49話 千の男
「あれ? 姫は私のドレスはお気に召さなかったのかな?」
エラの方を見ると、先程のアーバレストそっくりの男がエラの胸を棒で貫いていた。
「き、貴様ぁ」
「あれ、貴方も神なのですね。どうもどうも新人神様のアーバレストです。と言っても神核をくれればそれで結構ですよ。お、合ったこれが全神核ですか」
アーバレストはエラの胸に開けた穴に手を入れると弄り始める。そして、エラの体から2つの鉱石を取り出す。そして、片方を飲み込む。
「ふふっ、これで私は神だ。さぁ、全神核も頂かなくては」
「やめろ。お前なんかじゃ全神核は耐えられない。体が壊れて本能のままに暴走するだけだ」
ヤルダバオトは、アーバレストに向かって走っていく。
「無駄だ、底辺の神が。さぁ神核の力を見るが良い。〈黄金〉」
アーバレストがそう唱えると手から大量に金色の鉱石が大量に出る。
「さぁ、これが神の力だ。〈黄金よ無限の兵士へとなり神敵を打ち倒せ〉」
すると、アーバレストの手から溢れた金色の鉱石が人形に変わる。
「ふははははは。黄金の兵士達よ神敵を捕らえよ」
アーバレストがそう指示すると兵士へと変わった金色の鉱石が、ヤルダバオト達に向かって来る。
「ぐっ、〈神殺し〉が。ローラ、トラジロウ、エラ、刀袮は黄金兵の処理をお願い。僕は、アーバレストを殺るから」
「承知」
「あぁ」
「うん」
ローラ、トラジロウ、エラはそれぞれ返事をすると黄金兵へと向かっていった。
「大丈夫なのか?」
「わからない、神核を2つ持ってるから。僕も本気を出さなきゃね。さぁ、刀袮は黄金兵をお願い」
「あ、あぁ」
そう言われ、刀袮もエラ達を追って黄金兵を目指す。
「さぁ、アーバレスト。貴様に一騎打ちを申し込む。姫様と金神様の物を返して貰おうか」
「ふはははは、良いだろう。しかし、その前に」
アーバレストは持っていたもう一つの鉱石を口に運ぶ。
「や、やめろ。それは人に戻れなくなるぞ。第一人間の貴様が扱える様な物ではない」
「黙れぇ。私は神だぞ。何度言えば理解する、この底辺神め」
アーバレストはついににその鉱石を口に入れ飲み込む。
「がはぁ、はぁぁ、づゔがぁ」
アーバレストは苦しそうに胸を抑える。
「だから言ったんだ今すぐに吐き出せ。また、間に合う」
「ぐゔっ、はぁはぁ。貴様の指図等受けぬわ。ぐはぁ、づぅ、、、」
そのまま倒れ込むとピクリとも動かなくなる。そして数秒がたち急に立ち上がる。
「ふふっ、ふはははは。これが人間の叡智だ。私が新しい神だ。跪け人間共よ。さぁヤルダバオトとか言ったな。いざ、参ろうではないか」
「ふっ。暴走したな〈神殺し〉」
ヤルダバオトは、手を片手を黒紫、片手を白赤に変色させ、まるで手のみが悪魔の様になる。アーバレストも持っていた棒を構えると棒から鎌の様に刃が出る。
「それが貴様の能力か。〈神殺し〉」
「あぁ、〈空想魔法〉〈千槍刃〉と言ってくれ。まぁ、これから死ぬ者に指導しても無意味だな」
アーバレストはヤルダバオトの首めがけ鎌を振り下ろす。ヤルダバオトはそれを変化した右手で受けると、アーバレストの腹に左手で殴りを入れる。すると、アーバレストの着ていた防具が凹む。
「ふむ。なかなかいいパンチですね。王国で最強の防具なのですが。まぁ、今の私であれば、、、これくらいはできますよ」
アーバレストは手から金色の鉱石を出すと鉱石は自在に動き回りアーバレストの体に密着すると、防具の様になる。
「くっ」
その、黄金の装甲はヤルダバオトの攻撃では傷さえつけれぬ強度であった。
「あらら? もうお手上げですか? お遊びはこれからですよ」
アーバレストはさらに手から鉱石を出し空に投げる。その鉱石は宙で浮かぶ。
「さぁ、これが私と姫様の力だ」
その鉱石から無数に棘のような刃が出て、ヤルダバオトに向かって放たれる。
ヤルダバオトはギリギリの所で回避するも、アーバレストは無限に出すのできりがない。
「おやおや、反撃をしなければ。もしやその程度なのですか? ふははははいいでしょう。ここで潰して差し上げますよ」
アーバレストが床を蹴りヤルダバオトに近づくと、鎌を振り下ろす。ヤルダバオトは、刃を掴むとそのまま力任せに潰し、同じように殴りを入れるが、アーバレストの棒で弾かれ、棒から出てきた刃で体を切られてしまう。
「グッゥ。貴様ぁ」
「さぁ? どうしたのですか。貴方も神の端くれ。〈固有能力〉を持っているのでしょう?」
ヤルダバオトには、勝算があるにはあったがそれをしてしまうと、姫金神を助ける余力が残らない事にも気づいていた。
アーバレストが再び接近してくる。
ギィン
アーバレストの鎌とローラの剣が鍔迫り合いをする。
「ヤルダバオト様。勝算が無いのならお逃げを。ぐっ、私も長くは持ちませぬ。貴方方に救われた命ならせめてお返しを」
ローラがアーバレストとヤルダバオトの間に入る。
「やれやれ、一騎打ちの意味を理解していないのか? このクソ人間共が」
アーバレストは鎌の刃を引っ込めると、反対方向に刃を出す。当然、ローラは急に力をかけていた刃が消え去り、前方によろめく。そのタイミングでローラの脇腹にアーバレストの反対方向に出した刃が刺さる。
「グッハァ」
「ローラ」
ヤルダバオトは、ローラと姫金神を交互に見て決断する。救う方と見捨てる方を。
「ローラ、ありがとう。決断できたよ。さぁ、終わりにしよう。僕も少しだけ本気で行くよ」
ヤルダバオトは、アーバレストの体を殴り飛ばす。
「貴様、私の黄金に傷が入るとでも思っているのか?」
「いやぁ、思ってないよ。でも、弾き飛ばすことならできる」
「意味不明だな。弾き飛ばしたところで何度も貴様を襲うまでよ」
アーバレストは、棒の上下に刃を出し、ヤルダバオトを攻撃する。ヤルダバオトは、それを全て叩き割っていく。そんな事が数分続く
「ふはははは、無駄だ」
「それはどうかな?」
「ぐっ」
アーバレストが刃を出そうとするがその先に刃は出ず、ただの棒でヤルダバオトの体を殴ってしまう。ヤルダバオトはそれを見逃さず、棒を奪い取ると、真っ二つにおり後方に投げ捨てる。
「貴様ぁ、計算しておったな。小賢しい」
そう、アーバレストは名の通り”千”槍刃魔力によって出せる数が役千枚な事からその名が付いた。
「しかし、神となったのだ。これくらいの危機は乗り越えてみせるよ」
アーバレストは、鉱石を手から出し、姫金神の様に投げると、槍を作るのだった。
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