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【完結済】傷だらけのGOD MARAの呪い 氷結のサバイバル!  作者: 吉田真一
第2章 ворона (ヴァローナ/カラスの紋章)
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第2話 小競り合い

一方、路地裏では......燦々たる状況が続いていた。


「お前ら......よくも密告してくれたな! この『ヴァローナ』を売るとはいい度胸だ!」


怯える若夫婦を囲み威嚇を続ける男達は全部で5人。エマが言った通り、それは弱いものイジメの何物でも無かった。


ロシア人が皆そうなのかは分からないが、この連中どう言う訳か皆、妙に身体が大きい。囲まれただけでもかなりの威圧感だ。周りを歩く者達が、見て見ぬ振りをして通過してしくのも何となく分かる気がする。


好んで揉め事に巻き込まれようとする者など居る訳がない。そんな逃げ腰の通行人の中には制服警官も含まれていた。情けなくなる気持ちと共に、この『ヴァローナ』なる組織の強力さを痛感した瞬間でもあった。


「みっ、密告したんじゃ無い......脅されたんだ。しっ、信じてくれ!」


貧相な服を纏った二人はまるで神に祈るようなポーズで必死に身の潔白を主張する。しかし、そんな言い訳が通用するような相手であれば、制服警官だってこの明らかな犯罪行為を見て見ぬ振りはしないであろう。そんな若夫婦の主張など焼け石に水である事は言うまでも無かった。


「脅されて吐くのも、密告なんだよ! 垂れ込んだ奴を生かしといたとあっちゃ、『ヴァローナ』の看板に傷がつくってもんだ。おい、その女の方は金になる。連れてけ! お前はここで終わりだ。覚悟はいいな?!」


男の襟首をたくし上げ、刃物をチラつかせるリーダー格の大男。露となった右手の甲には何やらタトゥーが。目を凝らして覗いて見れば、それは『カラス』の絵だった。どうやら、他の4人の右手にも同じタトゥーが見え隠れしている。きっとそれが、組織のメンバーである事の証なのであろう。


特に隠すような素振りはない。むしろ、見せびらかしている......そんな印象すら受ける程だ。


「ど、どうか命だけは!」


身体を震わせ必死に命乞いする男に対し、『カラス』男は、いよいよその刃物を振り上げた。


「あばよ!」


遂にカラスの右手は、直角に降り下ろされた!


「ひえーっ!」


流し目で見詰める通行人も......


そんな悪行を楽しんでいる5人のカラスも......


連れ去られようとしている妻も......


そして、今正に三途の川に足を踏み入れ始めた本人も......


そこに居合わせた誰もが男の死を確信したその時だった。ところが、


「えっ?」


突如、カラス男の動きがフリーズする。


............


............


............


気付けば鋭利な刃物の先端は、なぜか自身の首に向けられているではないか。


「〇☆¥$%※▲◎! (日本語:弱い者いじめは、良くないな)」 

 

なんと! 瞬きする前は誰も居なかった筈の目の前に、一人の女が鋭い目付きで自分を睨みつけているではないか!


しかも......その女は刃物を持った自分の右手首を180度折り曲げている。それは人間の骨格上、有り得ない角度だった。


「いててててっ!.......」


カラス男は苦痛に顔を歪め、エマに手首を捻られたままそのまま地にひざまずく。やがて、握力を失ったカラス男の手から刃物が地に転がり落ちた。コトンッ......


そんなエマの行動を目の当たりにし、一番舌を巻いていたのは他でも無い。イケメンロシア人通訳だった。


この華奢な身体のどこにあんなパワーが秘められてんだ? しかも......動きが速すぎて全く見えなかったぞ。もしかして俺は幻でも見てたんじゃ無いか? こいつはスゲーや......噂通りだ!


【※ここからは、イケメンロシア人通訳による、同時通訳でお伝えします。】


「な、何なんだ貴様は? 俺達が誰だか分かってやってんのか?!」


別の一人が刃物を振り上げながらエマに怒鳴りつけてくる。


「お前達が誰かだって? 知ってるよ。ゴミ箱を漁るカラスだろ。お前達がカラスなら、あたしはカラス避けネットだ。ハッ、ハッ、ハッ」


「なんだと......その顔はお前......日本人だな。絶対に許さん。切り刻んでやる!」


見ればエマは、刃物を持った大男達にすっかり囲まれていた。エマに手首を捻られた男もいつの間に刃物を左手に持ち変え、ファイティングポーズで威嚇を始めている。


危機一髪......エマに取って、今、正にそんな状況であった事は言うまでも無い。


すると......カシャ。


「刃物を捨てろ」


なんと! 見れば、ロシア人イケメン通訳のミハイルがリーダー格の男の頭に銃を突き付けているでは無いか!


それは正に想定外の展開。一番ビックリしているのは他でも無い。エマだった。


んんっ?......こいつ通訳の分際で何トカレフ持ってんだ?


エマはただ目を丸くしている。しかし、銃を頭に突き付けられた男も組織の構成員の長だけあってなかなか根性が据わっている。自分の命が危機に晒されていると言うのに、余裕の笑みすら浮かべていた。


「撃てるもんなら撃ってみろ。『ヴァローナ』のメンバーに手を掛けたら、お前だけじゃ無い。家族全員が皆殺しになるぞ。その覚悟があるなら撃てばいい。さぁ、早く撃てよ......お前にそんな度胸が有る訳がない。フッ、フッ、フッ」



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