13話 世界の中心核
「さぁ、これで冒険の準備はできたか。もう冒険に行くのか?」
刀袮はヤルダバオトと商店街を歩きながらそんな事を聞いた。
「そうだねぇ。後は一様の薬瓶類と後地図がほしいところだねぇ。とりあえずその辺の雑貨屋にでも入ろうか」
◆◇◆◇
ー雑貨店ー
雑貨屋に入ると、少し鼻をつく刺激臭がした。
気になったので刀袮はヤルダバオトに質問する。
「(なぁヤルダバオト、この匂いなんだ?俺あんま好きじゃないんだけど)」
「あー雑貨屋って言ってもここは薬とかがメインだからね。だからね薬の匂いだと思うよ」
と、言いながらヤルダバオトはカゴを取るとそそくさと中に入っていき数分すると帰ってくる。
「ん、なんだそれ?」
「まず、こっちが薬瓶類だよ。まぁ僕は一様魔法で回復できるから本当に予備だね。これが回復瓶でこっちが耐熱瓶と耐氷瓶でこっちのが魔力瓶。後、これはこの辺の地図だよ」
ヤルダバオトが持ってきたのは色とりどりの瓶と一枚の羊皮紙だった。
瓶は駆け出し初心者本で見たものばかりだった。
「実物を見るのは初めてだけど案外くすんだ色なんだな。本に載ってたやつはもっと明るかったぞ」
「あーそれはこれより上級のやつなんだろうね。薬の量を多く入れれば入れるほどその薬の効果は上がって色も濃くなるよ」
「そうなのか、そんな事は書いてなかったぞ?」
「まぁ、あれは本当に必要最低限しか書いてないからね。それに、結構古いと思うよあれを書いたのは」
あんなに分厚くて必要最低限なのか。そりゃあ見ないやつも出るはな。まぁ習うより慣れろか。
「まぁいいや、早く出ようぜ。ここの匂いあんまり好きじゃないんだよな」
刀袮は早々に気分が悪くなっていた。よくいる香水つけすぎの女みたいにいろんな薬剤の匂いが混ざっているのだろう。
「そう?じゃあ先に出てていいよ。僕は会計してから行くから」
「そうか、悪いな」
そう言うと刀袮は出入り口へヤルダバオトは会計カウンターへ歩いていった。
ガタッァ。バリィィン。
するとそんな音が背後から聞こえ振り返る。そこには膝をつくヤルダバオトがいた薬瓶が一本落ちて割れている。
刀袮はすぐに踵を返しヤルダバオトのもとに駆けつける。
「おいおい、大丈夫か?」
「う、うん。大丈夫」
すると音を聞きつけたのか会計カウンターの奥から店員が出てくる。
「大丈夫ですか?お客様お怪我はございませんか?」
人の良さそうな中年の男だ。店員は駆けつけるとすぐにヤルダバオトの心配をする。
「はい。大丈夫です。それよりもすいません薬瓶一つ割っちゃいました。掃除をしたいなので掃除道具を借りてもいいです?お金はお支払しますので」
すると店員の男は少し戸惑いながら返事をする。
「いえいえ、掃除は私がします。お支払は買うものだけで結構ですよ。こちらがお買上げ予定の商品ですか?」
そう言われるとヤルダバオトは首を立てに振る。
「そうでしたか。ではこちらへどうぞ」
そう言いながら店員の男はヤルダバオトの持っていたカゴを持ちカウンターへと誘導する。それに続きヤルダバオトと刀袮もついて行く。
「割れてしまった商品は、お買いになりますか?」
「はい、刀袮取ってきて。それよりも本当に払わなくていいんですか?」
そう言われ刀袮は振り返り取りに行こうとするが店員の男に止められる。
「あ、お客様。こちらにあるので結構ですよ。はい、大丈夫ですよ。では、、、こちらでよろしかったですか?」
そう言いながら、カウンターの後の棚にある薬瓶の一つを取ってヤルダバオトに確認する。
「はい、それでした。それよりも本当にすみませんでした」
そう言われ店員の男はカゴの中身を取り出しながら、顔を笑顔にし質問する。
「はい、それよりもお客様達は冒険者ですよね?この街は今治安はあまりよくないんですよ。よく冒険者どうしが喧嘩したりとか。なのでお客様の用なちゃんと謝れる冒険者は珍しいんです。久しぶりにいいものを見せてもらいました」
そう言って男はにこりと笑顔を見せる。
