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【完結済】傷だらけのGOD MARAの呪い 氷結のサバイバル!  作者: 吉田真一
第6章 снег(雪/大雪原の追撃者)
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第2話 狼

「ソンナ格好じゃ凍死しちゃうヨ。ほらコレ」


犬の頭を撫でていた女が、毛皮のコートと帽子をエマに差し出す。毛皮のコートと言っても、金持ちのマダムがファッションで着るようなシャレた代物ではない。分厚いエスキモー仕様だ。


アレクは昨晩のうちにこの『移動手段』を手配したと言っていた。恐らくこのエスキモー毛皮も、アレクが事前に手配してくれていたのだろう。中々気がきいている。感謝せざるを得なかった。


「ありがと」


素直に手渡された『エスキモースーツ』で

身を固めるエマだった。


オー、暖かい。これなら犬ぞりも何のその......『エスキモーエマ』が誕生した瞬間だった。


「ヨシ、じゃあ行くとするゾ。俺とエマさんはこっちのソリだ。お前達はそっち使ってクレ」


犬ぞりなど勿論初体験。怖い反面楽しみでもある。心ときめかせ犬ぞりに乗るエマだった。


エマを前に後ろから覆うようにして手綱を握るアレク。その二人の姿はまるで映画『タイタニック』の1シーン。ポールが見たらきっと泣くに違いない。


「ヨシ出発だ。しっかり掴まってろ。ホレッ!」


パシッ、パシッ!


ワンワンワンッ!......


うわぁ、面白い......エマは玩具を手にした子供の如く燥ぎまくる。そんなエマを乗せた犬ぞりは、一気に『ノグリキ』の街を突き抜けていく。その間、人一人目にする事は無かった。やはり寂れた街であった事は言うまでも無い。


2台の犬ぞりは、ストレス無く快調に北へ北へと進んでいく。


「あの二人はお前の友達か?」


やがて犬ぞりにも慣れて来たエマが風に飛ばされそうになる帽子を手で押さえながら唐突に切り出した。


「同郷の仲間ダ。共に『ヴァローナ』と戦ってル。確かな人間ダカラ俺と同じように接して大丈夫ダ」


どや顔で答えるアレク。まだお前の事も

100%信用してる訳じゃ無いんだがな......とは言っても、ここまで来ると信用するしか無いから、無理矢理信用してやってんだ。まぁ、確かにあの二人も悪人には見えないからよしとするか......


そんなエマの自問自答などお構い無しに

犬ぞりは瞬く間に森の中へと入り込んでいった。その頃には、


ガー、ガーッとか、アウーッ、アウーッ

とか、更には、ガオーッ!とか......得体の知れぬ野生動物達の鳴き声が四方から立ち上がり始めていた。


「おい、何かあちこちから雄叫びが聞こえてくるけど大丈夫なのか?」


分かった上で森に入ってる訳だから大丈夫なのだろう......普通はそう思う。


アレク曰く。


「ヤッパ気になるか?」


エマ曰く。


「当たり前だ」


アレク曰く。


「襲って来ないヨナ?」


エマ曰く。


「あたしに聞かれても困る」


アレク曰く。


「ハッ、ハッ、ハッ。確かにソウダ。ちょっとあいつらに聞いてミルカ......」


アレクは先頭を走る二人に声を張り上げた。


「オーイ、野生動物大丈夫ナノカ? 襲って来たりしないダロウな?」


「シラン」


素早い返答だ。そんな二人の返事を聞き取ったアレクは、


「大丈夫だソウダ」


エマに吉報を告げた。


ザッ、ザッ、ザッ......


「ほんとか?」


ザッ、ザッ、ザッ......

ザッ、ザッ、ザッ......


「ホントだ」


ザッ、ザッ、ザッ!

ザッ、ザッ、ザッ!

ザッ、ザッ、ザッ!


「狼が追って来てるみたいだけど......」


「ソウみたいだな」


ワンワンワンッ!


ワンワンワンッ!


いち早く異変を察知した12匹の犬達は、いつの間にか興奮状態。足並みが乱れ始めている。


これはちょっとピンチ! こいつら一体どうやってこのピンチを切り抜けるんだ? 野生の狼はちょっとヤバいだろ......



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