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【完結済】傷だらけのGOD MARAの呪い 氷結のサバイバル!  作者: 吉田真一
第3章 Mikhail(ミハイル/謎の通訳) 
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第5話 見返り

「マーラは、構成員20,000人の巨大組織『ヴァローナ』に追い掛けられてイル。この国に何のツテも情報も無いアンタが、彼女を救い出す事は、悪いがほぼ不可能にチカイ。デモ俺が手伝えば、かなりの確率でソレを達成する事がデキル。それでなんダガ......」


男はニヤリと笑う。確かにこの男の言う通り、自分はこの国内で何のツテも情報も無い。もっと言ってしまえば、会話すらままならない。悔しいが、それは認めざるを得なかった。


「それで......あたしにどうしろって言うんだ?」


全ては条件次第。話の内容に寄っては、乗ると言う選択肢も、無きにしも有らずだ。


「俺と共に、俺の村を『ヴァローナ』から守ってホシイ......アンタの仕事の手助けをする以外に、ちゃんと報酬モ用意してル。悪い話デモ無いと思うんダガ......」


そのように語った男の目は真剣そのものだった。


「......」


エマは無言で考えた。『ヴァローナ』は自分にとって当面の敵である事は間違いない。そしてこの男とその村は『ヴァローナ』と敵対関係にある。利害関係で言えば

一致しているようにも思えた。


ただここで、一つ大きな問題がある。それは村を守る事に対して、期間が設定されていないと言う事だ。自分には成さなければならない任務がある。村を守る事のみに時間を費やす訳にはいかなかった。


「マーラ救出に手を貸してくれるんなら、報酬はいらない。その変わり、あたしがお前の村を守ってあげれるのはマーラを日本に送り出した後、7日間。それで良ければ、お前の話に乗ってやろう」


「ウ......ン」


男は考えた。1年前、300人の軍隊と戦って打ち勝ったと言う経歴を持つ女だ......さっき、その強さは身を持って体験したばかりでもある。『ヴァローナ』の猛威は日増にその激しさを増している。自分が留守にしているこの瞬間にも、連中は襲って来てるやも知れない。最早、選択の余地は無かった。


男はゆっくりと顔を上げ、そして口を開く。


「7日間か......思ってたより少ないガ、背に腹は変えられん。明日をも知れぬ村の運命ダ。ソノ条件、のませて貰おう」


エマは情に厚い人間......男はそんな情報すら掴んでいた。とにかく村まで連れて来てしまえば、あとはどうにかなる......もしかしたら、そんな目算があったのかも知れない。


「よし、分かった。とにかく村に行くのは、マーラを日本に送り届けた後だからな。そこだけは譲れないところだ。いいな。ところで......お前、名前は?」


『ミハイル』......それは既に死んだ男の名だ。まだこの男の真の名を聞いていなかった。


「Александр(アレクサンドル)アレクと呼んでクレ」


男は再び手袋をはめながら親から貰ったその名を告げた。よもや、この場に及んで偽りも無かろう。


「夜が明ければ、明日から忙しくなるぞ。列車が目的地に到着するまではまだ少しある。あたしも寝るから、お前も寝とけ。いいな、アレクちゃん」


「承知シタ、エマちゃん」


なぜ互いに『ちゃん』なのかはよく分からないが、多分、大した意味は無いのだろう。


やがて二人は、何事も無かったかのように、静かに喫煙室を後にしていった。


ギー、バタンッ。


正直......現時点においては、全てが解らない事ずくめだった。


『ヴァローナ』と言う組織


『マーラ』なる少女


この『アレク』なる

ヴァローナから離脱した人物


そしてその者が『ヴァローナ』から

守ろうとしている村


全てがベールに包まれている。百戦錬磨のエマとは言え、言葉も通じないこの異国における戦いを前にして、心細さを感じていた事は事実だった。


圭一......


美緒......


ポール......


目を瞑れば、日本に残して来た3人のメンバーの顔が自然と頭に浮かび上がってくる。


まぁ、どうなるか分からんけど、精精頑張って、早く日本に帰るとしよう......


グゴー、グゴー、グゴー......


座席に着くと、再びネバーランドへと旅立っていくエマだった。



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