる訳だけど......」


エマがそんな疑問符を投げると、


「ソフィアだ。間違いナイ」


そのように語ったアレクは胸に何かを抱き抱えていた。


「それは?」


「枕元に落ちテタ。男がこんなモン大事に枕元に置いとくカ?」


見ればそれはクマのぬいぐるみ。あちこちが痛み、たいそう汚れていた。


「確かに.......理由はともあれ、ここで監禁されてたのはソフィアで間違いなさそうだな」


「デモ昨晩、ソフィアがココニ絶対居たって言い切れるノカ? 確かにココは寂れた街ダカラ、夜一人で外に出るのは危険ダ。更に昨晩は猛吹雪ダッタしな。デモ生首は鉄格子の内側マデ転がってキテル。ツマリそれは、鉄格子が昨晩開いてたッテ事になるじゃナイカ。そこはどうナンダ?」


鋭い指摘にちょっと『ドヤ顔』のアレク。少しは盛り返しているつもりのようだ。


「いや、間違いなくソフィアは昨晩ここに居た。それだけは絶対に間違い無い」


そんなアレクに対し、完璧に言い切るエマだった。


「そのこころハ?」


「そこに落ちてるアルミの食器だ」


「食器ダト......」


アレクはまるでエマに操られているかのように、そのアルミ食器を手に取ってみた。上から見たり、下から見たり、はたまた左右に振ってみたり......どこをどう見たって、何の変哲も無いただのアルミ食器だ。


「コレのどこが、昨晩ソフィアがここに居たって証拠にナルンダ? もう訳が分からん! いい加減にシテクレ!」


なぜかいきなり怒り出すアレク。そんなアレクに対し、エマは至って冷静に、


「見るんじゃ無い。臭いを嗅いでみろ」


さらりと言って退けた。


「ん、何だって? 臭いダト......」


クンクンクン......全身の神経を鼻に集中させるアレク。すると、


「こっ、これは......」


「昨日の夕食は何だったっけ? キッチンの鍋にリゾットが残ってただろ。そのアルミ食器、リゾットの臭いしないか?」


正にエマの言う通りだった。俺はこの地下室に来て、必死に観察しようとばかりしていた。しかしこの人は食器の匂臭いまで嗅いでいて、しかも瞬時にその臭いをキッチンの残飯と結び付けていた。


ダメだ......この人には勝てない。レベルが違い過ぎる。もう戦いを挑むの止めよう。自分が惨めになるだけだ......遂に白旗を上げるアレクだった。



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