「そうですか。なんかありがとございます。これでたりますか?」
そう言いながらヤルダバオトは袋から硬貨を数枚取り出し机に出す。
「はい。ちょうどお預かりします。ありがとございました。また、お待ちしております」
そう言うと店員の男はヤルダバオトの買った物を渡す。
「ありがとございます」
そう言い軽く会釈をしてヤルダバオトと刀袮は雑貨店を後にする。
◆◇◆◇
「おい、ヤルダバオト。さっきは何があったんだ?」
刀袮はヤルダバオトにそう聞く。
「あ、あぁ。実は多分日本はいや、地球と言う存在もっというとその周辺の太陽系、銀河系つまり刀袮の知ってる地球が有る世界No.3っていうんだけどそこの世界の中心核って言う物があるんだけどそれが破壊された」
そう、ヤルダバオトは静かに答えた。
「お、おい。日本がなくなったって。何なんだ?どうゆうことだよ」
「あぁ、つまりどこかはわからないけど責められていたじゃん。今回のこの戦は、確かに神同士の戦いなんだけ〈世界〉を壊すことも勝利条件なんだよ。まぁそれはまた今度詳しく話すよ。それで〈世界〉にはその主要の場所に核を置く必要があるんだよ。僕は地球の真ん中においているんだよ。そしてそれが壊されたんだと思う」
確か代理はゲームって言ってたな。そのことか。
「そうか、俺達が帰ったときにはもう攻められていたもんな」
そう、刀袮達がヤルダバオトの創り出した空間から日本に戻っだときにはすでに人は、死に民家からは火の手があがっていた。つまりその時にはすでに責められた。だからこの世界に来たのだ。
「でも地球が壊されたらお前は大丈夫なのか?確か〈世界もち〉じゃないとだめなんだろ?」
「確かに〈世界〉はなくなっちゃったけど神の存在条件はいくつかあるんだけどその中の一つに信者が一人は必ずいる事なんだ。そして僕には少なくとも君を信者としてる。だから僕は一様、神様として成り立ってるんだよ」
「それと、信者の数はその神様の強さに比例する。もちろんそれ以外の要因もあるけど。そして〈世界持ち〉は自分の〈世界〉を文字通り自分の好きなようにできるんだよ」
そうか、自分の〈世界〉を自由にできるならみんな信者にしてしまえば強くなれるということか。しかしそれだと一つ疑問が生まれる、なぜヤルダバオトは地球の人間全員を信者にしなかったのか。確か地球の総人口は約75億人程だったはず。一人の信者でどのくらい強くなれるかは知らないけど意味ないのだろうか?
「まぁ、今更地球に残したものなんてないけど、なんでお前は地球の人間すべてを信者にしなかったんだ?」
「うーん。色々制約があるんだよ。また今度ゆっくり話そう。それより僕の頭痛も治ったし準備もできた。そろそろ狩に行かない?時間は有限だよ」
「そうだな、とりあえず行くかこいつらも試したいしな」
そう言いながら、刀袮は肩に担いでいた二つの武器をちらつかせる。
「よし、じゃあ行こう。道は北北東門を出た先にある森」
そう言うとヤルダバオトは急に元気になりそう宣言する。
◆◇◆◇
「ふぅー、結構歩いたのにそんなに疲れないな」
「この辺でいいかな。じゃあ、とりあえず【身体魔法】を自分にかけてみて、昨日のやつでいいから」
「よし、きた」
そう言い、刀袮は二本の武器を地面におきそのまま自分も地面に座り座禅をくむ。
思い出すんだ、昨日の夜の事。自分の中の何かを切る感覚、大事な部分だけど同時にストッパーになっている部分だと思われるそれを切る感覚。同時に内の魔力を体全体に薄く広く広げて伸びして這わすんだ。
ー数分ー
「すぅーーーーはぁーーーーすぅーーーーはぁーーーー。よし、できた、、、気がするけどできてるのか?」
「うん、悪くないけど少し心許ないかな、まぁ使えなくはないよ。後はその感覚を忘れずにずっとかけておいてね」
そう言いとヤルダバオトは自分のカバンから一本の薄い赤、ピンクとまではいかない桃色ぐらいの色の薬瓶と透明の瓶二本を取り出し、刀袮に手渡す。
確かあれは回復瓶だったはずだ。
