第4話 任務完了
ゴロゴロゴロ......バシャンッ! 見事皇居のお堀に着水だ。2月たるこの極寒の季節、例え圭一の発した銃弾が致命傷とはなっておらずとも、氷が張り掛けたそこに頭から転げ落ちれば、皇居のお堀も即座に三途の川へと変貌を遂げるに違いない。
気付けばその者は一瞬にして動きを止め、流木の如くプカプカと水面に浮いていた。
「よっしゃあ!」
歓喜の声を上げる圭一。しかしまだ10人以上存在する刺客の1人を葬り去ったに過ぎない。刺客集団からしてみれば、虫に刺された程度の戦力喪失と言えた。
そんな圭一の勇ましい勝どき声とは裏腹に、気付けば二人は完全なる窮地へと追い込まれていたのである。
バンッ、バンッ、バンッ!
バンッ、バンッ、バンッ!
前にも増して激しい銃弾の嵐が襲いくる。所詮は多勢に無勢......刺客の到来に
いち早く気付けなかった時点で勝負は決まっていたと言えよう。そして遂に、
バンッ!
「うっ!」
1発の銃弾が圭一の胸部に突き刺さる。そして更に1発、もう1発。続け様に圭一は
腹部に着弾していった。やがて圭一は地べたに倒れ込み、その動きを止めた。
「よし、車内だ!」
リーダー格の男がそんな叫び声を上げると、複数の銃口は一斉に車内へと向けられる。
同じく信号待ちで停止していた複数の車両は、先頭車両のそんな異変に気付くと、先を争うかのようにその場を立ち去って行った。銃を撃ち放つ刺客に立ち向かっても命を落とすだけだ。それは冷静な判断と言えよう。
一方、
「ひえー!」
頭を抱えて泣き叫ぶ要人。いくら警護に金を掛けても死ぬ時は死ぬ。諦めが肝心だ。そして刺客達に容赦は無かった。
バンッ、バンッ、バンッ!
彼らが銃弾を打ち込んだ先......それは防弾ガラスでは無い。扉のロックだった。気付けば、ロックは見事なまでに陥没し、扉に穴が開いている。防弾ガラスの扉が開けられてしまえば、要人の盾となるものは最早、ポールの身体しか無かった。それは要人にとっては最後の砦。砦の陥落も時間の問題と言わざるを得ない状況だ。
そして......扉は彼らの手に寄り、ゆっくりと開けられた。カシャ、キー......
「最早これマデ......」
ポールは最後の気力を振り絞り、銃口を車外の刺客に向ける。そして再び、
バンッ、バンッ、バンッ!
............
............
............
しかし、残念ながら放たれた3発の銃弾は
全て車外から車内へと放たれたものだった。見れば、ポールはその動きを止めている。
キーッ! 1台の大型ワンボックスカーが、雷神の如く現れる。
「よしっ、任務完了だ。行くぞ!」
嵐のように現れ、嵐のようにワンボックスカーで消えていく刺客達だった。ゴゴゴッ......
それは正にプロの仕事。全く持って無駄な動きが無い。逃走車両の到着もドンピシャリのタイミングだ。




