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【完結済】傷だらけのGOD MARAの呪い 氷結のサバイバル!  作者: 吉田真一
第8章 Okha(オハの街/大邸宅の惨劇)
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第1話 お役御免

ゴー......ワンワンワンッ!


雪山を優雅にすり抜けていく4台のスノーモービル。そして、それを取り巻くようにして元気に走り回る12匹のハスキー犬。やがて眼下には、木々の間に見え隠れする

寂れた街並みが......


「おい、アレク。あれがそうか?」


いち早くその存在に気付いたエマが、口から白い息を吐きながら問い掛けた。


「ソウダ。あれが『オハ』の街ダ。そんな事ヨリモ......」


見る見るうちに近付いてくる最終目的地を見下ろしながらも、アレクは未だ興奮冷めやらない表情を浮かべている。そんなアレクの表情に気付いたエマは、


「なに、どうした?」


怪訝な顔で尋ねてみる。するとアレクは

雪煙を吐きながら並走するスノーモービルを順に見渡しながら、疑問をぶつけてみた。


「一体どうやったラ、アンナ事が出来るようになるんだ? 未だに信じらン」


驚きの感情に呆れが加わったような実に複雑な表情だ。


「ああ、このスノーモービルを奪った話か......いや、別に大した事じゃ無い。奴らは、こっちが犬ぞりで走ってるのを見て、簡単に勝てると思ったんだろう。隙だらけだったわ。


文明の力とは言え、こんな物は戦いに使える代物じゃない。小回りが効かないから、何台居ようが同時に攻める事なんか出来ないし、ボウガンなんか持って来たって、あれ両手使わなきゃ撃てんだろう。


両手離してスノーモービル運転出来たら奇跡だ。見た瞬間、こいつらバカかと思ったぞ。案の定、1台づつ順番に向かって来たから、回し蹴り4回であっさりケリがついた。どうだ? 簡単だろう」


「いや......口で言う程簡単じゃ無いッテ。回し蹴り4発、全部顔面にクリーンヒットしてたじゃナイカ。左右に蛇行しながら、猛スピードで近付いて来る相手の顔面に普通当たるカ? しかも百発百中ダゾ。ヤッパあんた......ちょっとおかしいヨ」


エマを化け物扱いするアレク。自分は普通だと言い張るエマ。二人がそんな問答を

繰り広げている間にも......『オハ』の街はいよいよ眼前に。その距離は1軒1軒の家が鮮明に見え始める程だった。


「おや......あれは?」


すると、途端に眉をしかめるエマ。そんなエマの視線の先にあるもの......それは、無数に乱舞する赤と青の光だった。よくよく見ればそれが何かは明らかだった。


「パトカー?」


「みたいダナ」


どうやらロシアのパトカーは、赤と青の光を発するらしい。


「何だか......やけに大きな邸宅の周りに集まってるみたいだけど......」


「事件ナノカ?」


「そうかも......」


ガガガガガ......やがて4台のスノーモービルは平地に降り立つとそこで一旦停止した。


ワンワンワンッ!


犬達にはまだまだ余力が残っているみたいだ。相変わらず元気に走り回っている。


「じゃあ、俺達はココで引き上げるゾ」


仲間の男が犬をソリに繋げながら笑顔で語る。お役御免。凡そ、そんなところなのだろう。


「オウ、急な呼び出しで悪かったナ。おかげで助カッタ」


ロシア語で話されても全く何だか分からない。多分お別れの挨拶でもしているのだろう。


「◯%〓£?@∀!(ありがとう)」


そんな会話を察知し、エマはお行儀よく頭を下げた。言葉は通じなくとも、多分気持ちは伝わっているのだろう。


バシッ、バシッ!


ワンワンワンッ!


やがて2台の犬ぞりは、雪煙を立ち上げながら再び山の中へと戻っていった。


「ヨシ、オレ達も行くとシヨウ」


「ああ......」


スノーモービルを置き去りにし、いよいよ『マーラ』の元へと行軍を開始する二人だった。


ザッ、ザッ、ザッ。


ザッ、ザッ、ザッ。


積もる雪にエッジを効かせながら、一歩一歩、街へと突き進んでいった。


果たして......依頼者たる秋葉秀樹が示した住所の宅に、マーラなる少女は本当に住んでいるのだろうか? 住んでいたとしても、今、在宅しているとは限らない。不安ばかりが脳裏を過るエマだった。


やがて、街の郊外へと差し掛かっていく寂れているとは言え、一応、街である事には違い。


「ソコを右......」


「突き当たりヲ左......」


地図を見ながらエマから聞いた住所を辿るアレクだった。



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