第2話 神楽坂
ポール・ボイド......23歳
アメリカ人の父と日本人の母の間に産まれたイケメンハーフ。アメリカ生まれのアメリカ育ちで2年前初めて来日する。アメリカでは幼少時代からサーカス団の一員として全米各地を渡り歩きナイフ投げの達人として名を上げていた。
そんな彼も圭一同様、不運な事件に巻き込まれ、ずたぼろになりながら母の母国である日本へと逃げ落ちてくる。ナイフ投げに加え元々彼が持ち合わせていた諜報能力、精密機器への豊富な知識を買ったエマは彼を招き入れ今に至る。
エマを慕う気持ちは誰にも負けないと豪語しており密かに圭一にライバル意識を燃やす。今サハリンでエマがイケメンロシア人通訳と行動を共にしている事自体、彼にしてみれば悩みの種と化していた。エマ探偵事務所内ではムードメーカー的な存在だ。
1年前の極神島の事件では秋葉会のメインコンピュータ室で敵に右耳を噛み切られながらも最後まで集中力を切らす事なく脱出に大きく貢献した事は記憶に新しい。
桜田美緒......25歳
1年前、何者かに恋人を殺され自殺未遂を繰り返していた彼女はエマ達に殺害犯の抹殺を依頼する。依頼者として圭一、ポールらと行動を共にしていくうちに彼女の探偵としての才能が開花していく。
彼女の記憶力、洞察能力、窮地における判断能力、計算能力などは凡人の域を遥かに超えており、事件解決後、圭一、ポールの推薦を受けるという形でエマ探偵事務所の一員となった。
根は優しい心を持つ反面、気性は非常に激しく激情すると何を仕出かすが分からない。扱いずらい部分もあるが最近ではその傾向もおさまりつつある。そして表向きは否定しているが密かに圭一を慕っている。残念ながら、今は樹海における一連のバトルで負傷し、病院で治療を続けている。
そんな『EMA探偵事務所』の圭一とポール......今は、要人警護の任に就いている訳ではあるが、どう言う訳かモチベーションが上がらない。
ああ、エマさんに付いて自分もサハリンに行きたかった......二人とも、心のうちはそんなところなのだろう。とは言え、要人警護の仕事は元々予定されていたこと。一方、サハリン行きは突然決まったこと。
1度請けた仕事はそうそう簡単にキャンセル出来るものでは無い。それは彼らも十分理解している事だった。
要人が料亭から出てくると、二人の腑抜けた顔が自然と引き締まりを見せる。彼らもプロであるが故に頭の切り替えは早いようだ。
「ポール、抜かるなよ」
「了解、圭一サン」
ワーキングモードに突入していく二人だった。
ゴールデンタイムの神楽坂ともなれば、その坂もかなりの混雑振り。
人、人、人......見渡す限りそんな景観だ。とは言え、場所が場所だけに原宿や渋谷とは違ったアダルトな雰囲気が漂っている。正に絵に描いたような大人の街......そんな景色がそこには広がっていた。
二人は人混みの中、小太り、ハゲ頭、卑しい顔付き、全身高価な貴金属......上げればきりの無い程の成金オーラ満載の要人にひっつき、スタンバイしていた車両へとその者を導いていく。




