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95.断罪のための恩赦4

大ホールから出てみろ、と煽られて眩い光に照らされています。

 


「その目障り極まる駄作を止めろ!」


「駄作だと!? お前ごときに魔道具の何がわかる! 一目見れただけでも感涙ものだと思え!」



 グヌルの叫び声に即座に叫びが返ってくるのを、シロイは真っ白な視界の中で目を閉じたまま聞いた。

 眩しくないのだろうかと思いながら、再び壁伝いにグヌルとは離れるほうへと移動をする。



「はっ! 修理もできずに逃げ出したヤツが真似事で駄作をこさえて天才気取りか!?」



「……っ! 逃げたわけではない! 国家認定魔道具師たる俺の腕に見合う価値がなかっただけだ!」




 シロイは面識がなかったが、彼の前に『投光器』の修理を請け負ったのが、この癖毛で割れたアゴの男だ。

 当然、修理依頼をしたグヌルは面談もしている。

 身元も保証されているうえに自身満々だったため、バラバラに破壊して逃げ出すとは夢にも思っていなかったが。



「直す腕は無くても壊す腕はあったわけだ! その駄作にも腕をふるったらどうだ!」


「ぐぬ……貴様ぁっ! この魔道具は国族ピトム様がお認めになられた、あぁぁぁぁっ!?」



 突如慌てた声となったのを遮るように、激しい打壊音と振動が響く。

 まるで鉄の塊を高い場所から落としたような、破城鎚で壁を打ったような衝撃だ。

 瞼越しの真っ白な世界からまだ視力の回復しないシロイにも、容易につく予測できる結果。

 ホールの床へと叩きつけられた『照射機』は、完全に破壊されていた。

 その周辺で衝撃に冒険者たちが吹き飛ばされていたり、他の者たちが巻き込まれて倒れているのはシロイの予測外ではあるが。



「うるせーし、まぶしーし。邪魔するヒマがあるんなら、そいつでも直してろよ」



 不快そうな声を漏らしたのは、シロイが落下した際にグヌルに巻き込まれた茶髪の青年。

 彼は『照射機』を支える兵士の手元へとナイフを投げつけたのだ。驚いた兵士が手を離せば、落下するのは必然である。

 青年の言葉に、グヌルが嬉しそうに鼻を鳴らした。



「おー、店長。久しぶりだな。ちゃちゃっと外に出て飯でも行こうぜ?」



 迷宮の深層にまで至るパーティの一員である彼は、気楽に声をかけてシロイの肩を叩く。

 その痺れとともに脱力していくのを感じ、シロイは無自覚に気負っていたのだと気づいた。

 大量の隣人知人が人質にされているのだから、当然だろう。



「そういや店長、美人の嫁さんもらったんだって? くぅ〜、羨ましい〜。なぁなぁ、嫁さんの友達紹介してくれよ?」


「ほぉ? お前、結婚したのか。物好きな女を見つけたもんだな」



 しかし緊張感がなく話しかけてくる声と、呆れたような声につられて、シロイから苦笑が漏れる。

 ようやく回復してきた目を開いて、二人の姿を確認して。



「今度、紹介するよ」



 まるで店で接客しているときのように、シロイが笑みを浮かべた。







茶髪の青年「……あっぶね~。まさかホール側に落とすとはなぁ。運よく誰もいないところに落ちてくれてよかったよ」

冒険者たち「マジかお前……?」


冒険者たちは大体ノリと勢いで生きているので、この程度の危険はよくあることです。


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