「はい、これ回復瓶だよ。もし僕が、近くにいなかったり僕が、回復できない状態だったらすぐに飲んでね。後こっちはエリシキル剤だよ。一本は今飲んでねでもう一本はそっちの回復瓶を飲むときに一緒に飲んでね。取りやすいところまぁその瓶入れのところに入れとけばいいよ」
瓶ホルダーとは鞄の両横についてるドリンクホルダーの用な場所だ。
「了解」
そう一言言うと、刀袮は赤と透明の瓶をそれぞれ一本ずつ瓶入れに入れる。そして残った一本の透明な瓶の蓋を開けるとまず匂いを嗅いだ。
「無臭、匂いがないと味の想像ができないなぁ。なぁどんな味なんだ?てか飲んだことあるのか?」
「うん、飲んだことはあるけど味かぁエリシキル剤は普通に甘かったと思うけどなぁ」
「そ、そうか。食わず嫌いは良くないしな。とりあえず飲むかぁ」
と言いながら刀袮は手に持つエリシキル剤を口につけ一気に飲み干す。
「う、うん。不味くないけどうまくもない。少し甘いぐらいか。でもエリシキル剤は何でできてるんだ?」
「エリシキル剤は世界樹って言う大きな木の樹液を加工したものだよ。世界樹はラスオイキ王国って言うこの世界で一番大きな国にあって世界樹はそこで管理されてるんだよ。だから他の国はエリシキル液の為に昔はよく戦争してたけど今はだいぶ落ち着いてるよ。まぁそれでも小競り合いはよくしてるけどね。それで、世界樹が採れるこの国がどんどん大きくなっていったんだ。因みにここがそのラスオイキ王国だよ」
「へぇー。世界樹とはまた聞いたことのある木だな。確かユグドラシルの日本語訳だったか?なんか世界を全部担いでるんだろ?」
「ずいぶん、世界樹も甘く見られてるね。まぁそのとおりだよ。世界樹ユグドラシルは北欧神話でアスガルド、ヴァナヘイム、ミッドガルド、アルフヘイム、シュバルツアルフヘイム、ニタヴェリール、ヨツムヘイム、ムスペルへルム、ニブルヘルムを支えているよ」
「そうなのか、そんな事より、早く戦おうぜ」
「そんな事って、君が聞いたんじゃないか。まぁいいや。とりあえずこの辺は、そんなに強い魔物は出ないけど確か小悪魔の目撃情報がギルドに貼ってあったからそれは気をつけてね。因みに小悪魔の外見は黒とか紫とかの光の粒子だよ」
「小悪魔かぁ、なぁ小悪魔って「はい、その話は後でね。そうしないと日が暮れちゃうよ」」
そう刀袮が言いかけるとヤルダバオトは刀袮の言葉にかぶせる。
「ご、ごめん、じゃあとりあえずこいつから使ってみるか。でどうすればいいんだ?」
そう言いながら刀袮は、ロッコバー・アックスを手に持つ。
「そうだなぁ、じゃあ僕が、魔物を引き寄せるから来た魔物をとりあえず倒してみて。多分そんな強いのは来ないから」
そう言うとヤルダバオトは指輪に〈腐臭〉と言い続けざまに〈分散〉と言う。すると、指輪が緑に光りそのまま光の玉となってから離れ中を舞う。その後、ヤルダバオトが〈分散〉と言ったタイミングで小さな緑の玉がバラバラに別れ文字通り分散していく。
「なんか臭くないか?ゴミ臭いと言うか。てかこれが腐臭の効果なのか?」
「うん、そうだよ。〈腐臭〉、腐った人間の匂いを出してその後〈分散〉でその腐臭を四方八方に飛ばしたんだよ。因みにこの〈腐臭〉は僕が、暇つぶしに作ったオリジナル魔術だよ。君が食いつきそうだけどこれもまた今度にしよう。匂いに釣られた魔物が来たよ」
そう言われ、前を見るとそこには猪を一回り程大きくして赤くした用な魔物が居る。確かあれはレッド・ボアだったはずだ。因みに面白いことにあのレッド・ボアはレッドとつくように他の色がありカラー展開しているのである。赤に始まり青や黄色、黒なんて色もあるらしい。が、カラーが変わろうと強さは変わらないらしい(個体差は除く)。
刀袮はロッコバー・アックスを構えレッド・ボアへと神経を集中させたのだった。
お読み頂き有難うございます。
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